第2話 応じてないな (改訂)
「よう、転校生。能力どうだったよ?」
そんな気軽に声を掛けているのは、クラスメイトの
「転校生じゃないっての~。まあ、これってどうなんだ・・・って感じかな~」
彼に振り返り返事をするのは、家庭の事情により5月から登校してきた
その語尾に特徴があるしゃべり方は、癖なのか気に入っているのかは判らない。
「そんな自慢気な顔してるからには~、かなり良かったのかね~?」
「まあな!適正が聖騎士で能力は13だ!!」
「うへ~すごすぎてなんもいえませんわ~」
この会話で出た適正および能力とは、適正がいわゆる職業と呼ばれるものである。
先ほどまで受けていた講習が終わり、移動中であるが、得た知識と照らし合わせるのが楽しいようだ。内容の復習も兼ねて話込んでいる。
適正には日本のゲームでよく聞くジョブ、勇者や賢者、聖女、戦士などなどいろいろな職業が存在していた。
だが、この世界では適性が重要になってくるものではなかった。勇者というだけですごい、と感じていた生徒達はその説明を聞き少し驚いていた。が、納得も出来る説明でもあった。
重要になってくるのは適正のみではない。
”適正プラス能力の数”である。
能力確認後、宰相の使いに案内され通された部屋。その場にはこの国の騎士団長が待っていた。
騎士団長の説明によれば、適正=すごい、ではなく。適正+能力がいっぱい=すごい、になるらしい。
聖女適正を例えに答えてくれた内容だが、聖女という存在は確かに貴重であるが、聖女適正が出ても回復と結界しか使えない聖女もいれば、回復・結界・毒回復・麻痺回復・身体強化付与など複数能力を有す者が優遇される。との話だった。
「能力が多くて使いこなせないのでは?」と聞いてみれば、能力恩恵で体の基礎能力値が変わってくるという。
使うことで成長する能力。熟練度ともいうべきなのか、使わなければ効果は薄い。使用し慣れる事でその効果や範囲が上がっていくだ。
つまり能力が多く習熟することで、体力・筋力・魔力などその能力に必要な項目の上限が一緒に上がるのだ。
自身が腕立てや腹筋、素振りなどをして鍛える事で筋力があがる。魔法なら使用することで魔力などが上がる。それがステータスアップであった。
上限100の力を上限120にするだけ、そこに至るまでは鍛えるしか無いと言う。甘い話は何処にもなかった。
騎士団長に「レベルを上げればいいのでは?」と聞いてみれば「レベルとはなんのことです?」などと返事がきた。どうやらこの世界にレベルという概念はないらしい。
もっとも、敵を倒すだけでレベルが上がり、ステータスも上がるのはゲームだけである。そんな表現を物語使われるのは分かり易い表現だからでもある。
実際、戦った事の無い人より、本気で人を殴ったり戦った事がある人の方が強い。戦闘に慣れるためだ。繰り返すことで技術が育つ。本来のレベルアップとはそういう物である。
ゲームに感化され、物語を鵜呑みにした生徒達は、簡単に上がるモノだと思っていたのだ。
そして鍵となる能力の数だが、この世界の住人だとその能力の平均が3、倍の6も能力があれば英雄であった。
では召喚勇者たちはどうなのか?
結果、平均10、最大が15という結果。
うん、勇者召喚しますね、これは(笑)とは生徒達の声である。
では生徒達の中で最高レアリティだったのはどのような存在なのか?
結果は、あれだけ活躍していた衛君
ではなく、
衛と目線で会話していた女生徒である。適正が勇者、能力が15と召喚者たちのなかで最も優秀な存在である。
え!?衛がどうなったか知りたい?
