湖の上で
第1話
「…………?」
次に青年が目を覚ましたのは、美しく景色を跳ね返らせている湖の上だった。
湖の上に浮き、動くとぽちゃんと水が落ちるような音がする。
「…………」
(やっと解放されたと思ったのに…………)
世の中の青年とはこのようなことを考えているものなのだろうか。
死んだような、光が映らないその黒い瞳に灯火が灯ることを願う。
『ちょちょちょー!なんでそんな暗い顔してるんですかっ!?』
(!?)
どこからか声が聞こえてくる。
耳に響き渡るような、どこか落ち着くそんな声で。
『今思いましたよね!?なんでこんなとっても清楚系みたいな声してんのに元気な口調なんだって!思いましたよね!?ねえ!』
(いや思ってねえ…………)
心の中でツッコミを入れている青年とわがままそうな少女とは、何という地獄絵図だろうか。
「…………てかあんた誰? 」
この言葉を待っていたのだろう。
よく聞いてくれました、と言う前置きをし、少女は話し始める。
『私はある世界の女神様!このパーマがかかった可愛らしい栗毛にサラサラな前髪!この銀色の瞳!ロリボにも聞こえるが意外と清楚系のこの声!!そしてこの性格!優しいでしょう!?』
「……………………………………………………」
「うるさ…………」
『はぁん?』
女神様にとってうるさいは地雷だったようで、頬を引き連れ青年を睨みつける。その後、突如緑色の煙幕が現れる。
(え…………汚ぁ……)
その煙幕が少し黄緑色になるとともになくなり、その中からパーマがかった可愛らしい栗毛にサラサラな前髪を飾り、その上綺麗な銀色の瞳をした少女が現れた。
「もしかして私のこと舐めてます?」
にっこりと笑ったその表情からは、奥底知れない怒りが伝わってくる。
私は女神なんです、拝んでくださいと脳内に直接訴えかけてくるほどには怒りが大きくなっているようだ。
「大体この容姿を見て綺麗と言わない方がおかしいんですよ、どうですかこれで。説明だけじゃなくて実物を見た感想はどうですか?綺麗、ですよね?美人、でしょ?」
少しだけ…10秒くらいだろうか。沈黙が続いた後、青年が口を開く。
「まあぶすとは思わないけどさ…」
「素直に綺麗、美人とは言わないんですね。ツンデレですか?」
「ツンデレって何?」
「………………………………」
その後も女神様は青年をディスったり直球に暴言を言ったりするも、淡々とかわされ、カウンターを入れてくる。それだけならまだいい。だが1番厄介なのが…
「マジでなんなんですか…」
「?何言ってるの?会話してるだけだけど?」
そう、無自覚なのだ。
「もう、もう怒りました……!!おめえさんなんか私の力でどうにでもできるんですから…!!」
すっかり疲れ顔で、目元を赤くして今にも涙が出てきそうな顔をした女神様が大声で怒鳴る。
「あなたは!私の命令によって、ある世界の宗教を壊していただきます」
「ある世界の宗教…?」
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