第2話 四ツ谷駅

 その後もずっと、おじいちゃんと一緒に車内の天井を見上げていた。

 すると、急にあたりが明るくなったんだ。

 丸ノ内線は駅に着くときに暗くなる――っておじいちゃんが言うからずっと天井を見てたのに、逆に明るくなるってどういうこと?


「よつや~、よつや~」


 どうやら四ツ谷という駅に着いたらしい。

 私は辺りを見回して、明るくなった原因を理解した。

 地下を走っていたはずの電車が、いつの間にか地上に出ていたのだ。


「すごいじゃろ」


 おじいちゃんは鼻息を荒くしている。

 すごいかどうかはわからないけど、予想外の展開だった。

 それにしても、地下鉄が地上に出てしまうってどういうこと?


「丸ノ内線はの、今まで武蔵野台地の中を走っとったんじゃ。台地というのはの、周りより高くなった土地のことじゃよ。その台地から、丸ノ内線は外に飛び出してしまったんじゃ」


 私はモグラを連想する。

 高く盛り上がった土の中を掘り進んでいたモグラは、端から外に出てしまった。

 きっとそんな感じなのだろう。


「地下鉄が外に飛び出すこともビックリじゃが、この駅にはもっと驚くことがあるんじゃよ」


 なんだろう?

 もっと驚くことって!?

 おじいちゃんは窓から電車の下側を覗き込んでいる。

 この地下鉄の下には……一体、何があるっていうの!?


「この地下鉄のさらに下にはな、国電が走っとるんじゃ!」


 えっ?

 こくでん!?

 なに、それ??

 それってビックリすることなの???


 ポカンとする私に、背後から私を助ける声が。


「国電っていうのはね、昔の国鉄、今のJRのことだよ、お姉ちゃん。JRは地下鉄じゃないのに地下鉄の下にあるという構図が、民間の下に国があるようで面白いっておじいちゃんは言いたいんだ」

「そ、そのとおりじゃ……」


 さすがは鉄道マニアの弟よ。

 というか、あんた、一緒に乗ってたんだっけ。


「ちなみに、おじいちゃんが面白いと言う構図はここだけじゃないから。渋谷駅の方が有名だから」

「…………」


 おじいちゃんは四ツ谷駅からしばらくの間、黙ってしまったんだ。

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