第12話 盗みは箱庭でも

「十二支って知ってるか?」

殺し屋おっさんが突然そんなことを言った。

「えっ、うん。ね、うし、とら、う、たつ、み…でしょ?」

国語の授業で暗唱させられた記憶を引っ張り出し答える。

「そう。境界ここではそいつら12はしらがそれぞれの年に出現する」

「来年、ってことはうさぎ?」

はしらって数え方なの?強者たちの集まりではなく?

「十二柱はそれぞれ一つずつ能力を持っているの」

ショウコさんも知っているらしい。能力って何?

うさぎの能力は

「時間を操る…凄っ、えっ?でも、あえっ??」

「「ん?」」

いや誰でも『?』だわ!?

なにこれ世界規模のカルチャーショック起きてんの?!

聞いてたんとちゃうやん?!

「いやなんでなの?転生するんでしょ?時間関係なくね?」

二人にバカにする目で見られた。『この子はなにも学んでないのね』的な。

いや知らんやん?!

関西弁はテキトーやん?!

境界ここ俗界あっちの時間の流れは違うんだ。

俗界になら卯の力はいらない。だけど切符を使わずに行ったらゆっくりな世界に閉じ込められる。

誰にも気付いてもらえない。出てこれない」

俗界あっちの20年は境界こっちの60年か。学んでましたわ。

「この出現する年を知るためにもを置いてるの」

なんだか色々なものに振り回されているんだな死神私たちって。

能力なんて面倒なものをなぜ作るのだろう。

誰かの遊びとしか思えない。

なぜ人間私たちはそんな中に閉じ込められなければならないのだろう。

罪を犯したせいか。


「ということでまずはとらをつかまえるぞ」

「え?」

いや、うさぎのくだりなんだったん?!

「今年はまだ見つかっていないの」

いや、『見つかってないの』じゃないやん!もううさぎ以外どうでもよくない?だって…

「うさちゃんはいいよ、抱っこすればいいし!だけどトラって…無理!」

「呪文言って触れればいいだけだ」

「そうよ、怖くな〜い、怖くな〜い」

麻酔銃でジャングル探検ではないのね。

良かった…ってそれでも怖いよ!ショウコさんの『怖くな〜い』はフラグにしか聞こえないし!!てか呪文?めっちゃファンタジー。

てことはもしや…

「呪文の書みたいなのあるの?」

キラキラした目で尋ねられて可愛いなと思いつつも同時に申し訳ないと思う。

「ハハ、あるよ」

「えっマジ?!」

あの時俺が止められていれば、

「ジャジャーン!これが代々死神たちによって受け継がれてきた呪文の書だ!」

そう言いながら俺は棚からジャポニカ学習帳を取り出した。

「新しすぎんだろ!?ナメんな呪文の書!羊皮紙かパピルスだろうが!!ふざけんなや!!」

ルナから即ツッコミが入る。

「ごめんな」

「えっ?ちょそんな、冗談やん」

そんな顔すんなよ。俺のせいなんだよ。

俺が気付けなかったせい。

相棒あいつの変化に気づけなかったせい。もしかしたら前々から計画してたことなのかもしれない。

俗界あっちの時から。

「呪文の書は盗まれたんだ」

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