道中
クラノのおっとりとした自己紹介、エランのかしこまった紹介がおわったところで、3人はこの後の段どりを準備し、そして出発する段になる。意外にもクラノとチサはうちとけていた。笑い話をしたり、最近はやりの小説の話をしたり、似たところがそれなりにあるようだった。だがチサは、正直にすべて説明してくれた。
「私の依頼料が安いのは、私の使える道が限られているからです、モグラの管理するルートは使えないし、正規ルートもつかえません、ですから、もしかしたら不測の事態に遭遇するかもしれません、その場合にも私は最大限の努力をしますがどこまでできるか……外部との連絡手段を用意し、遭難した場合の救助のために、ここにご自分の住所や、遭難した場合の連絡先を書いて下さい、何時間~を超えた場合捜索を要請する、などの項目にチェックをお願いします、私はこの書類が整い次第、受付に提出して、それからいよいよ出発になります」
格安の割には意外としっかりしていて、迷った場合にもなんとか命だけは無事にすみそうだ、とクラノは関心していた。エランはクールに、そんな心配はないのだけど、といいつつもそこは生真面目な性格がでて、しっかりと書類にサインをした。
やがて、すべての準備を終えて出発することになった。エランもよく理解していたが、不安要素はみっつだ。遭難、強盗、野良アンドロイド。強盗に出くわす心配はまずない。そもそも、道に迷い遭難するような場所で強盗を働くのは困難だ。だがごくまれに組織的に地下で犯罪を行っているグループにでくわすことがある。遭難も、まさかの自体がなければおこりえず、野良アンドロイドが一番危険だ。廃棄された文明の遺産で、それほど知能は高くはないが、自己再生産能力があり、どういうわけか地下資源をうまく使い生き延びている集団がいる。だがこれも、問題はほとんど存在しなかった。エランの能力を見せびらかすという、クラノのいう“危険”という問題意外は。
「ところで、目的地は本当にどこでもいいのですか?」
「ええ、とにかく、この国の地下がどうなっているか構造が理解できればいい、“地下人”の暮らしや、旧文明の遺産にかかわるものをなるべくみたいのよ、それである程度この街の事がわかるはずだから……」
エランがそういうとクラノは少し暗い顏をした。
「わかりました、案内します」
クラノが暗い顏をしたのも無理はない。その頃はまだ、かつての離異国の支配から各々の国々がやっと脱したばかりのころ、それでいて、資源の枯渇や、食料の不足に苦しんでいて、離異国の遺産をつかってでも、生き延びたり、他の地域や国より優位に立とうと考えるものが多くいたのだった。
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