IF 太平洋海戦 ~若干スランプ気味の為不定期投稿中~
信濃
真珠湾攻撃
第三次攻撃
第一話 連合艦隊からの指令
日本時間一九四一年十二月八日、第一航空艦隊から発艦した航空攻撃隊は、ハワイ真珠湾に対する奇襲攻撃を成功させた。当然、一航艦の将兵たちは帰還したパイロット達を歓声とともに向かえた。しかし、旗艦『赤城』にある一航艦司令部は外の歓声を気にもしなかった。彼らは、艦隊が次にどのように行動するかで激しい議論を交わしていたのだ。
真珠湾への再攻撃を強硬に主張したのは、甲乙航空参謀の
「我々は奇襲に成功したのです。さらにオアフ島に接近し反復攻撃を加え、真珠湾を一年以上使えないようにすべきです!」
「源田参謀の言う通りです!オアフ島に接近すれば、搭乗員の疲労も軽減することもできますし、比叡と霧島による砲撃を行えば真珠湾の港湾機能はなくなるといっても過言ではないでしょう」
彼らの主張はもっともだった。一航艦が出撃させた第一波・第二波攻撃隊三百五十三機の内、撃墜されたのは二十九機、戦死者は六十四人と比較的軽微であり、さらなる攻撃は不可能ではなかった。
また、大西瀧次郎の要望で真珠湾攻撃の作戦立案に深くかかわっていた源田は、早期講和を目指す
「いや、我々は十分な戦果を得ている。それに、米空母の行方がいまだ分かっていない。この作戦の目的は日本南方作戦部隊の側面、後方防衛にある。達成された以上とどまって無期限に長引かせるべきではない」
反対に、内地への帰投を主張したのは参謀長の
草鹿は一航艦参謀長に就任するまで、軍令部に長く勤務していた。そのため、この真珠湾攻撃を南方作戦のための支作戦ととらえていたのだ。そんな彼が成すべきと考えていたのは、早期に帰還し南方資源地帯の確保を支援することであった。
「しかし!」
「航空参謀、もういい」
そんな三人の口論を止めたのは、第一航空艦隊司令長官の
「我々は真珠湾に大打撃を与えた。これ以上の攻撃は必要ないだろう。参謀長の言う通り、我々は早期に帰還して今後の作戦に備える」
「「長官!」」
南雲が草鹿の意見を採用したのには訳があった。彼は、真珠湾攻撃前の内地にて軍令部から『空母を傷つけてはいけない』という要請(ただし命令に近い)を受け取っていた。漸減邀撃作戦にこだわり南方作戦を重視する軍令部にとっては、真珠湾攻撃などは成功したら御の字という認識だったのだ。
さらに、攻撃隊隊長の
「参謀長、全艦に通達!我々は本土へ帰還する。進路を西へ取れ!」
「はっ!」
長官の決定に、源田は落胆した。
(今が絶好の機会ではないか!我々が怖がる必要のあるオアフ島の航空戦力は壊滅している。長官らは何に怖気ついているというのだ。このままでは、辞職の覚悟でこの作戦を推し進めた山本長官の早期講和が実現できない!どうすれば…)
日本本土への帰還準備をし始めた赤城の艦内でそう悩んでいた源田だったが、彼への救いの手ははるか遠くの呉からもたらされた。
「長官!GF司令部から緊急電です!『反復攻撃を実行し、太平洋艦隊を再起不能にせよ』とのことです!」
「なに!」
連合艦隊から第三波攻撃の実行が正式に命じられたのである。実は、攻撃成功の報告を受け取った連合艦隊司令部では、実行部隊である一航艦による反復攻撃を訴える声が多数上がった。航空兵力の精強さを見せつけられた参謀長の
「………山本長官の命令とあれば仕方ない。源田航空参謀、編成については一任する。第三波攻撃隊を発艦させよ!吉岡航空参謀、消息不明の米空母の捜索のため索敵機を発艦させよ!」
「「はっ!」」
「艦隊の燃料が心配だ。参謀長は、念のため後続させていた高速タンカーに連絡し、こちらに向かってもらってくれ」
「…はっ」
草鹿は表向き普通を装っていたが、自分の主張が受け入れられなかったことに複雑な心境を抱いていた。このことが、後の参謀長交代に通じていくのだが、今は誰もそんなことを予期していなかった。それはともかく、参謀たちは南雲の命令通りに行動を開始した。
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