深奥

 巨大な心臓に似た丸型の装置。グロテスクにはい回る配管と、キラキラとひかる電子的な部位がアンバランスな不気味さをを放つ。何度も見てきたもの“魔人コア”と呼ばれる、超高出力のエネルギー炉だ。魔法の源泉であるマナを特殊な方法で圧縮し、より高いエネルギーをうみだす。今では失われた技術。しかしその代わりにリスクもある。高濃度のマナは人体を蝕み、寿命を縮めるのだ。

「やっぱり……あったか……」

「先輩、あんまり近寄りすぎないようにしてくださいね、いつも無茶するんだから」

「いや……」

 チサは、気まずそうに二人が見物する様をみている。なにせ物見ずらしそうに小鬼のような姿かたちをした“ドワーフ”の男たちがこちらをじろじろとみているからだ。もちろん色々な姿かたちのものがいる。角が生えている意外は普通の人間の容姿の人、ファンタジー物語にでてくるドワーフそっくりのもの、全体を見渡すと、そうした“ドワーフ”という言葉がしっくりくるような人間は総じて年老いた人間が多い。そして頑固そうな眼をしてこちらをにらみつけるのだ。まるで、自分の仕事を奪い来たよそ者ではないかと勘繰りをたてるような表情で。だが、そんなつもりはない。

「あの子のことか」

 ふいに背後でそんな声が響く。気配を感じ取れなかったことに、エランはどきっとした。そしてその意味ありげな言葉にも。

「あなたは……?」

 そこにたっていたのは、中年のドワーフで、紳士的な顔立ちをしていた。鼻も顏もドワーフの特徴は持っているものの、しかしきりっとした感じで、モデルもできそうなほど、美麗な顔立ちをしていた。だが他の例にもれず、汚れた作業着をきている。あと特徴的なのは、左目に眼帯をつけていたことだった。

「ああ、これか?炉の熱でやられちまってな」

 そういって、男は笑う。

「いえ、そうじゃなくて、私たちのことをしっているのですか?私たちが調査している出来事のことも……」

「ああ、なんだ……驚かないか……俺は、勘が鋭すぎてな、自分でいうのもなんだが頭もよく回る、だからドワーフとしては失格だって、よく人にいわれて嫌われてんだが、おかしな話だ、同じ特徴をもっていないからって、秀でた能力を見下されるなんてな、いや、これは本筋と関係ないか」

「いえ、私も正直驚いているところです、突然こんなところで“手がかり”と出会うなんて」

「いや、だがあんたは、必ず“あの事件”と地下が関係があるとにらんで調べに来たんだろう?」

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