新たな友達

「白玖乃!いい加減おきて!」


バシッ!


 翌朝、私は紫音に文字通り叩き起こされて目が覚めた。


「…いたい。紫音、なにも頭叩かなくてもいいじゃん」


「何度声かけてもはっぱ起きねぇからでしょ!昨日早く寝たのに何でそんなに起きるの遅いの!」


 それは昨日、貴女とお風呂に入った時の事が頭から離れずなかなか寝れなかったからです。なんて言えるはずもなく、私は叩かれた事でまだ少し痛い頭をさすりながらベットから降りた。


「ほら、早くご飯食べるよ」


「はーい」


 紫音は、私がどんなに遅く起きても先にご飯を食べることなく待っていてくれる。彼女を待たせてしまうことに悪いと感じつつも、必ず一緒に食べてくれる彼女の優しさは心地よくてありがたい。


 朝食を食べた後は食器を洗い、制服に着替えて登校の準備をする。初日は行事説明や学校案内、時間割の通達と注意事項の説明、教科書の受け渡しとHRだけで、だいたい14時くらいに終わるらしい。

 ただ、お昼の時間は超えるため、購買や食堂で買うかお弁当を持っていく必要がある。


「あ、そうだ。……はい、白玖乃。今日のお弁当ね」


「ん、ありがとう」


 私のお昼は、紫音が作ってくれたお弁当なので食べるのが楽しみである。

 準備が終わるころにはアパートを出る時間になっていたので、茜さんに挨拶と鍵を渡すことを済ませ、私たちは学校に向かった。





 自分たちのクラスに着いた私たちは、それぞれの席に向かう。


「それじゃ、またあとでね。白玖乃」


「うん。またあとで」


 私が自分の席に座ってカバン置きしばらくすると、前の席の子が振り向いて話しかけてきた。


「おはよう、急にごめんね」


「おはよ、大丈夫だよ」


「ありがと。うちは染園一花そめぞの いちか、よろしくね」


「私は橘白玖乃、よろしく」


「あはは、知ってるよ。昨日、堂々と遅刻するかも宣言してたから覚えてるよ」


 そう楽しそうに笑う染園さんは、ウェーブがかかった明るい茶色の髪を腰まで伸ばしており、少し垂れ目気味だが人懐っこそうな笑顔で笑いかけてくる。


「でも、今日はちゃんと起きて来られたんだね。やっぱ初日だからかな?」


「ううん。紫音に頭叩いて起こされた」


「紫音?…あぁ、あのとんでもない美少女の子か!そういえばアパートで同室だって言ってたね。しっかりした子が同室でよかったじゃん。私は寮だから、自分で起きないといけないし大変なんだぁ」


「お陰様でとてもいい暮らしができてるよ。寮生活は寮生活で楽しそうだけどね」


 そんなことを話しながら紫音を見てみると、どうやら彼女も席が近い子と話しているようだった。

 染園さんと話し始めてしばらく経った頃、学校のチャイムが鳴り、担任の桜井先生が教室に入ってきた。

 今日の桜井先生は、スーツではなくジャケットにパンツスタイルのラフな格好だった。

 おそらく昨日は入学式だったためスーツを着ていたのだろう。


「皆さん、おはようございます。…初日からの欠席者もいないようで安心しました。では、本日の予定について説明します。まず、この後は学校案内となりますので、説明が終わりましたら移動する準備をお願いします。

 学校案内が終了しましたら、一度休憩を挟んだ後、学校行事などの説明を行います。その後、一度お昼休憩を取っていただき、時間割と注意事項の説明を行った後、教科書の受け渡しを行います。

 以上が終わりましたら帰宅となりますが、ここまででご不明な点はありますか?…無いようなので、学校案内への準備をお願いします」


 桜井先生のその言葉を合図に、みんな貴重品などをカバンから出して持っていく準備を始める。

 私もカバンからスマホや財布などを出して手に待ち、いつでも移動できるよう準備を整える。


 5分ほど経った頃、みんな準備が終わったのを確認した桜井先生は、移動することを告げてきた。

 私も移動するため席を立った時、紫音ともう一人、知らない女の子が近づいて来る。


「白玖乃、一緒に行かない?」


「私はいいけど、そっちの子は大丈夫なの?」


「初めまして。日野雅ひの みやびです。気軽に雅と呼んでください。よろしくお願いします」


「橘白玖乃です。好きに呼んでくれて大丈夫。よろしくね」


 雅は綺麗な長い黒髪に、少し吊り目気味だが清楚なお嬢様といった感じの女の子だった。


「それでなんだけど、私も一緒で大丈夫なの?」


「大丈夫ですよ。私も紫音ちゃん以外の方ともお友達になりたいですし」


「なら、ご一緒させてもらおうかな」


 私が紫音と雅と一緒に学校案内中に行動することを伝えると、横からもう一人、一緒に行くと挙手する者がいた。


「はいはい!うちも一緒に行っていい?うちは染園一花です!紫音さん、雅さんよろしく!」


「鬼灯紫音だよ。よろしくね。私は一緒でも大丈夫だよ!」


「日野雅です。よろしくお願いします。それと、私も問題ありませんよ」


「ありがとう!」


「じゃあ、私たちも行こうか」


 私がそう言うと、他の3人もそれに続いて教室を出て桜井先生や他の生徒のもとへ向かい、学校案内へ向かうのであった。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇

よければ同時連載しているこちらの作品もお願いします。



『人気者の彼女を私に依存させる話』


https://kakuyomu.jp/works/16817330649790698661

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