知人
「チサさん」
「はい?」
ふいにエランがチサをよびかける。
「ここの責任者や事情に詳しい人に合わせてくれる?」
「あ、ああ、そうですよね、国の調査できたんでしたよね……観光じゃなかった」
チサは、いつのまにか市場や、名物店などを案内されていたのだった。
「いいえ、いいのよ」
クラノがこっそり耳打ちする
(チサさんって、いい意味で天然ですねえ、私たちに怖気づかないし、毛嫌いすることもないですから、地下のひとたちってみんなこうなんでしょうか)
「そんなことないわ、地上の人々に嫌悪感を持っている人も多いもの」
しばらく歩くとコロニーの中心部で、コロニー長というひとと合わせてくれるという話になった。その部下とみられる人々もチサをよくしっており、家族のように扱う。巨大なコロニーなのにまるで小さな村のようだった。
「しばらくここでまてといわれました」
まるで地下とはおもえない豪華さをもったコロニー長の仕事場はそれ自体がまるで小さなコロニーのような形状をしていた。その中にはいり、巨大なホテルの受付のような入口で座ってまっているようにいわれて、しばらくそこでまっていた。待つ間も、気を使ってチサは色々な話をしてくれた。このコロニーのなりたち。地上との良好な関係。そうして時間がすぎていったあと、30分くらいしたころだろうか。ようやく、その人があらわれた。
「あらあら、珍しいお客さんだこと」
その人は、地下では珍しい、とても変わった身なりをしていた。サイボーグの右手をもち、顔の半分を機械化していた。なにより一番驚きなのがその年齢だった。
「今年110歳になる、ダルズといいます、以後お見知りおきを、ここでコロニー長をやっています」
「!!」
「!?」
エランが驚き、それに合わせるようにして彼女を顔を見合わせて、クラノも驚きの表情をみせる。なぜなら誰もが知っていることだ、サイボーグ技術は地下や、スラムの人間に簡単に手にいられるものではないからだ。
「おどろいておられるようじゃな、だが、不思議なことはたくさんある……私も自分がこんな生活をするようになるとは思っておらなんだ、だがこれも……母のしたことの贖罪というのかねえ」
そうしてコロニー長は昔話をしてくれた。聞くところによるとコロニー長の母は、かつて離異国において、兵器開発を担当していた人間なのだという。もともとこの国の出身だったが、目をつけられて離異国にスカウトされ働いていたそうだ。
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