アパート。
「私たちは件の事件について“調査”と“保護”をする必要がある、しばらくここに滞在しなければならないのだし、さっそく例の“亜人”にあってみましょう、確か名前は……」
「ルノ、歌い手をしている子でしたよね!」
「そう、踊りながら歌う、この地域で有名な歌い手だと、けれど不自然な事がある、あの“火事”からその評判はがらりとかわったってこと、その背後になにがあるのか、必要ならば“保護”し引き取り、もし別の問題があれば“調査”して報告する必要がある」
「ええ、私たちは、どれだけ嫌われても亜人の権利や尊厳を守らなければいけません」
「捧げもの、もしくは人身御供なんていう“負の遺産”を清算するためにね」
そういいながら、エランはおもった。本当に“清算”なんてできるのか、またその必要はあるのか。それでもきっと“贖罪”をつづけなければならないという事を。
地底付近の空中都市をいく、“歌姫”が住むにはあれて治安の悪く、清潔とはいいがたいような外観をした都市の、その一角にそのアパートはある。
「青い屋根の家、青い屋根の家」
クラノは、球体型携帯端末で写真をみながら、その外観に一致するたてものを探していた。エランはその後ろをつきそい、街の様子をくまなく観察していた。
「あ、あった!」
クラノが突然ぴょんぴょんと跳ねる。そして指さす先にその建物はあった。写真ではわかりづらかったがふつうの街並みから少し奥まったところ、生垣の大分後ろに建物が隠れており、気づかなかったのだ。
「エラン先輩、いきましょー」
「ああ」
勢いよく飛び出すクラノの後を追い、さっそく今回の友好的な協力者にあうことにした。すでに連絡はしてある。まあ亜人本人とはなぜかまだ直近では連絡はとれてないが。
《ピンポーン》
一回の一番端、101号室の呼び鈴をならす。なかからどたどたと足音がする。せわしなく開け開かれたドアから、エプロンをした少し小太りの女性がでてきた。
「あらいらっしゃったわね、“亜人局”さん」
亜人局、は巷でいわれる亜人省の通称だ。普段何をしているかわからず、しかし、亜人の事になると人権やら、保護、賠償だのに顔を出してうるさくひっかきまわすので、省庁というよりはもう少し小物だという事で侮蔑の意味も含めそういわれる。まあ、大半の人間は別段皮肉の意味などこめて呼んではいないだろうが。
「こんにちは、すみません、なんだかこの町の調査も困難になりそうで」
「はあ、そうでしょうねえ、口下手な人が多いし、まあ、あがってあがって」
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