幻想

氣嶌竜

第1話 誤算

環境を変えれば。この場所から逃げることができれば。


きっとなにかが変わるはずで、人生が好転するはずだった。


でも、好転するどころか新たな不安要素が増えていく。この先、どうやって生きていけば良いのだろう。


正解は見えず、ただただ道なき道を歩いて行くしかない。


絶望だ。この状況を変えてくれる秘策はないのか。


私は大学を卒業し、新卒でとある会社に入社した。


でも、環境が合わず、わずか2ヶ月で退職。


就職していた際は会社から逃げ出したい一心だった。


この場所から逃げ出すことができれば、きっと人生が好転するはず。そう思っていた。


けど、社会は厳しかった。第二新卒として応募しても、ほとんど書類選考で落とされる。


奇跡的に面接へ進んだとしても、そこはブラック企業。がむしゃらに応募していたら、評価の低すぎる会社へ応募していた。


もう、私は人生終了なのか。学生時代、明るくて楽しい人生を思い描いていたが、180度違う人生。


暗く、前向きになれない。やりたい仕事はないけど、お金は欲しい。


夢はあるけどお金がなければ達成できない。


社会を舐めていたわけではないが、ここまで厳しいとは思っていなかった。


23歳にして人生の正念場。無職の実家暮らし。幸い、すぐにお金に困ることはないが、いずれ働かなければいけない。


誤算続き。今の私にぴったりの言葉である。


私は社会不適合者なのか。社会人としてのレールから外れ、暇になったがお先は真っ暗。


目の前に道はなく、暗すぎて2メートル先も見えない。


一歩踏み出す勇気があれば良かったが、全く勇気が湧いてこない。


一歩踏み出した途端、新たな地獄の始まりかもしれない。そう考えるだけで、足がすくむ。


人生の寄り道と捉えられれば良いのだが、そんな余裕すらない。


誤算だ。会社を辞め、全てが好転すると勘違いしていた。


ただ、元の会社で働き続けていたとしても地獄。


もう、どうしようもなかった。右を向いても左を向いても真っ暗。どこにも光がない。


思い描いた人生とは程遠く、マイナスな感情だけが肥大して心に覆い被さる。


なにか特技があるわけでもない。他人に勝る能力は1つもない。


もう、明るい未来は待っていないのか。誤算続きの社会人デビューに、生きていく意味を探すしかなかった。






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