赤鬼のスマッシュ

夜野やかん

赤鬼と天願学園

第一話 赤鬼の目覚め

「痛゛っ」


目が覚める。

その瞬間全身の毛穴という毛穴に針を刺すような、筋肉痛を極限まで痛くしたような痛みが全身を駆け巡った。痛い。

ベッドから落ちてしまったのだろうか。

高校受験も近いし、俺寝相悪いしな。今何時だろ。

異常なほど体が痛むのが気になるが、学校に行かなきゃ。

立ち上がって体を伸ばそうとして気づいた。


「ん?どこだ?ここ...」


壁、床、天井。全てが灰色の部屋。正面にドア。家具なし。


どこだ、ここ。


改めて立ちあがろうとして気づいた。

腕に手錠がついている。


「冗談きついぜ...」


誘拐?監禁?

とりあえずドアの向こうに向かって叫んでみる。


「おーい、俺を誘拐しても意味ないぞ!父母共に普通のサラリーマンだ!!金なんて無いし!」


...反応なし。


天井から『ピー、ガガガ』とノイズが響いた。びっくりして首だけ捻って天井を見上げようとすると、腹部から腕にかけての筋肉が激しく痛んだ。


い゛ぃぃ...。」


人生の痛みランキングなるものを作ったらしばらくは暫定一位として君臨できるだろう。泣きそう。


『あー、あー。聞こえてるか?識別番号C11番、C級異能犯罪者、百目鬼とどめき伊織いおり。』


「―――は?」


識別番号?異能犯罪者?こいつなんで俺の名前知って―――。

ガタンッ

立ちあがろうとして、膝から力が抜けた。

そのまま床にダイブ。床との熱烈なキスを交わしてしまった。


...もうやだ。


『あまり動くことはおすすめしないな。既に治療してあるが、全身の筋繊維が激しく損傷していた上に両手両足が粉砕骨折していた。』


...ん?両手両足粉砕骨折?

真っ当に生きていれば聞くことのない言葉に俺は眉を顰める。


「あー、とりあえずこのオシャレな銀のブレスレットを外してくれると助かるんだけど?」


『自分の立場を理解しているのか?』


数秒間思考。相手は誘拐犯(多分)、俺は囚われの身。


「すみません、事情を説明してくれてませんか?旦那。肩でも揉みますぜ?」


したがってへりくだるのが正しいだろう。

マイクの向こうで誰かがため息をついたように聞こえた。


『まずはこの映像を見ろ』


その言葉と同時に、俺の頭の中に鮮明な映像が浮かんでくる。

なんだ、これ。

頭の中に異物が侵入しているかのような違和感。非常に不快だ。


〈グオオオオオオオオオ‼︎〉

 赤い影が雄叫びを上げながら街を壊しまくる。逃げ惑う人々。飛び交う瓦礫。高速で動き回っている赤い影は動きを止めた。

〈グルアアアアアアアアアアアアア‼︎〉

真紅の肌。筋骨隆々の身体。虎柄の腰巻き。

一対の角。

これは...鬼?

最後に鬼が俺の方に向かってきたところで映像が終わった。


なんだったんだ今の。


『今の映像を見てどう思った』

「俳優の演技が下手くそですね。こんなのが映画館で放映されたらチケットを破り捨てますよ。」


しばしの沈黙。


『冗談を撤回するなら今だ。』

「冗談です。頭の中に不快な映像が流されたのでつい...。」


全身で「てへぺろ」を再現して男子高校生を誘拐し手錠をかける特殊性癖誘拐犯の機嫌をとる。


『それは失礼、こちら側の異能でテレパスで映像を送らせてもらった。』


今のが異能...?異能ってさっき言ってた異能犯罪者の異能だよな?


「異能とは特力のことだ。超能力のようなものだな。」

「手首から糸出してビルの間移動したり雷落としたりできるんですか?」

「人によってはな。」


わーお、まるでマー⚫︎ルだぜ。


「旦那、そんな嘘信じるのは中学2年生までですぜ。」

『...。』

超能力そんなの信じてるなんて恥ずかしぃー。プークスクス。」

『君ほどの小童ガキにここまでコケにされたのは初めてだよ。』


つい調子に乗って煽ってしまったが、俺はいつ殺されてもおかしくない。怒らせたか?


『そんな小童ガキにこの能力を使うのも癪だが...。』


突然部屋の天井からモニターが出てくる。

勝手にチャンネルが切り替わりLIVEの文字が表示された競馬が映し出された。


「チャンネル変えるだけ?しょぼくないですか?」

『まだ能力は使っていない!』


怒りっぽいな。カルシウム足りてないのか?


『これはリアルタイムの競馬の様子だ。』


右上には1/25(火)の文字が。


「あの、今日は1/23ですよ?旦那も初歩的なミスするでやんすね。」

『今日は1/25だ。』


天井からスマホと新聞が落ちてくる。俺のスマホだ。新聞には1/25の文字。スマホのホーム画面も1/25と書いてある。


『お前は昨日丸一日ここで眠りこけていた。』

「ほぉ...。」


新聞の内容は俺の生まれ育った町で大規模なガス爆発が起きたという大変興味深いものだった。そんな事故あったっけ?という疑問はさておき内容がどうであれ全国紙の一面に自分の町が表示されているのはなんだか嬉しい。

スマホを開いて検索ホームで「今日 日付」

と調べる。今まで生きてきた中で最も馬鹿げた検索ワードだろう。そんな俺に万能なグー⚫︎ル先生は1/25と答えてくれた。


「もしかして...俺は昨日ここで眠りこけていた...!?」

『だからそう言っているだろう!』


何はともあれ今日は1/25で1/24の記憶が俺にはないというのは事実らしい。つまりこの競馬の映像もLIVEだろう。


『今から次のレースの順位を当てる』

「そんなことできるでやんすか⁉︎」

『その口調をやめろ!』


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初投稿の小説です。下手くそな表現もあると思いますが温かい目で見守っていただければ幸いです。週一投稿を目指します。

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