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なにーー! 空間属性だと!!
これは、うれしすぎるな! チートあるあるだな。空間転移とか、できるのだろうか。
俺が必死に妄想をしていると、周りが賑やかなことに気づいた。
……教会関係者が狂喜乱舞している。司教に至っては、ヅラをまるでチアリーダーかのように振り回している。
そして、父上は、唖然として美形が崩れている。
「なんと! 空間属性に加えて、水と氷、そして光属性も持っておられます!」
「四属性……」と、父上はつぶやくと、父上は俺に駆け寄り、そして俺を持ち上げた。
「素晴らしいぞ! アース! 伝説の空間属性に加えて光属性、そして私と同じ水と氷属性持ちとは!」
ああー、遂に俺の時代が来たか!! いや待て、確かにこの能力はうれしい、うれしいが……。
俺は、数々の異世界転生小説を読み漁った。その経験からすると、これは完全にフラグだ。空間属性なんて、厄介ごとに巻き込まれる気かしない。
俺は、よくあるすっとぼけ、おとぼけな主人公を演じるつもりはない。これからのことをよく考えなければいけない。
まず、かなり注目を集めるだろう。そして、狙われるな。特に、この教会関係者。空間と時の女神を信仰しているから、「是非とも一緒に神へ祈りを捧げましょう!」、などととのたまい、酷ければ狂信者どもに監禁されるかもしれないな。さて、今後どうするか。
「父上、落ち着てください! 少し(二重の意味で)痛いです。」
正直中年のおっさんのドアップはキツイ。しかも、子の父親は優しそうだし、親バカな気がする。俺は、精神年齢は29歳だ。この年で、高い高いはやめてほしい。
「ああ。すまなかった。だが、これはめでたいことだぞ! 家族も喜ぶことだろう。」
「あの、父上。あまり、大事にしたくないので……」と、俺が父上を止めていると、教会関係者が駆け寄ってきた。
「神のお導きでございます! 是非とも我々と一緒に、神へ祈りを捧げましょう!」
はぁー、やっぱり来たか。俺の話を遮り、司教が迫ってきた。だから、中年のおっさんのドアップやめろ。
「申し訳ございません。私は他にやりたいことがありますし、何よりも家族と離れたくはありません。」
「そうだな。アースは私の子供だ。アースが嫌だというなら、その意思を尊重したい。」
ナイス、父上やはり優しいな。いわゆる親ガチャとやらには成功したようだ。
「ですが、空間時の女神の使途である可能性が高いですので……。」
まだ食い下がるか、さてどうしたものか……。
すると、
「ダメだと言ったのが聞こえなかったか?」
と、父上が、かなり低い声で言った。
「は、はい……。申し訳ございません。」
俺に対して甘々な父上も、公爵だ。公爵の意見に逆らえる人間は、そういない。
「ありがとうございます、父上。」
「うむ。当然のことをしたまでだ。司教、このことは私からしっかりと報告しておくうえ、余計なことはしないように。」
「か、かしこまりました……」と言いながら、司教は下がった。
司教、不満が顔に出ているぞ。首ちょんぱされたいのか?
