第三話 赤鬼の説明会

部屋を出ると警備員に部屋に連れて行かれた。どうやらこれからことについて説明してくれるみたいだ。警備員の人に手錠を外すように頼んだが綺麗に無視された。チッ。


「すいません、お姉さん。髪留めか何かいただけませんか?前髪が長くて気になるんです。」


部屋の机の前に座っていたショートカットのお姉さんに話しかける。

お姉さんは不思議そうな顔をしながらヘアピンをくれた。―――へっ!かかったなっ!

手首を固定されて動かしづらいけど、穴の奥へヘアピンを突っ込んでかちゃかちゃする。鍵開けられたらかっこよくね?と至った中2の俺のおかげで俺は鍵開けを体得していた。

ありがとう、中2の俺。

...あれ?おかしいな、これマジの手錠じゃん。普通の手錠と構造違うんだが?

中2の俺。遊んでる暇があったら勉強しろ。


「あなたは百目鬼伊織くんね。異能について詳しく説明しろと長官から言われてるわ。」


手錠と俺の格闘を温かい目で見守っていたお姉さんは俺に椅子に座るように促し優しく語りかけた。


「まず異能っていうのはこの世の法則を超越する力。平たく言えば超能力のことね。使える人は日本に500万人もいないわ。」


えーっと?1億3000万いて500万以下だから全人口の3%くらいか。


「少ないっすね。」


「そうね。でも100人に3人が超能力を使えるって考えると多いように思えるわ。」


お姉さんはコホンと咳払いして続ける。


「んで、異能師っていうのは異能を悪用する異能犯罪者と戦ったり、あやかしと戦ったりする人たちのこと。」

「あやかし...?」


妖怪の妖だよな。


「そう。妖はいわば妖怪。異能と妖は切っても切れない関係にあるの。」


妖怪と超能力が関係あるって、壮大なファンタジー小説みたいだな。映画化すれば全米がなくだろう。


「異能のルーツは、平安時代まで遡るわ。平安時代は妖が発生しやすい暗くて人目につかない場所がたくさんあったの。」

「平安時代...。」

「当時はそこらじゅうに妖が湧いていたそうよ。それに対抗するために妖を研究して、人がその力を使えるようにならないかと考えたのが安倍晴明。」


安倍晴明って、平安時代の。


「そう。安倍晴明は妖を体内に取り込むことで力を得られると結論づけたの。」

「体内に取り込むってまさか...。」

「そう。食べるの。平安時代なんだから注射もなにもないしね。」


そりゃそうだろう。平安時代に注射器があったら注射器の発明者は泣くはずだ。


「それで、妖を食べた人の血が混ざり合って現在に至るの。つまり異能は先天的なものになったっていうことね。」


なるほど。設定がごちゃごちゃしたB級映画を見せられた気分だ。


「あなたには異能師になってもらうってことで、異能師についてのノウハウを学ぶ最高峰、“国立天願学園こくりつあまはらがくえん“に通ってもらうわ。」

「へー、そんな学校があるんですね。」

「異能界の東大、と言われるほどの最難関よ。」


高校なのに東かよ。

異能科と技術科があり、異能科では異能師を、技術科では準異能師をそれぞれ育てるらしい。準異能師がなんなのかは知らん。


「あ、準異能師って異能師を補佐する人たちのことね。武器作ったり装備作ったり。」


1クラス20人の5クラス。1学年100人で3年で卒業らしい。倍率えぐそうだな。


「ものすごく重大な質問があります。」


お姉さんはゴクリと息を呑む。俺の真面目な雰囲気に気圧されたのだろうか。


「共学ですか?」

「ええ。」

「っしゃああああおらああああ!」

「えっ⁉︎ちょっと大丈夫?」

「何がですか?」

「情緒!」


異能師を鍛える、と言うところ以外は普通の高校っぽいな。


「この学園の大きな特色―――それは学生のうちから異能師としての経験を積んでもらうことよ。」

「学生のうちから?」


インターンみたいな?


「四人1組のチームを作って、学校の地下にある洞窟内で妖を討伐するの。討伐数によって成績が決まったりもするみたいね。」


へー。すごいシステムだ。


「全寮制よ。」


ふぁっ!?女子がいるのに全寮制!?


「問題行動を起こしたら処罰ね。」

「処罰ってどんな感じですか?」

「退学とかになるわ。」

「退学とかになるんですね。」


退学になったらどうなんだろ。別の異能関係の学校に飛ばされるのかな?


「詳しくは入学後に説明します。二週間後の試験、頑張ってくださいね。」


「...え?」


今の俺を有識者が見たらメデューサとばっちり目があったのかと思うだろう。ビッカーズ硬さが2000くらいだと思えるほど俺の体は硬直している。


「二週間後?」

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