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「アース、一か月後はお前の七歳の誕生日だな。そこで、我が屋敷でアースの誕生会を開催するぞ!」



と、ある日、朝食を食べている途中に突然言われた。


父上に詳しく話を聞いてみると、この誕生会の目的は俺の誕生日を祝うことはもちろんだが、多くの同年代の貴族のご子息、ご息女を招待し、俺のお友達候補及び側近候補を見つけることも目的の一つであるらしい。






遂に友達ができるチャンス到来か! 今までは、家庭教師の先生や兄上たちと魔法や剣術の訓練ばかりしていたからな。十歳から通う学園で、ボッチになるのは嫌だからな。普通に家族や先生以外の人とも、遊びたいしな……。






友達候補は見つけられるとしても、側近候補はどうやって見つけるんだろう。戦闘が強いとか、事務処理能力が高いとかかな……。


だが、そういう能力は誕生会の様子だけでは判断できないと思うけどな……。父上に、紹介してもらうほうがいいのかな。





よし、まずは側近よりも友達になってくれる人を見つけよう!
















ーー
















 


今日は遂に俺の誕生会当日だ。


当日は、家族全員が祝ってくれた。

ありがとうございます、父上、母上、マクウェル兄上、ケルサス兄上。




「アースももう七歳なのね、マクウェルも今年の十月から学園に通いますね。子供の成長というものは、本当に早いですわ。」



「うむ、そうだな。マクウェル、入学選抜試験の準備は順調か?」



父上に問いに対して、マクウェル兄上は力強くうなずいた。



なるほど。どうやら、学園に入るに当たって試験があるようだな。ここら辺も後で確認しておこう。それに、どうやらマクウェル兄上は自信がるようだな。





「誕生会は昼から開催される。しっかりと準備をするように、アース。」





俺は父上の言葉を受けて、誕生日パーティーの準備に取り掛かった。

















ーー


















この衣装いくらするんだろう。俺は真新しい衣装に身を包んで、会場入りを控室で待っていた。窓から見えた感じ、招待客はかなりの数がいるようだ。空間属性持ちの俺とのコネクション狙い客も、いるのかな? 




しかし、公爵の子息の誕生会にゴリ押しで参加することは、まず難しいだろうから、両親が招待客しかいないであろう。










コンコン








部屋に入ってきたのはマクウェル兄上とケルサス兄上だった。



「アース、時間だよ。会場へいこう。」

「大丈夫か、アース? 緊張してないか?」




「はい、わかりました。少し緊張していますが、頑張ります!」




俺がそういうと、兄上たちは頭をなでてくれた。


さて、いよいよ会場に向かう時だ。












ーー













「今日の主役、我が息子アースの入場である。」



父上の掛け声を皮切りに、大きな拍手で包まれる会場の中へと、俺は入場した。




「ではアース、挨拶を。」


俺は父上からの言葉を受けて、考えていた挨拶の言葉を口にした。





『本日は私の誕生会にお越しいただきまして誠にありがとうございます。本日の誕生会には多くの方にお越しいただけるということで、立食形式をとらせていただきました。どの料理も我が家の料理人が腕によりをかけて作らせていただきました。皆さん、今日はどうぞごゆっくりとお過ごしください。』




よし、噛まずに言えたぞ。お客さんの反応も上々のようだ。また今回は、俺が改良した料理をふんだんに用意している。







異世界転生と言えば、料理の改良はつきものだからな。俺は独身生活が長かったおかげで、それなりに料理はしてきた。だが、男の一人暮らしレベルであることは、この際置いておこう。






 例えば、硬く、スープに浸さなければならなければならないパンは、りんごを用いて酵母をつくり、ふわふわなパンへと改良した。あとは、味の薄いスープの改良を行った。鶏ガラや、野菜スープを使ってコンソメスープをつくったのだ。初めは、本来捨てる部分である鶏ガラを煮込みだした俺を、訝しんでいた料理人たちも、コンソメの味には納得したようだ。







そして、俺は結構な甘党であるが、この世界の砂糖でがちがちに固めた、見栄えだけを意識したスイーツにも辟易していた。そこで、パンケーキやクッキーなど比較的つくりやすいものをつくり、後は料理人に任せた。これからのおやつの時間が楽しみだ。





食は生活の基本だ。これからも気になる料理があったら、改良、開発していきたい。むしろ食材をつくることもやってみるか、家庭菜園とかな。








「まぁ、サンドール公爵家の料理は本当においしいですわ。」

「えぇ、本当に。料理人の質がまるで違いますわ。」

「公爵、ぜひレシピを売っていただきたい!」







よしよし。客の反応も上々のようだな。俺はこれ以上目立たないように、少し改良した後は、料理人に投げている。料理でも目立ったら、面倒ごとが増えるからな。






すると、俺の思惑は一瞬にして打ち砕かれた。



「この料理は、今日の主役であるアースが作り出したものである。」




ち、父上ーー! しまった、親ばかの口止めを忘れていた。得意げな顔で俺の方をチラチラ見てくるのやめろ!



はぁー、あんた、普段はとてもいい父親なのに、時々本当に残念だよな。明日は久しぶりに、硬いパンを用意しておくからな。歯に気をつけろ。


 

しかし、この場では紹介してくれたことに対してしっかりお礼を言わなければな。必殺の貴族スマイルで、



「ご紹介ありがとうございます、父上。」



と、お礼を述べた。






俺の反応に対して、父上は、心底満足そうである。






「まぁ、この料理をアース様が!」

「空間属性だけではなく、料理の才能もあったとは!」







周りからの高評価が痛いな。何とかして逃げ出したいが、今日は友達づくりが目標であるから、我慢しなければ。





すると、父絵がある提案をしてくれた。



「アース、庭にも料理を用意してある。ご子息、ご息女を庭へと案内して差し上げなさい。」




お、これはナイス!父上! これで子供同士の会話ができるな。明日の固いパンによる報復は免除して差し上げよう。


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