そして父上と俺は、この後、記念パーティーの準備があると伝え、謝礼を渡して、退室した。
お、あれがこの世界の通貨か。おそらく、金貨だな。どこの世界も、金には価値があるな。
不満顔の司教に見送られながら、俺たちは馬車へと戻る。うん? あれは、ドンターラ公爵家の双子かな。次に属性判定を受けるのか。この国には、サンドール公爵家とドンターラ公爵家の二大公爵家がある。
というか、さっき睨まれたかな? 今はまぁ、いいか。
「では、アース。一度屋敷に帰って、パーティーの準備…… そして、家族に報告しよう!」
父よ、うれしそうだな。俺は色々と憂鬱な気分だぞ。でも、ここはしっかりと貴族スマイルを浮かべておこうか。
ーー
屋敷に着くと、家族と使用人たちが総出で出迎えてくれた。
「おかえりなさい。フーラル様。そして、アース。」
ほー、この美人が俺の母上か。緑色の瞳は、やはり母譲りのものだったようだ。桜色の髪もよく似合っている。
「おかえり、アース。緊張したか?」
「ただいま戻りました。マクウェル兄上。父上が一緒にいてくださったので、落ち着いて判定を受けることができました。」
そして、このイケメンが一番上の兄のマクウェル兄上(九歳)だな。髪色や瞳の色が俺とほぼ一緒だな。しっかり、後を継いでほしいが、アースの記憶によるとかなり優秀のようだ。これで家督も、安心だ。
「よく戻ったな! アース! お前はぼんやりしているからな、どうやらしっかりと属性判定を受けられたようだな!」
この、つんつんとした態度の美少年が二番目の兄のケルサス兄上(七歳)だな。これは、いわゆるツンデレというやつか。それとも、反抗期か? まぁ、どちらにしても、兄からのデレはいらないな。
「それで、アースの属性判定の結果はどうだったのかしら。」
「ああ。その件については、中に入ってから話す。」
まぁ。外で話すことではないよな……。はぁ、どうなるのかな。
ーー
父上が人払いを命じると、使用人たちが素早く部屋を出ていく。
「まず結果からいうと、アースは四属性を授かった。」
「四属性ですか! すごいわね、アース!」と、母上を始め、兄上たちも俺をほめてくれた。
褒められるのはうれしいが……。
「その内訳は、二つは私と同じ、水と氷属だ。そして光属性、もう一つは空間属性だ。」
……。父上がそういった瞬間に沈黙が流れた。
まさか、他の家族の反応は、芳しくないのだろうか? 俺がそう心配していると、家族全員が立ち上がった。
「まぁ、すごいわ!」
「それは本当ですか、父上?」
「アース、や、やるな……。」
三者三様のリアクションを見せた後は、全員に詰め寄られ、頭を撫でまわされた。
「あ、ありがとうございます。父上、母上、そして兄上。」
「いやー、本当にすごいわ!」
「アースは、我が家の誇りだ!」
うっ……。そのキラキラした目には悪いが、どうにも喜べないな。ここは、しっかり言うべきだな。
「父上、この事は国に報告するのでしょうか。」
「うむ。しなければならないだろうな。先ほど、司教にも私から国報告すると言ったしな。」
「あの、私これからどうなるのでしょうか。この空間属性というのは非常に珍しい属性なのですよね? そうすると、例えば誘拐されたり、命を狙われたりとか……。」
俺がそういうと、皆ははっとした表情を浮かべた。
「うーむ、その恐れは確かにあるな。空間属性持ちは、ここ何百年現れていないしな。」
やはりそうか、さてどうしたものかな……。俺が心配していると、兄上たちが俺の頭をなででくれた。
「俺たちが兄として、アースを護りますよ。」
「俺も、仕方ないから手を貸してやるよ。」
「家族、親せき総出で、あなたを守りますわ。安心なさい。」
家族がいい人たちでよかったな……。まだ、本島の家族という実感はないが、心が温まる。
「うむ、そうだな。しかし、家族や親せきだけでは限界があるか。マクウェルたちも学園へ通うようになれば、アースと共にいることが難しくなるであろう。」
父上がそういうと、マクウェル兄上は少し考えた後に意見を述べた。
「それならば、アースに同年代の側近をつけるのはどうでしょう?」
マクウェル兄上ナイス! やっぱり、側近って憧れるよな。だけど、跡取りでもない三男に、側近なんて普通つけるのか? むしろ、跡取り以外は誰かの側近になる側ではないだろうか?
「うーむ、公爵家三男に、側近をつけることは普通ないが……。だが、同年代で、学園に行きながら行動する護衛は必要だな。例外ではあるが、考慮しよう。」
「そうね。だけどまずは、友人作りから始めてみましょうね」と、母上が微笑んだ。
友人は確かに欲しい。側近の前に友人が欲しいな。前世の俺はそれなりに友人がいたし、コミュニケーション能力にはさほど問題はないであろう、たぶん。
あとは、後ろ盾が欲しいな、こう何かあった時に守ってくれるような。それには、俺がそれなりの地位にいる人の側近になるのがいいかな? 俺は、どちらかというと前に出るよりはサポートの方が得意である。側近に向いているのではないだろうか?
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