第8話 規制ルート
「開拓地に飛ばされちゃった…」
人生ゲームをしながら、私は死神について教わっていた。
「人生色々あるわよ…。まぁ私たちは死んでからも色々あるんだけどね!」
今日のショウコさんは『I Love New York』と大きく書かれたシャツを着ている。胸の大きさで文字が歪んでいる。
それにしても、まだ自分は本当に死んでいるんだ。ということになれない.
喋れるし、物だってつかめるし、それになんか、うん。
それに、何度聞いても呪いというものが分からない…
『ルナあなた頭固いでしょ?』
昨日、つまり私が選択肢0でブラック会社に入社した日、
『だって、こんなの意味わかんないよ。呪いって何?!アニメかよ?!』
理不尽で意味不明すぎる状況にキレる。
ショウコさんとおっさんが私をやれやれと見下ろす。
『呪いってのは、平たく言うと負の感情。人、物、空気中、量は違えど全てに
『自身に纏わりつく呪いの量が多いほど、意識がはっきりしてたり、五感が正常だったり、
『さらに、俺たち死神レベルの呪いの量になると、相手に危害を加えたり、異能力が使えたりする』
『ストップ、ストップ!!1話に情報詰め込みすぎるアニメは売れないからな?!脳みそパンクするわ』
脳の休憩を要求する私に対して2人は揃ってため息をつき、
『『こんなクソガキだった?』』
『ざけんなよ!!』
アニメは大好き。
だってとびっきりいい夢を観せてくれるから。
特にジャンプが好き。
だって強くなりたいから、ならなくちゃいけなかったから、なれなかったから。
でもいざいわゆる展開にもっていかれると尻込みする。夢は観るだけで充分。
開拓地に行く気分。
規制ルートからはみ出たくない、頭が固い意気地なしな女です。
「ここに住むなら、いろんなものを持って来ないとね」
ショウコさんはピンクの車を進めながら私に話しかけた。
「お店とかあるの?」
この家(?)の造りは、まず、玄関からまっすぐ廊下が奥までのびていて、
その両脇に部屋がある。
玄関に近い右側の部屋は洗面、風呂。
洗面の隣は空室。
一番奥に
左側は、一番手前が空室。
隣にショウコさんの部屋。
一番奥にリビングがある。
今はリビングにいる、
ここにはたくさんのものがあるが(あのデカいカートは何に使うのだろう)、
どれも一昔前のセンスだ。
「お店があったら漫画の新刊とか買えるんだけど、残念、ありません。
あるのは遺失物センターです!」
待ってましたと言わんばかりに、ポーズを決めるショウコさん。
「遺失物…?落し物ってこと?」
ショウコさんの思う壺だが、仕方がない。私は語尾に疑問符を付ける。
「よし、行くか!」
おっさんは青い車を置き、あのデカいカートを手にとった。
「ちょっとどういうことなの?待ってよ!!」
私は白い車を置いて、2人の後を追った。
2人に言われるがまま、曲がりくねった道を行く。
しばらくすると、小さな、本当に小さな建物が現れた。
「何これ、こんなところにあるの?!」
「ここにはない」
「はあ?!」
時間と労力返せや!
「ほら行きな、ここには1人しか入れないの」
「でも、何をすれば…」
「落し物を取ってくればいい、君が死ぬときに落としてしまったものを」
私は遺失物センターに入った。
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