秘密会議
「これより、定例会を始める」
初老の男性が、重々しい雰囲気に包まれた部屋で開始の合図を静かに告げる。
その部屋は、窓が1つもなく扉とその反対側に大きなスクリーンと、ドーナツ型の机と椅子が並んでいるだけの質素な部屋であった。
あまりにも異質で厳重で、まるで戦時中のレジスタンス集団かと錯覚してしまう程には重々しい空気が部屋を支配している。
「くれぐれも幼稚な野望は持ち込まないように。
この会議は、各党隔たりなく、迅速に、有意義なものにしなければいけないのだから」
国の未来を決める国会議事堂の立入禁止の地下にある、限られた議員しか存在を知らない部屋こそが、今こうして国会議員であれば名を知らぬ者はいないであろう官僚や各閣僚達が集まっているこの場所である。
「と言っても、今更何を話せばいい?
そこの馬鹿が、いつまで経っても特例法案を許可しない以上何か話すことなんてないだろ」
「お前は、それしか言えんのか」
「あ?」
最早恒例となった、内務大臣と外務大臣の言い合いから話し合いが始まる。
「海外に目を向けろ。
ついにカナダでも、法改正がされ限定的容認が認められた。
このままでは、また時代に置いていかれるぞ」
バンッと、外務大臣は机を叩く。
内務大臣は、残念そうな顔を崩さず軽く彼をあしらう。
またひとつ世界には、帯雷体を容認する国が誕生した。
「ロイデアひいては帯雷体の容認をするぐらいであれば、まだ大麻を容認する方がマシだろ。
焦って、検証もせず国際基準に合わせることのなんと愚かしいことか」
「なんだと!!」
「君達、落ち着きなさい」
初老の男子が、ヒートアップしかけていた話し合いに対して制止の声を掛け2人の大臣は渋々といった感じで席に戻る。
「
あまりにも、利益より不利益や不安定な要素が大きすぎる。
……もし、それが裏社会の利益になるというのであればまだ大麻を解禁した方が良いだろう」
「そもそも、出現確率が低い欧米とこの国を同様に語るなよ。
時代に置いて行かれるだと?はっ、奴らが愚かな選択を選んだだけだろ」
内務大臣と呼ばれた男性は、イライラした感じで言葉を続けた。
腕を組み、手をトントンしていた周りよりいささか若い男性が口を開ける。
「……まあ、外務大臣殿の気持ちも分からなくないかと。
我々の中で1番外国との接点が多い貴殿にとって、周りの先進国がどのような形であれロイデアとの新しい関係を構築している中で、この国は何も変わらないのを危険視しているのだろう?」
「いかにも。
流石、あの馬鹿と違って話が分かる」
「はっ?やるのかこの売国奴が」
「だが、特例法案の許可は話が違う」
再度ヒートアップしかけていた2人の大臣は、その言葉に両者口を閉じその自分達よりも若い青年を見つめる。
「外務大臣のいうことは理解する、理解できる。
外国の知識無きアホが、この国のことを馬鹿にしていることも私も知っている。
だが、だが容認出来ない。
この国は、常にロイデアが側にいてロイデアと歩んでいかなければいけない。
帯雷体は悪だ。
帯雷体は自然の悪意ではなく、人間の悪意である。
力を持ったと勘違いした人間は、社会に悪影響しか及ばさないのだ」
「
「……そうだな人間は醜い、それは私は痛いほど痛感している。
……中途半端に力を持ってしまった人間程厄介なものは存在しない、か…」
今現在は、ロイデア対策をしている『世界エネルギー対策機関』の日本支部長を30代という若さで任せられている、日本が世界に誇る人材である。
流石の外務大臣も専門家から、直々に断られた為か仕方ないと言った感じで椅子に座り直した。
「ロイデアはその言葉の認識と規模によって、大まかな強さが制定されていると我々は結論を出しています。
認識が確かなもの、規模が大きいもの、片方だけのロイデアも十分強いですが、両方を兼ね揃えたロイデアには及びません。
そして、重要な最後の要素が
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