遭遇

「!?あなたは何か知っているんですか?」

 エランが尋ねると、彼は渋い顔をした。

「ああ、だがあんたが心配するような話じゃないよ」 

 エランが落ち込んでいると、クラノが心配そうに、エランの肩にてをやる。

「いや、名乗り忘れてたな、俺はゴドっていうな、ここら一体の区画の管理をまかされている、ここはまだ“地下でも表面上の区画”で……」

 そう口走ると今度はチサが男をにらみつけた。

「おっと、こういうことは簡単にくちばしっちゃまずかったか、いや、俺もせがれにはこまっているんだ、ちょうど休みをとろうとおもってたんだ、俺の家にこないか」


 三人が会話をしている間、その脇でごそごそして物陰から様子をみている若いドワーフがいた。

「こりゃ大変だ、彼女にしらせなきゃ……」

 そそくさと準備をして、細い路地裏と通路を通って、住民でしかしらないであろう入り組んだ道をすすんでいく。やがて、パイプのような形状がはしご上にならんだ奇妙な建築物の前にきた。パイプ状の個所には等間隔にや仕切りやベランダらしきものがついていてどうやらそれはアパートのようだった。そのひとつ、一階の左端から2番目に入ると、彼は

「ただいま」

 と静かに仲に声をかけた。

「おかえり……イナ」

「ああ、いまかえったよ、ルノ」

 そうして彼が見た先には、困ったような顏をして、心配そうに彼のことを薄暗い室内、リビングからのぞいているルノの姿があった。

「どうしたの?そんなにあわてて……」

「まさか、こんなに早く地下にくるなんて、君は、干渉されるのが嫌だといっていただろう?」

「?」

「亜人局だよ、亜人局」

「!!嘘でしょ、今度の職員は確かに真面目すぎたけど、まさか私たちのことを知って?」

「いや……まさか、そこまで、街の外の人までが干渉する意味もないだろう」

 イナという男はソファベッドにすわり、おちつくようにと肩に手をやり、ルノのもソファベッドに誘導した。

「それに、君もずいぶんこの町になれて、よそ者を嫌うようだが、亜人局の人たちは亜人を保護する人たちだ、間違いだってあるかもしれないが、基本的には君の見方じゃないか」

「違うわ、私がよそものを嫌うのは……」

 そういうとルノは塞ぎこむように、下をむいてしまった。何かを察したようで、イナのほうは、やさしく肩をだいた。

「すまない、無理して話すことはないさ、過去の事は」

「大丈夫よ、あなたは優しすぎるから、あなたの方が心配よ」

 薄暗い部屋に二人、二人が見つめる先には細い花瓶に痩せた花がひとつ添えられていた。

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