第5話 中間の幽霊

「地獄行きの少女がさまよっている」

迷子ちゃんを発見。

「地獄行き、了解。いってきます、」

地獄行きの少女、よ」

水盆で発見できている時点でおかしいんだよ。普通迷子はこの前の少年みたいにたまたま発見するものなんだ。

『なんかボウズ見つけた。送る。』

あの時は突然メールが送られてきて何かと思ったら迷子連絡。

『名前は?』

『忘れてる』

期待した私がバカだったよ。境界の空気には強い忘却作用がある、水盆に映らないレベルの呪いでは自分の名前ですら忘れてしまう。

俗世の汚れを浄化するためのシステム。

「チッ。名前が分かれば探すのなんて一発なのに」

文句を言っても仕方がない。

死亡録を見て、極楽か地獄かを確かめて、それも呪いがない、罪のない子だったから数が多くて見つけるのが大変で、次に今開いているへの最短ルートを案内して…クソだるかったわ。

別に害はないからほっといてもいいものなんだけど変なところで熱心だからなおっさん。

話を戻すけど、俗世あっちに未練があって境界から出られなかったとしても、相当な強さがないと水盆に映るわけないんだから、私が報告する時点で選択肢はほぼ二択、排除か制御か。死神が私とおっさんしかいないということで察しは付くと思うけど、排除することの方が圧倒的に多い。

それにしても、こんなに小さく、濃い呪いは珍しい。少し前に同じくらいの暖かい塊があったけどいつの間にか消えていた。多分地獄に行ったのだろう。

「なんで地獄行きなの?」

いきなりその質問をするってことは、分かってたってことよね。

おっさんが仕事をサボろうとするなんて珍しい。

そんなにあの男を消すのが嫌だったの?

辛いけどこの子は救えるかもしれないのよ?

「父親を殺した後自殺した」

感情を殺して、ただ報告をする。私にはこの子を誘うことができない。

弱いから。

「なんで殺したの?」

「暴力を受けていたみたい」

思い出してしまうから。

自分で始め、自分で終わらせた、愛おしい地獄の日々を。

「いってきます」

彼は何も言わず立ち去る。

器用なのか、不器用なのか、

とても温かい日々だ。もうすぐ終わる。

嬉しい、

寂しい。


『いってきます』

とは言ったはいいが、出て来ちゃったはいいが、

どんな子なんだ。

全然分からん。

メイル来ないし。

とにかくぶらぶらと歩く。

俺が迷子になった時は流石に助けてくれるんだろうな?!

ていうか、ショウコ、お前の少女って何歳から何歳までなんだ。

俺の感覚では7歳〜12歳ぐらいまでなんだが。

でも待てよ、俺のこと『おっさん』呼びしてるよな。

ていうことは、全体的に、俺の感覚より低めにいかないとか。

5歳〜10歳ぐらいか?いやでも…


そこには女性がいた。


日本語は難しい。

少女と女性の中間を意味する言葉がないのだから。

辞書的には、青年を女性に使っても良いのだが、なぜかしっくりこない。

とにかく、そこにいたのはまさに中間の幽霊少女だった。

激しい呪いを放つ幽霊少女だった。

「何?おっさん」

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