第二話 第三波攻撃隊
ハワイ時間7日12時50分(以後すべてハワイ時間に統一)、第一航空艦隊から第三波攻撃隊が出撃した。編成は以下の通りである。
『第三波攻撃隊』 百三十八機 総隊長:
・水平爆撃隊 隊長:淵田美津雄中佐
九七式艦上攻撃機 五十四機
・急降下爆撃隊 隊長:
九九式艦上爆撃機 四十八機
・制空隊 隊長:
零式艦上戦闘機 三十六機
編成を考えた
そのため、攻撃の主力は爆撃となる。比較的損害が軽微だった第一波攻撃隊によって編成された攻撃隊には、百二機の爆撃隊が含まれていた。そのため急降下爆撃隊には、敵基地への攻撃及び真珠湾に残存する艦艇に対する攻撃が命じられ、水平爆撃隊には損害が比較的軽微な戦艦への攻撃及び重油タンクに対する攻撃が命じられた。
14時30分、第三波攻撃隊が再び真珠湾上空に到達した。攻撃隊隊長の淵田美津雄は各機に対してト連送で、全軍突撃を下命した。第三波攻撃隊は、先の第一次・第二次攻撃隊よりも熾烈な迎撃にさらされた。
淵田は制空権確保のため、事前に板谷率いる一・二航戦闘機隊二十四機を先行させたが、迎撃に上がってきた敵戦闘機は二十機に満たなかった。しかも、死に物狂いで修復された飛行場から五月雨式に上がってきたため、組織的な抵抗はできず迎撃は明らかに連携を欠いていた。
板谷が率いる制空隊は、それら敵戦闘機を各個撃破していった。淵田率いる攻撃隊がオアフ島に侵入する時には、オアフ島上空の制空権は日本側が完全に掌握していた。それでも、一部の戦闘機が攻撃隊に襲い掛かったが、攻撃隊の援護についていた五航戦戦闘機隊十二機に奮戦むなしく一蹴された。この制空権をめぐる戦闘で制空隊は零戦六機を失いはしたが、今やオアフ島を覆う機体にはどれも日の丸が輝いていた。
敵機の抵抗が弱まったのを感じた淵田は、冷静に敵飛行場の状況を分析した。
ホイラー・ヒッカム・フォード飛行場では、火災が収まり煙の影すら見えなかったが、地上では破壊された機体の残骸がいまだ残っていた。その残骸は、合計すれば優に三百機を超えているようだった。飛行可能な敵戦闘機はすべて迎撃に出たようで、地上に飛行可能な機体は存在しないと思われた。
(だが、上がってきた戦闘機が存在したことが問題だ。米軍機は大半が壊滅したのに違いないが、いくつか手つかずの格納庫が残っているかもしれない)
そう考えた淵田は、ホイラーに蒼龍、フォードに飛龍の急降下爆撃隊を向かわせた。ヒッカム基地は油槽地帯と隣接しているため、攻撃されなかったのだ。また、敵の反撃を予防するために零戦九機と翔鶴爆撃隊を周辺空域に放ち、各飛行場または未発見の基地への遊撃を命じた。
そのうえで、残りの一航戦爆撃隊と零戦三機には残存小型艦艇への攻撃を命じた。真珠湾からの脱出などをされては、今後の作戦上危険と考えたからだ。急降下爆撃隊と護衛の零戦隊別れた淵田は、水平爆撃隊にも命令を下すことにした。
淵田は、五航戦艦攻隊と零戦三機にいまだ浮いている敵戦艦に対する攻撃・妨害を命じ、飛龍隊にはドックに入渠していたペンシルベニア級戦艦(入渠してるのは一番艦ペンシルベニア)への攻撃を命じた。
この時点で、淵田の指揮下には零戦十五機・艦爆八機・艦攻三十六機が残っており、淵田はとりあえず零戦六機と艦爆八機を予備とし、いよいよ艦攻に突撃を命じて港湾施設や石油タンクを攻撃することにした。
淵田は当初、港湾施設より先に重油タンクを攻撃しようと考えていたが、よくよく考えると重油タンクを先に攻撃してしまうと、真珠湾一帯がすさまじい黒煙に覆われて、その後の攻撃が困難になるに違いなかった。
そこで、淵田は順序を入れ替え、先に港湾施設を攻撃することにした。三十六機の艦攻は全て250キログラム爆弾を二つずつ搭載しているため、一発目で港湾施設を攻撃し、二発目で銃やタンクに攻撃を仕掛けようと考えたのである。
港湾施設への攻撃は、たった十分ほどで終了した。投下した爆弾はクレーンや重機を薙ぎ倒し、ドックや周辺施設なども概ね破壊した。
残ったのは重油タンクのみとなり、淵田は残る水平爆撃隊を二手に分け、自身は一航戦爆撃隊を率いて湾内奥にある油槽地帯へ向かい、残りの二航戦爆撃隊には、ヒッカム飛行場付近にある油槽地帯の攻撃を命じた。
油槽地帯への攻撃は、程なく終了した。今や真珠湾一帯は凄まじい黒煙に包まれている。それでも破壊されなかったタンクには、温存していた艦爆八機が突入し、爆撃を敢行、悉く破壊した。
火の勢いは止まることを知らず、油槽地帯では絶えず誘爆が起きている。
淵田率いる第三波攻撃隊は、見事その目的を達成したのだった。
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