伊藤計劃「ハーモニー」を観て文学少女的中二病をこじらせた月狂四郎
〈remember〉
わたしと一緒に死ぬ気ある。
〈/remember〉
彼女の言葉を思い出す。
ハーモニーとはよく言ったものだ。あの言葉には盛大に皮肉が詰め込まれている。
〈warning〉
トァンとミァハが紡ぐ物語、あれは、キケン。
あなたは知らない。あの物語に潜んだ死臭を。そして、それは魅力的で、あなたを向こう側に引っ張っていこうとしていることを。
〈/warning〉
ハーモニー、それは、天国を創り損ねた世界と、自分の居場所を見つけられなかった女の子の、哀しい、哀しいお話。
どうしてあの物語がキケンなんだと思う。
トァンはミァハをずっと探していて、とうとう彼女を見つける。それで、彼女の哀しい過去を聞く。でも、大事なのは彼女の壮絶な過去というよりも、彼女が自分の存在というものを世界に位置づけられなくて、世界を混沌に巻き込んででも自分を救おうとしたことなの。
トァンはミァハを強い人間と評していた。でも、それは逆。ミァハは自分の弱さに勝つことができなかった。だから世界を壊そうとした。みんなで仲良く滅びようとした。
〈question〉
トァンはなんでミァハを撃ったと思う。
〈/question〉
〈answer〉
トァンは知っていたんだよ。ミァハはトァンに殺されることを望んでいたんだって。
〈/answer〉
どれだけ世界を混沌に落とそうと、結局この世界に自分の居場所なんてないって、ミァハは知っていた。それでも、なんとか自分が生きていける世界を構築しようとした。
でも、結局は失敗した。でも、最初からわかっていた。こうなることは。
自分の居場所がほしい。でも、この世界には無い。
だから、この世界を混沌に陥れて、トァンに自分を止めてもらう。そしてこの世界から自分を排除してくれること。それしか、ミァハにはできなかった。
彼女はどこかで知っていた。たとえ自分の目指す理想郷を築き上げても、それは自分があれほど嫌悪していた天国のまがい物になるだけなのだと。
だから終わらせたかった。できたら、自分の愛した親友に、終止符を打ってもらいたかった。どうしようもなく不器用で、世界中を血と混沌に包み込む自己実現。笑えない。
だから、ミァハも結局、責任が取れなくなった。
どれだけ「こうするしかなかった」と言い訳しても、どこかで自分が何をしているのかを知っていた。だから自分を罰したの。ナルシズムとともに、親友を巻き込んで。
〈question〉
それで、トァンはこの後どうなると思う。
〈/question〉
たぶんね、トァンはミァハみたいになっていくんだと思う。
トァンはミァハの願望をわかりすぎるぐらいに理解していたし、ミァハの足跡をたどることで二人は鏡のようになっていった。もちろんトァンはミァハの中に自分と同じ弱さを感じていただろうし、引き金を引いた時、トァンはこう思ったんじゃないかな、「彼女は、わたしだ」って。
〈warning〉
彼女は、わたし。
優しさの中に潜む、恐ろしい罠。
〈/warning〉
その裏側には、できればわたしが代わってあげたいという優しさが隠れている。
気付いたら、トァンはミァハみたいになっているかもね。
そうやって、ミァハはトァンの中で生き続けることができる。彼女の血となり、魂となって。
そして、ミァハの精神は、彼女達を傍観していたあなたにも……。
ハーモニー――それは心の波長にも存在する。
あなたの波長が彼女に近付いた時、あなたはミァハを引き継いでいるのかもしれない。
だからこれはキケンなお話。
あなたの意識に、ミァハの胎芽がそだ
〈/warning〉
〈/warning〉
〈/warning〉
〈sorry program is not working〉
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