ファーストコンタクト
ルノは、電話やメールなどで話した印象とは違い、少し優し気な印象があり、自分たちの調査を拒んだり、非協力的であるかような感じはうけなかった。ショートヘアーでかわいらしいすきとおった切れ長のひとみ、下がり眉、はかなげな口元。優しい白がまじったような金髪。
「あの、ルノさん、私はエラン、こっちはクラノ」
「どうも」
クラノもエランにあわせて挨拶をする。精一杯の柔らかな笑顔で、いつもなら人受けするくったくのない笑顔と、柔らかな物腰だ。
「いやです」
「え?まだ何も……」
「調査とか面倒くさいし、そもそも私はやっとうまくやれるようになったところなの、変にこの町に迷惑をかけたくないし、それに、変に人に助けられたりしたくない、自分の力で、この町で生きていきたいの」
「……」
ドヌラという男は少し憐れむような顏をして、ルノをみた。
「しかし、まったく調査しないというわけにはいかないの、あなたには迷惑をかけないし、場合によっては協力してもらわなくてはならない、これは1年に一回の定期的な調査なのよ」
「私が問題ないっていっているのに、調査するなんて、それに去年までは適当な調査でおわっていたのに、あなた真面目すぎますよ」
「真面目って……」
エランにとっては、それが普通だ。だがクラノも、エランの肩に、ポンとやさしくふれていった。
「エランさん、今は彼女をそっとしておいてあげましょう、調査だって、人に信頼されるのだって、それからでも構わないじゃないですか、ゆっくりいきましょ、ゆっくり」
エランは、たしかに自分の眉間にしわが寄っているような感覚を感じ、ふと肩の力をぬき、クラノのやさしく朗らかで天真爛漫な笑顔に微笑みを返した。そして
「ルノ、あなたに迷惑はかけないわ、私たちの仕事は、亜人に対する贖罪と、賠償、そして亜人が差別されないようにすること、あなたが問題がないというのなら、問題はないのでしょう、でもあなたの周囲、たとえばこの男の正体とか、調べなければいけないことがあるの、一か月、たったの一か月だけ、自由にさせて」
「長いですね」
「あなたとこの町に関する調査があまりに滞っているの、いい街というけど、皆口が堅くてね」
すると、ルノはうってかわったように、クスリとわらった。
「フッ、たしかにそれは、そうですね、ええ、私は特別差別されていないし、特別ひいきもされたくないですが、もしそれを守ってくれるのであれば、好きにしてください」
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