お風呂

 私たちは学校を出た後、お昼と夕食の材料を買うために、アパートの近くにあるスーパーに来ていた。


「お昼はお弁当でいい?」


「いいよ。今から作るのも面倒でしょ」


「ありがと。なら、あとは晩ご飯に何を作るかだね。白玖乃は何か食べたいのある?」


「んー、ハンバーグかな」


「ハンバーグかぁ…わかった。今日はハンバーグにしようか」


 紫音はいつも私の食べたい物を第一に考えてくれる。

 私が食べたい物が特にない時は、紫音が料理本を見ながら適当に決めて作る。

 そんな適当に決めて作られた料理も美味しいのだから、紫音は料理の天才かもしれない。


 私たちは手を繋ぎながら必要な材料などを見て周り、最後にお昼を買うためお弁当コーナーに来た。


「ねぇ、白玖乃」


「なに?」


「スーパーのお弁当見てると、夜半額になる時、半額弁当を巡ってバトルしたくならない?」


「…ならないね。物騒過ぎて夜に弁当買いに来れなくなる」


「アニメではほぼ毎話戦ってたのになぁ」


「うん。それは二次元だからだよ。リアルでそんなことしたら普通に捕まるから」


「だよねぇ。でも見てみたかったぁ」


 紫音は田舎出身のため、実家にいた時は特にやることがなく、良くアニメや漫画をみて生活していたらしい。そのため、ときどきアニメのネタを交えて話してくる。


「白玖乃は何のお弁当にする?」


「私は無難に唐揚げ弁当かな。紫音は?」


「私は牛タン弁当にする」


「おぉ、美味しそう。でも、牛タンっていったら宮城じゃん?今まで何度も食べてきたんじゃないの?」


「私の実家は田舎すぎて、焼肉店すら近くに無かったから、なかなか食べる機会は無かったよ。でも、たまに食べれる牛タンが美味しかったから好きなんだよね」


 地元民は、地元の名産品や特産品を食べ飽きてるのかと思ったが、どうやらそもそも食べる機会が無かったらしい。

 紫音の実家って、どれだけの田舎なのか気になるが、今は買い物の最中なので、また時間のある時に聞いてみる事にする。


 お互い買う弁当も決めたので、それらをカゴに入れてレジへと向かう。

 レジでお会計を済ませたあとは、紫音がいつも持ち歩いている買い物袋に買った物を入れ、私たちはまた手を繋いでアパートへと帰る。





 その日の夜、ご飯を食べ終わってお風呂に入ろうとした時、紫音が声をかけてくる。


「あ、白玖乃。今日は私も一緒に入っていい?」


「……え?」


 紫音は、たまに一緒に入ってるでしょ?というような軽さで一緒にお風呂に入って良いか尋ねてくる。

 だがしかし、これまで一度も一緒にお風呂になど入った事はない。


(また紫音が急に距離を詰めてきた)


「だめかな?」


「そもそも、なんで一緒に入りたいの?」


「今日は入学式とかで疲れたから、早めに休みたいんだよね。でも、白玖乃を私の後に入らせるのも悪いし、なら一緒に入って二人ですぐ休もうと思ってさ」


「なるほど…」


 どうやら紫音は、私のことも気遣ってくれたらしく、そのための一緒に入ろうというお誘いの様だ。

 別に私も紫音とお風呂に入るのが嫌な訳ではない。ただ、紫音のような美少女と一緒にお風呂に入るというのは、何とも言えない恥ずかしさと緊張を感じる。


「…分かった。いいよ」


「ありがと!白玖乃!すぐに準備してくるね!」


 紫音はそう言うと、下着やタオルを取りに行った。私は先にお風呂場に向かい、服や下着を脱いで浴室に入る。そして、髪を洗おうとシャンプーを手に取った時、紫音が服を脱いで浴室に入ってきた。


「お待たせ、白玖乃」


 紫音の声がしたので後ろを振り向くと、圧倒的な美がそこにいた。新雪のように白い肌、細くしなやかな手足。くびれた腰に服を着ていて分からなかったが大きな胸。すべてがバランスよく整った美少女が私の後ろに立っていた。


「…大丈夫。先に髪を洗うから少し待ってね」


 私は、何故か慌てて視線を前に戻してそう答える。別に同性の裸を見るのが初めてというわけではないのだが、紫音を前にすると、どうしても変に意識してしまう。

 それもこれも、紫音が美少女過ぎるのが良くないのだ。私がそんなことを考えていると、紫音はある提案をしてくる。


「なら、私が白玖乃の体を洗ってあげるよ」


 何がならなのかよく分からないが、紫音が私の体を洗ってくれるらしい。


「少し前を失礼するよ」


 紫音はそういうと、私の後ろから腕を伸ばしてボディーソープを取ろうとする。

 その時、背中に何やら柔らかい物が押しつけられる感触がした。


(これ、紫音の胸では?!え、柔らか過ぎでしょ!私はこれに初日殺されかけたの?!)


 私が内心慌てていると、ボディーソープを取った紫音はゆっくりと体を離していく。

 いや、私が意識し過ぎて、ゆっくりに感じただけかもしれないが。


「それじゃ、洗っていくね!」


 紫音がそう言ったのと同時に、体を洗うボディタオルが背中に当てられる。

 痛過ぎないちょうど良い力加減で、紫音は優しく背中を洗ってくれるが、その上手さを堪能し過ぎて髪を洗う手を止めてしまっていた。


 私は改めて髪を洗っていると、紫音の手が後ろから前に伸びてくる。

 どうやら前側を洗おうとしているようだったので、私は慌ててそれを止める。


「待って紫音!前は自分で洗うから!」


「でも、白玖乃は今髪を洗ってるよね?」


「それは、一度流した後に前を洗おうかと…」


「それ、泡もったいなくない?」


「いや、でも…」


「もったいないよね」


「…はい。お願いします」


 結局、泡がもったいないと押し切られた私は、前側も紫音に洗ってもらう事になった。

 最初にボディタオルで全体的に洗い、改めて手でデリケートな部分を洗われる。

 紫音の細くて綺麗な指や手が、私の胸などを洗っていく。

 紫音の手が触れるたびに、くすぐったさと気持ち良さで変な声が出そうになるが、何とか我慢する。

 数分間、そんなくすぐったさと気持ち良さに耐えていると、紫音の手が止まった。


「終わったよ、白玖乃」


「…あ、わかった」


 私は気のない返事を返し、シャワーを取って髪や体の泡を流すと、浴槽に入りボーッとしていた。

 私が浴槽に入っていると、紫音も髪や体を洗い始め、私はその姿をただただ眺めているだけだった。


 その後の記憶は曖昧だ。気付けば私はお風呂から上がり、紫音と一緒にベットで横になっていた。

 ただ、お風呂でみた紫音の裸と、体を洗ってもらった時の感触が忘れられず眠れないでいる。


 結局、私が眠れたのは、ベットに入ってから数時間後に紫音に抱きしめられ、呼吸がしづらい息苦しさに身を任せるように意識を失う形で眠りについた。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇

よければ同時連載しているこちらの作品もお願いします。



『人気者の彼女を私に依存させる話』


https://kakuyomu.jp/works/16817330649790698661

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