お昼

 桜井先生案内のもと、学校案内に来た私たちは、校舎内の各教室説明や体育館、食堂や購買の場所を教えてもらっていた。

 そんな中最も驚きだったのは食堂…ではなく、食堂に来た時の桜井先生だった。


「皆さん、こちらが食堂です。こちらでは、調理担当の方たちが出来立てを提供してくれるためとても美味しいです。また、通常メニューの他に、季節ごとに旬の食材を使ったメニューもありますので、そちらも楽しみにしていてください。それと、こちらの食堂には裏メニューがあり、そちらはまさにレストラン並みの美味しさなので、機会がありましたらそちらも食べてみてください。ちなみにですが、私のおすすめは秋限定のさんま定食で--」


 その後も桜井先生による食堂メニューについての語りは続き、すべての案内が終わる頃には、食堂での時間が一番長いという結果となった。





 学校案内が終わった後、教室に戻ってきた私たちは各々の席に座り、全員が座った事を確認した後、桜井先生が話し始めた。


「先ほどはすみませんでした。食堂のメニューの事になると、どうしても語りたくなってしまって…。予定より少し遅くなりましたが、これから10分ほど休憩としますので、ゆっくり休んでください」


 桜井先生はそう言うと、窓際に置かれた教師用の椅子に座って物思いに耽っていた。おそらく、先ほどのことを振り返って反省しているのだろう。


 私がそんな事を考えていると、染園さんが振り向いて話しかけてくる。


「白玖乃、さっきの先生凄かったね。あんなに食堂のメニューに詳しいってことは、毎日通ってるのかな?」


「どうだろうね。でも、真面目そうなイメージだったけど、思ったよりも面白い先生かもね」


「確かに。あれがギャップ萌えってやつかな?」


「分からないけど、染園さんは萌えたの?」


「萌えかどうかは分からないけど、可愛いなとは思ったよ。それと一花でいいよ。うちはもう白玖乃って呼んでるし」


「わかった、一花」


 その後も、私と一花は学校案内で見たことや桜井先生について話をする。

 すると、休憩時間も終わったのか、桜井先生が席から立ち上がり、黒板の前に立った。


「それでは次に、今後の行事説明に入ります。まず6月に球技大会があります。次に、7月の中旬から中間テストがあり、テスト期間が終わりましたら夏休みです。

 夏休みの期間については、8月下旬までの約一か月です。9月下旬には文化祭もありますので、楽しみにしておいてください。12月の下旬からは冬休み、翌年の1月下旬から期末テストとなります。

 また、校長先生の思い付きで、参加自由の急なイベントが開催される場合もありますので、都合の良い方は参加してみてください。


 以上が行事説明となりますが、何か質問はありますか?…無いようなので、行事説明を終わります。

 また、明後日は委員会や実行委員などを決めたいと思いますので、壁に貼ってある委員会などが記載された紙を見て、希望するものを考えておいてください。では、午前の予定は以上となるので、お昼休憩にします」


 桜井先生は行事説明を終えお昼休憩を告げると、すごい速さで教室を出ていった。おそらく、食堂でどうしても食べたい料理があったのだろう。

 私もお昼を食べるため、紫音が持たせてくれたお弁当を机の上に置いて食べる準備をしていると、紫音と雅が私に声をかけてきた。


「白玖乃、私たちも一緒にご飯食べていい?一花さんもよかったら一緒にどう?」


「いいの?なら一緒に食べようかな」


「私もいいよ。でも机が足りないけどどうしようか」


「なら、一花ちゃんの机と白玖乃ちゃんの机を合わせて、紫音と私は椅子だけ持ってくればいいんじゃないかしら?」


「それなら大丈夫そうだね。じゃあ椅子を持ってくるよ。行こう、雅」


 紫音と雅が椅子を取りに行っている間に、一花は自分の机を私の方に合わせて、朝に購買で買ってきたのであろうパンなどを机の上に置いた。

 私と一花の準備が終わるのと同時に、紫音と雅が椅子を持って来て座ると、紫音と雅は机の上にお弁当を置いた。私は、雅がお弁当を持って来ているのを見て、彼女もアパート暮らしなのかと思い尋ねてみた。

 

