第四話 試験勉強する赤鬼
「二週間後?」
「はい。天願学園の一般入試は2/1です。今からちょうど二週間後ですね。」
「頭がおかしいんですか?」
「ああ、大丈夫です。もし落ちたら公立の異能関係の学校に行ってもらうので。」
叫び出したい気持ちを抑える。
異能を信じたのが今日で、使いこなせるかもわからないのに二週間後に国立最難関を受ける?頭がおかしいとしか思えない。異能師は頭おかしい。俺の中でその言葉は座右の銘になった。
「さ、時間ないですよ。勉強しなさい」
「...。」
異能師は頭がおかs((以下略。
ー・ー・ー
あの後、総務省異能管理庁からマンションの仮部屋を与えられた。今はその部屋のベッドに寝転んで色々考えてる最中だ。部屋の外には俺の見張りがいて、エントランスには警備員がいるだろう。
はっきり言って筆記は余裕だ。今の中学は主席で入ったし、テストでも満点以外取ったことない(マジ)。
「問題は実技、だよなぁ...」
“異能師を鍛える”と謳っているのなら、十中八九実技試験は異能を使ったものであるハズだ。問題は俺が異能を使えないこと。そもそも街を壊したときの記憶も朧げで、発動条件もわからない。
つまり。
「あと二週間である程度異能を使えるようにならないといけない、ってことか。」
ウジウジ考えててもしゃーないな。
俺は部屋を出て見張りに話しかける。
「突然ですがカントリーマアムは好きですか?」
「は?」
ー・ー・ー
「クララが立ったー!!!!!」
やまびこの反響音が響く。山全体がクララ立ったことを喜んでいるようだ。
今、俺は超広大な野原にいる。
移動中は目隠しに耳栓をつけさせられた。運転手さん曰く異能管理庁は極秘の組織で、場所を知られるのは厄介らしい。そんなことより早く手錠を外さんかい。
なぜ俺が山奥の野原にいるのか。それはもちろん俺の異能の特訓をするためである。暴れたときのために2人の異能師がついてきてくれた。
「B級異能師の増井だ。」
増井さんは豪快な青年で、体つきもがっしりしている。
増井さんの短い挨拶が終わりもう1人の女性が喋り出す。
「回復要員の直木っス。異能は“
治癒系の異能か。重宝されそうだけど俺みたいなガキに付き合わされてるってことは治癒系の異能は多いんだろう。
一応2人に倣って自己紹介をする。
「
すると、増井さんが同情したような目を向けてきた。
「国立最難関って...。天願か。」
「やっぱり有名ですか?」
「有名もも何も異能界では超名門だよ。―――俺と直木は卒業生だけどな。」
そういって直木さんはドヤ顔をする。学歴自慢かよ。趣味悪。これから受けるやつに自慢することねえだろ。
「私は技術科に行って準異能師になったっス。」
ほーん。学歴厨に抜き打ちテストするか。
顔を無理やり切り替えて質問する純真無垢なガキの顔をする。
「準異能師ってなんですか?」
「異能師を補佐する役割だな。非戦闘員とかスタッフは準異能師って呼ばれてる。」
ちっ。即答かよ。
「さあ!雑談はここまでだ。二週間で異能を使こなさきゃいけないんだろ?」
「ちょっと待ってください。このデザイン性のかけらもないブレスレットを外したいので。」
「鍵あるぞ。」
「ください。」
「はは、ちょうどいい。どんくらいの運動神経か見てやろう。」
ん?嫌な予感。
「取ってこい!」
「は!?」
ヒューンと音を立てて遠くへ飛んでいく鍵。
やっぱり異能師は頭おかしい。
「大体1km先に投げた。走って取ってこい。タイム測るから。」
はあ。まだ筋肉痛治ってねえよ。
ー・ー・ー
「3分12秒。高校生の平均を28秒上回ってるな。おめでとう。」
増井さんのあまり心のこもってない祝福を右耳から左耳に聞き流しながら手錠を取る。やっと取れた、と思った瞬間手錠が黒く染まりボド、と音を立てて地面に落ちた。
「...なんすかこれ。」
「ほう。異能の力を抑えすぎて手錠が耐えられなかったんだな。この手錠は異能を抑えれば抑えるほど重くなる。この染まりようから見るに手錠の重さは10kgを超えてたはずだが?」
「なんだよそれ...。」
重いと思ったわ。銀製のの手錠なんてつけたことないからわかんなかったけど。
何はともあれやっと手錠が取れた。ランニングもちょうどいいウォーミングアップになったし。
「発動条件はわかんないけど...。暴れたらお願いします。」
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