第二話 赤鬼の理解
『馬番号で16、2、4、9、15、1、11、17、3、12、14、10、6、7、13、5、8だ。』
迷いなく言い切るカルシウム不足誘拐犯。
「16、2、4、9、15、1、11、17、3、12、14、10、6、7、13、5、8ですね。」
時間をかけて復唱しスマホにメモする。
17頭も馬がいることなんて初めて知った。
レースが始まる。実況が早口すぎてよく聞き取れなかったので割愛。
そして順位は―――。
「...16、2、4、9、15、1、...11、17...3...、12、14、10...6、7、13、5、8!」
全て完璧に一致した。しかも16番の馬は近頃調子が悪く、いわゆる大番狂せというやつだった。前レースで1位を取った7番の馬は微妙な順位に落ち着いていた。
前レースを参考にもせず17頭の馬の順位を当てたってこと?
「どういうタネですか。」
『私の異能は
「
流石に信じざるを得ない。異能とやらは実際に存在するようだ。ネーミングセンスはないけど。ラプラスの悪魔から取ってるのかな?
「それで、あなたが予知能力を持っているのとハイスペック高身長イケメンを誘拐するのはどう言った関係が?」
『まさかとは思うが...ハイスペック高身長イケメンとはお前のことか?』
「はい。」
しばしの沈黙。何か問題でもあっただろうか?
『お前、友達いないだろう。』
「高校生誘拐するあなたより多いと思うんですけど...。」
再び沈黙。傷口をえぐってしまっただろうか?
少し時間をおいてぼっち誘拐犯は話し出す。
『先ほどの新聞を見ろ。お前が生まれ育った町で大規模なガス爆発があったとあるだろう。お前は1/23の夕方から今までの記憶はなく両手両足粉砕骨折。』
「なるほど、僕は赤鬼に攻撃された哀れな子羊ということですね。」
『お前ほど生意気な子羊は世界中どこを探してもいないだろう。』
「そんなことないでしょーw」
『訂正しよう。お前ほど生意気な子羊は歴史上どこを探してもいないだろう。』
「なんで子羊の話をしてるんですか。真面目に説明してください。」
『話を逸らしたのはお前だろう!』
このおっさん、ツッコミがキレッキレである。
『お前も薄々気づいているだろう。お前が赤鬼だ。』
...。
わかってた。
まあ話から聞くとそうとしか思えないしな。
でも暴れた実感もないし記憶もない。
「怪我人は?刑期は?弁償代はいくらですか?」
『お前の罪状は「過失異能行使」と「器物破損」だ。怪我人はいないし刑務所に入ることもない。』
「え?じゃあこのスタイリッシュなブレスレットを外してくれませんか?」
『黙れ!』
お父さん、元気ですか。
ー・ー・ー
『私は総務省の異能管理庁の職員だ。なぜ君がここにいるのか、というと再び暴走するのを防ぐため、治療するため、事情を説明するため、そして勧誘するためだ。』
え、こいつら国直轄かよ。普通に偉い人たちじゃね。厨二病とか言っちゃったんだが?
伊織が冷たい汗を流していることも露知らず異能管理庁職員は続ける。
『手錠は外せない。その手錠は材料として銀が使われていて異能の発動を一時的に抑える効果があるからな。』
「え?一生
『お前が一般人として一生を過ごすならな。』
どういうことだろう。
『
「いのうし?なんすかそれ。」
『異能を行使して異能犯罪者から一般人を守る仕事だ。お前の異能をうまく使えば戦力になるだろう。無論、やりたくなければ今日の記憶を消して解放しよう。銀のアクセサリーを常に身につけなければならんがな。』
急に熱烈な勧誘受けてる件について。暴走した中3勧誘するって人手不足かよ。
頭の中で天秤が揺れる。片方は「このまま平穏に暮らす」「一生手錠をつける」「今日のことを忘れる」。逆側には「思う存分力を使える」「職業が決まる」「楽しそう」。
「やります、異能師。」
『決断早えな』
ー・ー・ー
その後、部屋から解放されいくつかの書類にサインした。内容は一般人としての生活を捨てる、だとか守秘義務を守る、だとか。
『異能師として生きていくと決めたならもう後戻りはできないぞ?』
「そんなことはわかってます。自分で決めたことだし。」
『はは、お前みたいな気合いが入った
「そんなことより...。」
『なんだ?質問か?』
「このインテリアセンスのかけらもない部屋から早く出してくれませんか?」
2、3秒の間。
ドアがゆっくりと開いた。
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