第3話 ニューアクティビティ

 日が山の向こうへと落ちて、徐々に薄暗くなっていく。そんな最中、僕たちは荒れた獣道の入口で家まで望遠鏡を取りに行った樹を待っていた。


「大分暗くなってきたなー」


「正面に、金星が見える」


 健斗が指をさした先を見ると、確かに藍色の空に明るい光が瞬いていた。夕暮れ時に見える金星は宵の明星と言うのだとか。昔本に書いてあったのを覚えている。


「おぉーホントだ!明けの明星ってやつか?」


「……明けは早朝」


 健斗が冷静にツッコんだ。どうやらこのメンバーの纏め役は健斗みたいだ。薄々思っていたけど。


「そういや昭人、家族に遅くなるって言ったのか?」


「あ、うん。さっき連絡しといたよ」


「おっ、行動早いな」


「どっかの遅刻常習犯の虎とは違うね」


「……それって俺のことか」


「他に誰がいるのさ」


「お?言ったな?猫と虎じゃ大違いだぜ?」


「ちょ、二人とも落ち着いて……」


「だ、だめだよ健にぃ……」


 想が健斗の腕を引っ張って俊太との距離を取ろうとしている。それを見て僕も俊太の前に立って押し返す。何だかんだこの状況楽しいかもしれない。


「おまたせー!……あれ、ケンカな感じー?」


「ほ、ほら、樹帰ってきたよ」


 戻ってきた樹は、望遠鏡を担ぎながら走ってきたせいか少し息が上がっていた。


「ほら、登るよー」


「ったく、今日は見逃してやるよ」


「はいはい」


 そして僕たちは獣道を登っていく。街灯がないので足元が見えにくい。木々が風に揺られてザワザワと騒ぎ立てる様子は、まるで心霊スポットみたいだ。


「うわっ……と」


「昭人、大丈夫か?」


 どうやら足元にあった根に引っ掛かったみたいだ。姿勢が乱れたところを俊太が支えてくれたお陰で助かった……。


「あ、ありがとう俊太」


「なぁに、気にすんなって」


 そこからも暫く荒れた道を登り続けた。10分くらいだろうか、ようやくひらけた場所に出ることが出来た。


「やっと着いたー」


「いつも思うけど地味に遠いんだよなー」


「まぁ、やっと見つけた観測スポットなんだからさ」


 開けた場所と言っても、偶然ここだけ木が生えなかったかのような、人工的に切り開かれたような形跡が見受けられなかった。ただ、今ここに立っている周辺だけ土が盛り上がっていて、360度空が見渡せるようになっている。


「ここだけステージみたい」


「でしょ!なぜかこの辺だけ木がなくて土が盛り上がって丘みたいになってるんだよねー」


「ほら、早速始めようぜ!」


「午後8時ジャスト、観測開始」


「新メンバーを交えて、始めていこうか!」


 おーっ!!!  

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星と重ねたあの場所で ゆばもと @CometMeteor_140

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