おじいちゃんと丸ノ内線

つとむュー

第1話 電灯

 数十年ぶりに東京にやって来たおじいちゃんと丸ノ内線に乗った。


「ほら、注目じゃよ」


 電車が減速すると、手すりに掴まりながらおじいちゃんが天井を見上げる。


「何が起きるの?」

「駅の手前で電気が消えるんじゃ」


 ええっ、ホント?

 そんなことあるわけない――と思いながら、私はおじいちゃんと一緒に天井を見上げる。

 が、思った通り、駅に着いても灯りが消えることは無い。


「おかしいのう……」


 そんなはずはないと首をひねるおじいちゃんは、ドアの横に何かを探し始める。


「昔はここに電灯があっての。天井の灯りが消えると、ぼおっと車内を照らしていたんじゃ」


 きっとそれは大昔のことに違いない。

 おじいちゃん、東京はすごく久しぶりって言ってたから。

 でも天井の灯りが消える地下鉄ってちょっと面白い。


「それってどんな感じだったの?」

「そうじゃの……」


 おじいちゃんは、消えることが無くなった天井の灯りを見つめながら考える。


「ほら、数年前の夏におじいちゃんちに来た時、裏の神社のお祭りに行ったじゃろ」


 そのことはよく覚えている。

 火が灯された無数の灯籠、神楽の笛や太鼓の音色、淡い光が照らす人々の明るい笑顔。

 とても幻想的で、私の心を捉えて離さなかったから。


「あんな感じじゃった……」


 そんな地下鉄なら私も乗ってみたいと思ったんだ。

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