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いよいよ今日は、剣術訓練の日だな。先生役は、父上の友人であり、兄上たちにも剣術指導をしている、グートン・ツーベルク先生である。なんと、護衛騎士団団長らしい。




「おう、お前がフーラルの三男坊か。よろしくな。」


「はい、これからよろしくお願いいたします。」




いかにも体育教師って感じの先生だな。




「今日から一緒に訓練ができるね、アース。」

「張り切って、ケガするんじゃねーぞ!」


と、兄上たちが声をかけてくれた。




「今日からよろしくお願いします、マクウェル兄上、サーカス兄上。」





ーー





挨拶が終わると早速、訓練が行われるようだ。


「まずは、この木剣を持ってみろ。そして、とりあえず仕掛けてこい!」




おー、まじか。この人のスタイルは、実戦派なのかな?












ーー














「悪くはねーが、イマイチだな。なんかこーう、気持ちが乗ってないというか、センスがないのか?」



おい、おっさん。今の言葉はグサッと来たぞ。





「動きが硬いのかな?」

「なんというか。ぎこちないよな?」



と、兄上たちも首をかしげた。






違うんです、皆さん。確かに気持ちが乗ってないかもしれません。だって、俺は日本人ですから、剣じゃなくて、刀で戦いたいんです! 


といっても、刀なんてこの世界にないだろうし、どうするかな……。









ーー









形態変化か! ないなら、魔力で作ってみるか!




「すみません、少し休憩をお願いします。」


「おう、わかった。」





俺は早速人目の付かない場所へと、移動した。



まずは、イメージだな。刀の形、そして、金属にも負けない切れ味と、硬さをイメージして、刀の核を俺の魔力で作っていく……。そして、氷の属性を付与。よし、いいぞ!













……できたぞ! イメージ通りの刀だ! あとは耐久力と切れ味の確認をと……あの木を切ってみようか。










 ーー スパッ!!








わーお、これはすごい。魔力も上乗せされているからな。下手したら、普通の剣より威力があるな。魔力で作った刀だから、魔刀だな。










体感全魔力の九割くらい使ったな。まぁ、この威力だと納得だな。その内訳は、八割が刀の核で、残り一割が氷属性の付与か。魔刀の核の部分は帯剣して、戦闘時に属性付与すればいいか。





属性付与に結構時間がかかったからな。実践では、何があるかわからない。時間短縮が必要だな。時間短縮には、詠唱とイメージ力が必要だな……。こういう時には、刀に名前を付けてイメージ力を高めよう。








氷の魔刀の名前は…… 『白薔薇姫』にしよう。あとは、刀に属性付与をするときの呪文か、短い方が良いよな……。薔薇だから、『咲け』がいいかな。この呪文を、「呼音」と呼ぶことにして、呼音を詠唱、その後魔刀の名を呼ぶようにしよう。じゃあ、一回やってみるか。







『咲け 白薔薇姫』






よし、成功だ。あとは火魔法の対策として、水の魔刀も必要だな。名前を『泡沫』、呼音を『凪げ』にしよう。







『凪げ 泡沫』




よし、成功だ。






魔力の込め具合で、魔刀の威力が変わるから、魔刀主体で戦う騎士モードと、魔法主体で戦う魔導士モード、そして、どちらもまんべんなく使うバランスモードを、相手によって使い分けるようにしないとな。


 





とりあえず、実戦だ。




















ーー
























俺は早速実戦経験を積むために、先生の元へと向かった。


「おう、お帰り。続きをやるか?」


「はい、お願いします!」












俺は、先ほど作った魔刀を取り出した。


『咲け 白薔薇姫』




すると、グートン先生が慌てた様子で、俺の方に駆け寄ってきた。







「お、おい!なんだ、その剣は! 魔力を感じるな……。まさか、魔法剣か? いや、魔法剣かなり高価なはずだ……。」





魔法剣? 知らない単語が出てきたぞ……。





「あの、魔法剣って何ですか?」





すると、先生は腕を組みながら答えてくれた。



「あ、あぁ。魔法剣ってのは、魔力の性質を付与できる特殊な金属、通称ルーン石と呼ばれる金属を使って作った剣のことだ。魔力が上乗せされるから、通常の武器よりも威力が高く、属性攻撃ができるのが特徴だ。しかし、貴重なルーン石のみで剣をつくるのは産出量に問題があり、またその技術は失われてしまった……。 それで、アース。その剣は何だ?」




ここは素直に答えようか。なぜならいい理由が思い浮かばないからだ。そこら辺に落ちていました、などは論外である。



「これは、俺の魔力で偶然できた魔刀です。」




俺がそういうと、先生の表情が抜け落ちた。




「は? お前の魔力で作った? そんなの聞いたことがないぞ!」



魔力を実体化するって、そんなに難しいことなのか? 俺は先生に、自分が行ったことを交えて、聞いてみた。






「難しいかの前に、魔力がバカほど必要だ。それに魔力を凝縮して、剣をつくり、さらに属性付与まで行うのは無理だ。身体強化などが得意な者は、属性付与を部分的には行うことが、人によっては可能かもしれないが……。剣を作り上げるのは、まず無理だろう。」





そうか。俺には魔力が膨大にあり、刀ができる工程などを前世の知識で知っていたから、明確なイメージができたわけだ。


以前、ヘンゲーナ先生が魔法にはイメージ力が必要とおっしゃっていたからな。


 




なるほど、これも広まれば面倒ごとになりそうだ。魔刀の核をつくってしまえば、後は使用者が属性付与を行うことで、使えることができる。俺自体の魔力は休めば回復するから、量産ができそうだが……。


この高威力の武器を安易に広めるのは愚策だな。


 

もしばれた場合は、製作工程を明かさず、数にも限りがあることにしよう。とりあえず、急場のしのぎとして、空間属性で偶然できたことにして、どうやってできたのかはわからないことにしておこう。





あと先生、剣じゃなくて刀なんですけど……。今は面倒くさいからいいか。








すると、兄上たちが休憩から帰ってきた。



「お前ら、アースの剣を見てみろ!」



先生からの指示で、兄上たちが俺の魔刀を見分し始めた。




「な、なんだこれ! アースが作ったのか?」



ケルサス兄上は騒ぎ出し、マクウェル兄上は茫然と魔刀を見ている。


俺は、先程考えた言い訳を披露した。すると、「あぁ、空間属性とお前の膨大な魔力のことは聞いている」と、ヘンゲーネ先生からも聞いていたようで納得してくれたようだ。







とりあえず、実戦練習を積みたいな。





「では、訓練をよろしくお願いします。」

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