コロニー
コロニー入口には人だかりができて、その奥には町の市場とそん色ない光景がひろがっていた。国にも守られなかった貧乏な人々は、スラムか地下で生活するしかない。地下ならば、国の監視が行き届くこともなく旧文明の遺産を利用することもできた。それはまるでかつての離異国と国々との関係にもにていた。共存と、従属。その責任を、末端とはいえ国の機関の一つで働くエランは感じていた。
「にぎやかね、まるで地上の暮らしなど関係ないように」
「ええ、でもそういう訳でもないんですよ……」
「どういうこと?」
「あ、ええ、いまのは……なんでも」
チサが思わず口走ってしまったとでもいうように口元に手を当てて言葉をかき消そうとする。だがエランの頭には疑問がのこったままだった。
大勢の人込みをかきわけて、コロニー内部に侵入すると、奇妙な食材がたくさんうられている市場や、あきらかに地上の廃棄物で作った家具や衣類などが売られていた。
「まるで、未開の人々が知らない文明からモノをうけとって、都合よく自分の文化にとりいれたみたいですね、あ、いえ、別に他意はないんです、悪意なんて」
今度は、久しぶりにしゃべったクラノが失言して、チサに気を遣うように口をおおった。
「あ、チサねえだ」
「あら、本当だ」
「チサちゃん、仕事かい」
「チサちゃんがんばってー」
「えへへ」
まるで地上の町のように、人々がチサに手を振っている。たしかにチサは、マスクをしているのにツインテールという特徴からか遠目からでも彼女だとわかる。だがそれにしてもこの人気のありようは、何か特別なものを感じさせた。
「お知り合いが多いんですね」
と尋ねるエラン。
「貧しいスラムコロニーですから、それに私のように名誉ある集団に属したり地上に移り住んだ人間は、皆英雄のようにまつりあげられるのです、なんといったって、地上で生きることは皆の夢ですから」
それはそうだろう、誰も貧しい暮らしをしたくてしているわけではないのだ。地上でも才能や能力によって人がふりわけられるように地下にも、そういうものがあるのだろう。だが、地下には独特の温かさのようなものがあった。暮らしこそ貧しいが地上よりは密接な、その証拠にチサを見た人々が色々なものをチサにプレゼントするのだ。食べ物、お守り、アクセサリーなど、まるで神にお供えでもするように、彼女を大事にしていた。そしていえいえの扉は開け放たれ、まるで住民すべてが家族でもあるかのように、路上や家の中で楽しく集まっている。
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