第22話 年明け

手を伸ばして、掴めなくって、涙が溢れるの。

「父さん…」

ゴーン、ゴーン、ゴーン。

頭に響く鐘の音。

混濁した脳内が揺らされ、昼寝し過ぎた時の気持ち悪さに似たものが襲いかかってくる。

起きなきゃ。

ベッドから扉、廊下からリビング、全てが遠い。

「…起きたか」

霞む視界の中に凌ちゃん先生が見えた。

「凌ちゃん先生…」

「違う」

凌ちゃん先生の隣に座る。

足の先から頭の先まで、舐めるように見る。魅される。

どのくらい経ったか分からないけど、しばらくするとルナとセトが入ってきた。

「ショウコさっ…。おい、卯、捕まえに行かないのか」

強がった喋り方。

あれ…?

「卯…?」

を見ると、既に俗世あっちでは年が明けていた。

卯年だ。


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