綺麗な女神様は殺人を命令してきました。
にゃん!(=^・・^=)
プロローグ
ヒタヒタと少し水っぽいような足音がする。
見てみると汚れたパーカーを着た青年が歩いていた。
もう何日も着替えていないような見た目だった。
手からは血が垂れているようだ。長袖のパーカーなのでよく見えない。
少し長めの廊下をゆっくりゆらゆらと揺れながら歩いていく。
「…………」
青年はなんの言葉も発さなかった。もしくは、聞こえなかった。
リビングへの扉だろうか。ドアノブに手を伸ばすときチラッと見えた袖の中には小さめのナイフが見える。だが、血の正体はナイフからこぼれているわけでわなく腕の傷のようだ。
青年は扉を開けた後も無駄な動きを一切せず、ただただゆらゆらと前へ歩いていく。
リビングは典型的な裕福な家の部屋だった。
壁紙からはセンスが感じられ、観葉植物や花が綺麗に手入れされ飾ってある。
シャンデリアもぶら下がり、その下には少し高そうな木のテーブルが置いてある。
青年はそれにも気も触れずベランダへとつながる窓へ向かっていく。
窓を開け、ベランダへと出る様子が映し出される。
その先に広がっている景色は、綺麗な都会に夜景だった。
そうだ、そうだったな、ここは大都会東京のタワマン最上階。
この都市に住む人々の生活の灯火が綺麗に輝くのだ。
車のようなものが動き、止まりを繰り返す。
ベランダにはプランターに植えてある綺麗な花がいくつも置いてあった。
上品なその品から、持ち主の趣味の良さが映し出される。
青年は袖の中に持っていったナイフを取り出すと、空高く持ち上げた。
「…………違う…………な…」
掠れた声でそう呟くと、首ぎりぎりまで迫っていたナイフを下に投げ捨て、ベランダから空中へと繋ぐ塀に登った。
柵に手を掛けると、ぐんと体を前に持っていき、柵の上に座った。
そして少しずつ空中に下がっていった。
そして
そのまま、転落した。
ボサボサして表情が見えないその顔から確かに見えたのは、「笑み」だった。
「これ…………で…………いい…」
「ご…………めん…父、さん…………」
目からこぼれた水分が空中に舞う中、それより早く下へ下へと落ちていく美形の青年。
自分が死ぬことを良いと言った暗い青年。
最後に意味深に父さんと呟いた青年。
これは、あなたたちだけが知ることが出来る、彼の物語_______。
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