第11話 唯一の方法

今日は疲れた。5人も幽霊を誘導した。

『私はルナに色々教えとくから、いってきて〜』

じゃねえよ!ショウコのやつ、絶対テレビ観てるよ。ルナが来てから、引きづられるようにヲタク化を進めているショウコ。元々の、のめり込んだら抜け出せない気質が、確実に悪くなっている。昨日は水盆の部屋にテレビを持ち込もうとしてコードが足らず失敗し、泣き叫んでいた。かなり深刻だ。普通に怖い。

別にいいけどさ。悪いのは俺だ。

「ただいまー」

「あっ、おっさん呪術師が帰ってきたw」

「あ”?」

よく分からないが、バカにされていることは分かる。おっさんじゃねーし。

「今ね、ルナとじゅじゅなんとか観てたんだ、五条悟がめっちゃカッコいいんだよっっ」

ルナは画面にへばりつくように観ており、一方のショウコは寝っ転がり、下半身は水盆の部屋、上半身はリビングに出している。

よく分からないが、ショウコはどうやら16歳に若返ったらしい。普通に怖い。

ていうかテレビ観ながら水盆見てたのかよ。よく道間違えないな。よく俺帰ってこれたな。

「はぁ〜、本物はおっさんで黒髪で黒い目かぁ。やる気失せるねショウコさん」

「ねー」

「あ”?誰だよゴジョーって?俺と同じぐらいのイケメンなのかよ」

「そうだショウコさん、質問なんですけど、」

「ん?なになに〜?」

またさえぎりやがった!!

「怪奇現象とかゾンビって実在するんですか?」

ショウコは匍匐前進ほふくぜんしんもどきで下半身もリビングに持ってきた。そして立ち上がり、ソファーに座った。

「まずね、私たちが俗界あっちにおいてくる体は遺失物センターにあるのと同じレプリカなの。なぜなら、はどちらも本物でないと動けないから。

のレプリカは作れない、

だから、遺体ってのはのないレプリカ、のはずなんだけど、たまに、死にたくないという意思が強かった人はだけ境界こっちに持ってきて、をレプリカのに宿してしまうことがある、そして、動けないから諦めるか、だけで動き始めるかをする。

未練呪いをエネルギーにね」

呪いは未練。後悔の気持ち。

だから罰の長さと呪いの強さは必ずしも比例しない。って知ったのはこの前の帰り道。

つまり私には死神になれるだけの後悔があったってことか。それが多いのかよく分からないけれど。

「ゾンビは?」

「いるわけないじゃない、信じてたの?ちなみにUFOは専門外w」

本気で信じていたのか、ルナは恥ずかしそうに赤面し、動き方がぎこちなくなった。分かるわー。信じたくなるよね。都市伝説とか超楽しいよね。

「じゃっじゃあ、『りんねてんせい』とかは?」

「あるよ」

おっさんがいきなり喋り出した。

「輪廻転生はある。だけどいわゆる『徳を積めば…』とかじゃない。

見つけたもん勝ち」

おっさんは相変わらず説明が下手すぎる。コミニケーション能力に何らかの異常があると思う。

「何を?」

ルナはおっさんとの会話のコツを一瞬でつかんだ。凄いわ。

うさぎの切符と切符きり。両方見つけて使う。切った時に握ってたやつが新たな『生』を受ける。どんな奴でもな。

前世の罪はチャラで。

地獄行きをまぬがれるもう一つの方法だよ」

おっさんにとっては唯一の方法。

「…来年」

気が付くと私は呟いていた。私はこの話題については避けていたかったのに。

「え?」

「来年がうさぎが出現する年なの」

おっさんにとって唯一の方法、だけどおっさんが唯一の志願者じゃない。

結局罪人は奪い合うしかないんだ。

地獄の果てまで。



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