繰り返しの原因
今日までに雨谷さんとでかけた場所。
1日目は雨谷さんが行きたいといっていた画材店。2日目は喫茶店。3日目は図書館。4日目の昨日は
でも、どこに行っても結論は変わらなかった。
巻き戻しを終わらせるためには闇雲にどこかに出かけるのではなくて、雨谷さんといろいろ話してヒントを探さないといけないかも。きっかけがつかめない。
「ニヤ、今日はどこに行こう」
「どこでも同じではないかね」
そっけない。
「そうかもしれないけど、僕は時間を進めたいんだ」
「お主も想定はついているのだろう? 行くとするならあの屋敷だ」
想定、というか雨谷さんはいつも紅林公園にいる。
原因はあの紅林邸と公園にあるのかもとは思っていた。けれども紅林公園の閉館時間は16時。今日は平日。学校が終わる時間からだと入館時間に間に合わない。
あるいは雨谷さんちでいつリセットされるか朝まで様子を見る。でも初めて会った人を家に入れて夜に泊めたりはしないよ。雨谷さんの認識では僕は今日出会ったばかりの人なんだから。まあ会って5日目でも家に上がるのはどうかと思うけど。
やっぱり情報が少なすぎる。手当り次第に外側から攻めてもあまり意味がなさそうだ。だから今日は雨谷さんに色々話を聞いてみることにしよう。
放課後、僕は紅林公園で雨谷さんと合流してお茶に誘った。
紅林公園と新谷坂駅の間に『ライオ・デルソル』という喫茶店がある。なんで北欧風なのにスペイン語なのかはよくわからないけど、白い壁に青い扉の北欧風の喫茶店で、南向きの敷地はオープンテラスになっていて店の前の遊歩道を眺めることができる。
実は3日前にも来たんだけど雨谷さんが覚えてないならいいだろう。
「わぁ。お洒落な喫茶店だねぇ」
やっぱり雨谷さんは覚えていなかった。
からりと大きな扉を開けて店内に入ると、入り口にデリやケーキの冷蔵のショーケース、その奥にはゆったりとした木の温もりがあふれる机や椅子が並んでいる。とりあえず僕はコーヒーだけ。雨谷さんは3日前と同じおすすめのケーキのセット。
大きな花柄のモザイクが入った陶器のかわいいカップにこぽこぽとコーヒーが注がれて、少しだけ土っぽいふくよかな香りがこぼれ落ちる。雨谷さんの頼んだデザートも砕いたジンジャークッキーとカルダモンを入れて焼き上げられたマフィンにクランベリージャムが乗った素朴なお菓子で、とても美味しそうだった。
「
その笑顔を見ると、3日前より掴みはよさそうだ。
雨谷さんが3日前に注文して喜んでいたから薦めてみただけなんだけど、ちょっと罪悪感がある。どこから話を切り出したものかと考えながら、聞き取りを開始した。
けれどもその結果は芳しくなかった。
それで聞いて忘れ、出会って聞いてまた忘れて出会った7日目。
僕と雨谷さんは5日目から7日目まで、毎日喫茶店に通っていた。
どうせ覚えてないのだろうし、ゆっくり話ができる場所だから。
毎日来るから店員さんとは仲良くなれた気がするけど、ちょっとお高めのお店なので懐には厳しい。
毎回最初から話を始めないといけないから時間はかかったけれど僕が3日間でわかった中で何か関係がありそうなのはこの3つ。
1つめ。紅林公園は雨谷さんのお父さんとの思い出の場所で、小さいときからお父さんと公園でよく遊んでいた。
2つめ。お父さんはもう亡くなっていて、雨谷さんはお父さんとの思い出の紅林邸を描いている。
3つめ。体があまり丈夫じゃないから日中は家にいる。
雨谷さんの思い出は、紅林公園とお父さんを強く結びつけていた。
3つめはつまり、昔から雨谷さんの行動範囲は自宅と紅林公園だけってこと。他の場所はチェックポイントじゃない可能性は高いのかも。
そうすると、やっぱり巻き戻しが発生する現場は紅林公園で、亡くなったお父さんが関係しているんじゃないかな。お父さんは既に亡くなっている。そこに僕が封印から解放した怪異が関係している、そんな予感。
この時、僕はこう思ってた。
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