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「うーん、どうしようかしらね。アース君、光属性の魔法が使えないわね。」
はぁー。また、面倒ごとが増えたようだ。
俺は、次に氷魔法の訓練を始めた。これには、同じ属性の父上も、張り切って先生役として参加してきた。水魔法の派生なだけあって、難なく扱うことができた。
しかし、光属性の訓練を始めると問題が起こった。呪文を詠唱しても、魔法が発動しないのだ。
「攻撃魔法がだめなら、光属性の回復魔法を試してみようかしらね。じゃあ、アース君。回復と唱えてみて。」
俺は一縷の望みをかけて、集中した。
『回復』
……。
『回復!』
『回復!!』
『回復!!!』
『回復!!!!』
「……。ダメね。」
「……。ダメですね。」
うーん、なぜだー!!!
「これは、どういうことなんですか?」と、俺は魔法のエキスパートに説明を求めた。
「うーん、そうね……。おさらいだけど、魔法には、攻撃魔法、防御魔法、補助魔法の三タイプがあることは教えてわよね?」
俺でいうと、水弾が攻撃魔法、水壁が防御魔法、雨を降らせる恣意雨が補助魔法に当たる。
「人によっては、防御魔法だけ、攻撃魔法だけ、補助魔法だけが使えないという人は確かにいるわ。ただ、光属性は攻撃魔法と、補助魔法の二つしかない。光で防御するということが、想像できないものね」と、先生は笑った。
確かに、光りで防御というのは想像しづらいな……。
ということは、俺は、光属性を持ちながら、攻撃魔法と補助魔法が使えず、そして不運なことに光属性には防御魔法がないということか?
俺は先生にそう伝えてみた。
すると、
「そうなるわね……」と、先生は頭を抱えた。
……。
なんだよー! それ!
光魔法を使えないのは不運だ。しかし、空間属性のことを考えるとプラスマイナス、プラスだと思う。
だったら、最初から光属性なんかもたせるなよな! 光属性はあるけど、光魔法を使えないって、ただのかわいそうな人じゃないか!
「これは、不運としか言えないわ。だけど、あなたにはまだ三属性残っているわ。この三属性で、戦い方を考えましょう。」
泣きたい気持ちではあるが、くよくよしてはいられない。光属性を賜ったことは、黒歴史ではあるが、切り替えなければ。
「最初に属性の相性について確認しましょう」と、先生が俺の進むべき道筋について考えてくれた。
属性の相性関係は以下の通りである。
火は風に強く、風は土に強い、土は雷に強く、雷は水に強い、そして、水は火に強い。光と闇は互いに、弱点を突き合う関係である。
「アース君が持つ属性は、水と氷属性。氷魔法は火魔法に弱いけど、水魔法でカバーできるわ。そして水魔法が弱い雷魔法には氷魔法で攻防を行いましょう。これで、極端に不利な敵は、いなくなるわ。」
「こうしてみると、残った属性が水と氷属性で本当に幸いでした。」
「ええ、そうね。あとは、実戦形式の訓練を積んでいきましょう。」
ーー
それから、先生の指導で残った属性での戦い方を研究した。
先生のおかげで、俺は何とか自分の戦い方がわかってきた。
「形になってきたわね。そこら辺の相手なら負けないでしょう。将来的には、私を超す魔導士になるでしょうね。」
「先生のご指導のたまものですよ。ありがとうございました。」
「明日からは、剣術の訓練も始めるのでしょ? 魔法と剣術どちらも習う人なんてそういないわよ。魔法の訓練も続けるのでしょ?」
近接の騎士と、遠距離の魔導士この二つを習得することは難しい。一般的に、魔力が高い者は魔導士に、魔力が乏しい者、または身体強化系の魔法が得意な者、後は単純に剣の才能がある者が騎士の道へと進む。
十歳から通う学園にも、この二つのコースが用意されている。
「はい、もちろん続けます。まだまだ未熟者ですからね。これからもご指導よろしくお願いします。」
俺がそういうと、先生はふと笑った。
「未熟者って、国の魔導士団の中でも上位に入る実力だと思うわよ?」
「いえいえ。そんなことはないですよ。」
「アース君って、本当に謙虚よね。」
俺は決して、謙虚なんかではないんだ。
俺は強くなる必要がある。空間属性の所持者ということで、多方面から狙われる可能性があるからだ。例えば、教会とかな。そして、仮に王族の側近となる場合にも、戦闘は避けられないであろう。
空間属性がチートなだけであって、俺自身はまだチートの域には達していないと思う。だからこそ、訓練を続けていく必要がある。
魔法の訓練のほかに剣術の訓練も行う理由は、側近たる者、近距離戦闘ができなくてどうするのか、と思ったからである。魔法を遠距離からうっているだけでは務まらないと考えた。
それにやっぱり、剣で戦うなんて、男子の憧れだよな? 厨二病を患っていたころ、洗濯棒を振り回し、母ちゃんに怒られていたときの苦労が報われるな。家族のみんな、元気かな……。
明日からの剣術訓練頑張ろう。
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