衛君その名の通り、適正
「今日の講習はここまでとする。用意した部屋には、こちらのメイド達が案内する」
しばしの講習会の後、騎士団長がそう言っていた。皆の目線は騎士団長の横に並ぶ、入室してきた5人のメイドに釘づけだ。
メイドの登場で男子生徒は大はしゃぎ。派手なおっさんや無骨な騎士から、見目麗しいメイドに変われば思春期男子として当然の反応である。
が、ここまで対応してくれた宰相に男子全員謝ったほうがいい。と女子の視線が冷ややかに語っていた。
そして現在、最初の二人の会話に戻る。生徒たちは部屋を移動する。一度宿泊場所を確認したが、食事の用意があるとのこと。
再び全員での移動なった。そんな中、それぞれ知り合いと適性や能力を確認しながら案内のメイドの後ろを歩く。
宰相は勇者15(今後の適正と能力の表現)の存在を確認したとたん、「国王に報告せねば!」と言葉を発するが、逸る気持ちをおさえ、全員の適正と能力が確認できるまで、石板の部屋にいてくれた。
そんな宰相は、すでに護衛騎士を伴なって何処かへと移動している。
生徒たちが案内され、辿り着いた場所は大きな広間。
中央奥に大きな横長テーブル、後は丸テーブルがいくつも見られる。それぞれのテーブルにはすでに食事が用意されていることから、立食パーティの雰囲気だ。
イメージとしては、椅子のない結婚式会場を思い浮かべると分かり易い。
奥の横長テーブルに、ひな壇の上にはおそらく王族が来るのだろうと予測し、生徒達はそれぞれ思い思いのテーブルへと向かう。
「おなかすいた、早く食べたい」
「何か始まるみたいだから、もう少し我慢しなさいよ」
と、お腹を擦りながら食事を見つめる、黒髪ショートボブの少女、
すると中央に初見の騎士が現れ、声を上げ今後の説明が入る。
「まもなく国王陛下いらっしゃる。皆さまに至っては、異世界より来ていただいた初日故、こちらの世界の礼儀は知らぬであろう。と、陛下は今回の立食会でのマナーについては不問とするとの事。が、なるべく不誠実な態度は控えてほしい。陛下は挨拶後退室、その後食事となるが王子殿下ならびに王女殿下はみなさまと食事をなされる。なにか質問はございますかな?」
騎士の問いに、衛が答える。
「この立食会はどれぐらいの時間を予定しておりますか?」
「時間?とは刻のことよいのか?一刻を予定している」
「(表現が古いのか?一刻は2時間だったっけ?まあ、言葉が通じるだけで不思議現象だからなぁ)…わかりました」
「他には?」
「立食後はどのようになるのでしょう?」
「それぞれ用意された部屋にもどり休まれてはいかがだろうか、すでに一度案内はしたが、初日故まだ城内にも慣れぬであろう。もう一度メイド達が案内する手はずになっている」
「…食後にみんなで少し話をしたいのですが、どこか集まってもいい場所はありませんか?できれば我々だけでこの状況について話し合いたいのですが」
「私の一存では返答しかねるな・・・宰相閣下に確認後返答でよろしいか?」
「はい、よろしくお願いします」
衛と騎士とのやり取りをみな黙って見つめていた
「では、今しばらく待たれよ」
騎士はそう声を掛け退出していく。生徒達は互いにどうしたものかと考えてはいても、どう声を掛けるべきか迷っていた。この世界でどう行動すべきか判断がつかないのは当然の事、食事に目をやりながらも悩んでいる。
「おいしそう、この料理は異世界から来た私たちでも食べられそう」
先ほどからおなかすいたアピールの八重が何気なく言葉にする。
「うん、問題なく食べられそうだね」
と、沙織が答えた。そんな遣り取りを聞いていた生徒達、食べられるのなら早く食べたいとざわめきだす。
すると後方の扉から、数人と貴族たちが現れ、各々テーブルの傍を陣取り始める。その中には先ほどの宰相もいた。
皆が沈黙したタイミング。国王陛下と王妃、王子2人、王女3人が騎士の前向上の後現れた。
ひな壇んに一列に並ぶ王族たち。その左右には護衛騎士が控えている。
「我が、このリンデングル国の国王、マディス・フォン・リンデングルである。我々の召喚に応じてくれた勇者諸君を歓迎する」
「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉおお、リンデングルに栄光あれ!!」」」」」」
国王の声に、貴族と騎士たちが歓声を声を上げる。そんな貴族と騎士達に、軽く手を挙げ答える国王。
そんな中、生徒たちの想いは一つだった
((((((応じた覚えはねぇーよ!!!))))))
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