第2話 暗闇

仕事を辞めてから、ずっと暗闇に彷徨ったまま。


仕事を辞めることで、明るくて新しい人生が始めると思い込んでいた。


就職先にあてはない。ただ、この状況から脱出したかっただけ。


そんな思いで勢いよく仕事を辞めたが、ずっと暗闇の中を彷徨う状態になってしまった。


苦しい。呼吸が容易にできず、喉元が詰まっている。


どこに踏み出しても暗闇。もう、この場に立ち止まるしかなかった。


同級生達は、苦労がありながらも働いている。


お金をもらい、新たな生活をスタートさせる人もいた。


一方、私はなにもしてないフリーター。


もう一度社会に飛び出す勇気が湧かず、自分自身に対して嫌気がさしていた。


もう終わりだ。そう感じざるを得なかった。


社会に飛び出す勇気もなければお金もない。


自室の窓から外の景色を覗くと、今日も工場が元気よく稼働している。


自宅の前の道には、小学生が集団で歩いている。その姿を見ると、胸がキューッと苦しくなった。


もう、ダメだ。人生に絶望し、生きがいが見つけられない。


気持ちはどんどん暗くなり、いつしか下を向いて歩く日々が続いた。


買い物も行く気力がなくなってきた。近所の人に会いたくない。知り合いに会いたくない。


稼いでないから、お金を使うこともはばかられる。


なにもやる気が起きず、さらに深い暗闇へと入り込んでいく。


底は見えない。気持ちが沈むたび、ズンズン沈んでいく。


光が見えるところに這い上がる気力も体力もない。


イライラして、思わず髪の毛をかきむしる。爪を立て、頭皮を傷つける。


そこに自制心はない。ひたすらイライラが収まるまで頭をかきむしる。


手のひらを見ると、数本髪の毛が右手に絡みついていた。


チク。チク。頭皮が傷んだ感覚が止まらない。


はぁ。また自分を傷つけてしまった。冷静になれば良いのだが、もはや冷静な判断すらできそうになかった。


暗闇からさらに奥深くの暗闇に到達した私には、絶望の文字しか見えない。


社会に戻ることはできない。どす黒い雲が心を覆う。


明るい気持ちは全て消え去り、マイナスな感情だけがマグマのようにフツフツと湧いている。


気づけば、目に涙が溜まっていた。こんなはずじゃなかったのに。こんな人生を送るはずじゃ。


誰か助けて。今にも消えそうな声で助けを求めた。


今の私にだせる声の限界。


誰もいない暗闇の世界で、私は孤独と友達になった。







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