「雅もお弁当なんだ。てことは雅もアパート暮らしなの?」


「違うわよ。私は寮で生活してるわ。ただ、寮生でも、許可さえ取れば厨房を貸してもらえるから、それで自分のお弁当を作ったのよ」


「なるほど。そんなことできるんだ」


「白玖乃ちゃんもお弁当なのね。それは自分で作ったの?」


「違うよ。私のは紫音が作ってくれたんだ」


「あら、そうだったのね」


 そんな話をしながら、各々食べる準備をしていく。私は楽しみにしていた紫音お手製のお弁当を開け、中を見てみる。

 今日のお弁当は、ご飯、ミニハンバーグ、ほうれん草入りの卵焼き、きんぴらごぼう、ミニトマトだった。


「紫音、今日も美味しそうだね」


「えへへ、ありがとう」


「おぉー、白玖乃と紫音さんのお弁当美味しそうだね」


「本当ね。紫音ちゃんは料理も上手で羨ましいわね」


「そういう雅のも美味しそうだよ。私のおかずと1つ交換しない?」


 そう言いながら、紫音はほうれん草入りの卵焼きを、雅はハムを巻いた卵焼きを交換していた。

 そんな2人を眺めていると、横から視線を感じたのでそちらを見てみる。すると、一花が物欲しそうに私のことを見ていた。


「仕方ないなぁ。…はい、私の卵焼きあげるよ」


「わーい!ありがとう!お礼に、このツナサンドを一つあげるよ」


「ありがと」


 こうして私たちのお昼休みは、紫音と新たな友人2人を交えて楽しく過ごす事ができた。





 お昼休みが終わると、すごく満たされた顔をした桜井先生が教室に入ってきた。

 お目当ての料理を食堂で食べる事ができ、満足したのだろう。


「皆さん、ゆっくり休めましたか?では、午後は時間割と注意事項の説明、教科書の受け渡しになります。まず、これから時間割が記載されたプリントを配布しますので、そちらを確認してください」


 桜井先生はそう言うと、各列の一番前の人たちにプリントを配布していった。


「時間割については、今手元にあるプリントの通りです。また、授業によっては移動教室などもあると思いますが、そちらは各担当の先生に確認してください。


 次に注意事項についてですが、基本的に入ってはいけない教室などは無いので安心してください。ただ、空き教室などを使用したい場合は事前に担任や職員室にいる先生に許可をもらってから使用してください。

 また、アルバイトなどをしたい場合にも、学校側の許可が必要となりますので、私にご相談ください。


 他に気になる事があれば、私や他の先生に質問するか生徒手帳に記載があるのでそちらで確認をお願いします。では、次は教科書の受け渡しのため移動するので、廊下にお願いします」


 私たちは桜井先生の指示に従い廊下に出て、少し歩くと多目的ホールのような少し広い場所にやってきた。

 その中では机が入り口側に対してコの字型になっており、15人ほどの人たちが椅子に座って待っていた。


「こちらが教科書の受け渡し場所となります。端の方から一人一人並んでもらい、時計回りに教科書を受け取ってください。

 最後に教科書を入れるための袋もお配りしていますので、必要な方はそちらに声をかけてください。

 受け取った方は教室に戻っていただいて大丈夫です。では、まず一列に並んでください」


 周りの人たちが適当に一列に並び始めたので、私たちもそれに倣って列に加わる。

 その後、教科書の受け取りは何事もなく進むが、教科書が思いのほか重かったので入れる袋をもらった後、私たちは教室へと向かった。

 ちなみに、紫音は普通に持っていた。相変わらず凄い。


 教室に戻ってしばらく待つと、他のクラスメイトたちも戻ってきて、最後に桜井先生が戻ってくる。


「以上で、本日の日程は終了となります。明日からは時間割通りの授業が始まりますので、その分の教科書を持ってくるようにお願いします。では、気をつけて帰ってください」


 私は帰りの準備を終えると、紫音と一緒に帰るため、彼女のもとへ向かう。


「紫音、帰ろう」


「そうだね。今日はもうやることもないし帰ろうか」


 私と紫音が帰ろうと思い話をしていたら、一花と雅が私たちに話しかけてきた。


「2人とも帰るの?なら、これからうちたちと親睦会しない?せっかく仲良くなれたんだし、このまま帰るのももったいないよ」


 私が紫音の方を見ると、彼女も頷いてくれたので参加する事にした。


「わかった。参加させてもらうよ」


「よかった。ならこのままどこか遊びにいこう」


 というわけで急遽、私と紫音、一花と雅の4人で遊びに行く事になった。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇

よければ同時連載しているこちらの作品もお願いします。



『人気者の彼女を私に依存させる話』


https://kakuyomu.jp/works/16817330649790698661

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