第20.1話 全てを忘れ去っても

あいつはこの書についてほとんど知らない。

俺の部屋から何も盗られていなかったことが俺がペンナイフを盗る可能性を考えていない証拠だ。

もし知っていて裏をかかれていたとしても、あいつが真の能力を得ていない限り俺が何をしようとしているか分かるはずもない。

こっちに水盆がないのが唯一辛いところだな。

卯狩りは危険だがやる価値はある。

あいつはこの書についてほとんど知らない。だからセトに従うしかない。

まずくなったら逃げればいい、逃げられる、という過信。


「これが呪いの固体化…呪いってなんなんですか…?」

ネモがスライムを凝視しながら質問してくる。

「ただ漂っているもの。普通は見えないから気体に近いね。俗世にもあるよ」

「私たち死神はそれを集めやすい人間」

「後悔、怒り、絶望…強い感情が呪いを引き寄せるんだ」

俺は、これが上手くいったら呪いをなくすだろう。

全てを忘れ去っても、俺はこの計画を遂行しなければならない。


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