ゲーム

 学校が終わり、私と紫音、一花と雅の4人は親睦会をするため近くのファミレスに来ていた。

 各自食べたいものを注文したあとは今日の話やこれまでの自分たちの話をしていく。


「へー、紫音さんって宮城出身なんだ。それにしてはあまり鈍ったりしないね?」


「まぁ、訛らないように気をつけてるからね。でも、まだたまに訛る時があるから、意味が分からない言葉があったら教えてね」


「わかった。雅はこっち出身なの?」


「そうね。私は神奈川出身よ」


「白玖乃もこっちだって言ってたし、うちは千葉だから、他県から来たのは私と紫音さんの二人か」


「うちの学校は少し特殊だからね。他県から来る人も多いらしいよ」


「やっぱそうなんだね」


 そうなのだ。うちの高校は入学する際に寮生活かアパート生活かを選んで生活していくため、通学時の時間や距離などを気にする必要がないので、他県から入学する人も多い。

 なので、一人暮らしをしたい人や都会の高校に通ってみたいと考えている人には結構人気の高校だったりする。


 その後、注文した料理が来てからも話は続き、みんなと仲を深める事ができた。





 話しながら食事をしていたためか、食べ終わる頃にはちょうど良い時間になったため、今日はこの辺りでお開きとなり、私と紫音はアパートに帰ってきた。


「白玖乃、今日の晩御飯だけど、さっきファミレスで食べたし、軽くおにぎりとかにするけどいい?」


「ん。大丈夫だよ。私も普通の夜ご飯は食べれそうにないし」


 私がそう返事をすると、紫音はキッチンに行きおにぎりを作り始める。

 しばらく待つと、4つののおにぎり皿に乗せて紫音が戻ってきてテーブルの上に置いた。


「ありがと」


 私はそう言いながらおにぎりを一つ取り口に入れる。すると、思わず口をすぼめたくなるほどの酸っぱさが口の中に広がり、思わず声に出してしまった。


「す、酸っぱい!え、なんかすごく酸っぱいんだけど!」


「ん?あぁ、それは梅干しだね。実家から持ってきたやつだけど、そんなに酸っぱかった?」


「今まで食べた中で一番酸っぱい」


「そんなになんだ。今まで普通に食べてたから分からなかったけど、この梅干し酸っぱかったんだね」


 紫音はそう言いながら、私と同じ梅干しが入ったおにぎりを普通に食べている。


「…ちなみになんだけど、他のおにぎりの具は何かな」


「他の2つは鮭だよ。だから安心して食べて。なんなら、梅干しのやつ食べれそうになかったら私が食べてあげるよ?」


「大丈夫。せっかく紫音が作ってくれたんだし、最後まで食べるよ」


 私はそう言うと、酸っぱいのに耐えながら一つ目のおにぎりを食べ終え、二つ目のおにぎりも食べた。

 おにぎりを食べ終えた私と紫音は、一人ずつお風呂に入り、少しまったりしてから寝るのであった。





 私と紫音が高校に入学してから、早くも二週間が経った。初回の授業では恒例の自己紹介や授業説明、テスト時の説明などがされた。

 委員会や実行委員については、私と紫音の二人で図書委員になった。

 図書委員は、活動頻度は少ないが、当番制で昼休みと放課後に本の貸し出しや書棚の整理などがあるため、誰もやりたがらず、すんなりと決まった。


 それからは特に変わったこともなく…と、言いたいところだが、大きく変わったことがある。

 それは、入学式の日の夜以降、紫音はたまに私と一緒にお風呂に入りたがるようになった。最初こそ断っていたものの、私より大きいはずの紫音が小さく見えるほど可愛らしくお願いしてくるものだから、結局は一緒に入っていた。

 さすがに何度も一緒に入っていればいい加減慣れてきて、今では二つ返事で一緒に入っている。


 そんな二週間を過ごして、今日は日曜日の休日である。特にやることのない私たちは、部屋で各々やりたい事をやって過ごしていた。

 スマホで暇つぶしになりそうなゲームを探していたところ、ちょうど良さそうなFPSのアプリがあったので、紫音を誘って遊ぶ事にする。


「紫音、暇だしこのゲームで一緒に遊ばない?」


「いいよ。どんなやつ?」


「決められたフィールド内でプレイヤー100人が殺し合って、最後に残った一人が勝ちってゲーム」


「面白そうだね。やろうか」


 さっそく私たちはアプリをダウンロードしてゲーム画面を開く、いろいろと設定した後、お互いの準備も整ったところでゲーム開始だ。


 ゲームを始めて最初は順調にいくが、時間経過でエリアは狭くなるし、生き残っている人たちだけあってみんな強かった。


「あ、私死んだ。紫音はどう?」


「私はまだ生きてる……あ、死んだ」


「結構面白かったね。もう少しやろうよ」


「そうだね」


 そうしてしばらくゲームを続け、お互い慣れてきたころ、紫音はゲームに集中するあまり、言葉がどんどん訛っていった。


「え?今の当たったべ」


「は?おめぇ今どごがらでできたん?」


「まぁーだ死んだ。このゲームバグってんでねぇがや」


「おねげーだぁー。勝たせてけろぉー」


 終いには勝てない理由をバグだと言い、お願いまでし始めた紫音。

 ゲームに集中したいのに、彼女の訛りが気になりすぎて、そちらばかり気にしてしまい最初以降序盤でやられてしまう。


「はぁー?!おんめ、どごさ潜んでた?!そんなんさ気づくとか無理だべ!もーやんなってきた」


 紫音はそう言うと、疲れたのかアプリを閉じスマホを置いた。

 そして、敵には気づかなかったが、私の視線には気付いたのか私の方を向いて見つめてくる。

 しばらくお互い無言のまま見つめあっていたが、私の方から紫音に話しかける。


「紫音って、感情が昂った時にも鈍るんだね」


 私がそう言うと、彼女の顔は目に見えて赤くなっていった。その反応が面白くて、私はさらにからかってみる事にした。


「おねげーだぁー。勝たせてけろぉー」


「やめでけれ!それ以上はやめでけろ!」


「けろけろ」


「あぁぁぁぁあ!!」


 紫音は恥ずかしさのあまりそう叫ぶと、ベットに向かって行って布団に潜った。

 私はそんな紫音が可愛くて、彼女が潜った布団に入り込み、彼女のことを抱きしめる。


「大丈夫だよ紫音。とても可愛かったし聞いてて楽しかったから、気にしなくていいよ」


「…でも、あんなに訛ってるとさすがに引くでしょ。何言ってるかもわからないだろうし」


 布団に潜っているから、紫音がどんな顔をしているかは分からないが、おそらく泣きそうな顔をしていることだろう。

 だから私は、そんな彼女を安心させるため、抱きしめている腕に力をこめて彼女を引き寄せる。


「そんな事ないよ。最初の頃にも言ったけど、私は方言とかに憧れがあるし、その訛った話し方だって紫音の魅力の一つなんだから。

 むしろ、紫音の新しい一面を見るたびに嬉しくなるよ?だからそんなに気にしないで」


 私がそう言うと、紫音も少し落ち着いたのか、「ありがとう」と言いながら、私の背中に腕を回して抱きしめ返してくれた。


 その後私たちは、そのまま軽くお昼寝をする。起きた頃には紫音もいつも通りに戻っており、私たちは晩ご飯を食べた後、一緒にお風呂に入って眠りについた。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇

よければ同時連載しているこちらの作品もお願いします。



『人気者の彼女を私に依存させる話』


https://kakuyomu.jp/works/16817330649790698661

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