第35話 龍ノ三条マリー
ようこそ! いらっしゃいませ! 私は龍乃三条家・次女・龍乃三条マリーですよ!
私は十二年前に、春乃三条男爵家に生まれましたよ。
春乃三条家は男爵家ではありますが、領地を持っていないのですよ。まぁびっくり!
三条一族の中でも末端も末端でまぁ、言ってしまえばあんまり庶民と変わらぬ、大したことのないお家柄なのですよ。
なので三条の中でも十指に入る朱乃三条伯爵家の敷地に間借りしており、普段は畑仕事などをしており、薬草でお薬などを調合してたりして生計を立てておりますね。
ご存じの通り、三条は帝国で魔術を生業として皇室に重宝がられておりますよ。
なぜ魔術かと申しますと、三条の始祖様は初代龍帝様の側室がお一人、カイミン様との間に生まれたお子で特に魔力も強く、魔術に長けた方だったからですね。
カイミン様は魔大陸よりいらした魔人の方でかなりの魔力をお持ちだったそうですよ。
以来、三条はとても魔力至上主義的なところがある一族になってしまいましたね。
積極的に魔力のある者、魔術に長けた者を重宝する傾向がありますよ。
さてさて、私はこの世に生まれ出た日より異世界の君と結ばれることが決まっていたのですよ! うふふ。
生まれてすぐに春乃三条の家から龍乃三条に養子に出され、そのまま龍都に連れてこられて、一族の代表として、異世界の君にふさわしくあるよう、恥ずかしくないよう育てられてきましたよ。
そして幼き日より、それはそれは繰り返し繰り返し異世界よりいらした勇者様のお話と国母様のお話を聞かされて今ではソラで言えるくらいですね。
養父様も養母様もそれは厳しかったですが優しくもあったので苦にはならなかったですよ。
生みの父母は私を養子に出したことで暮らし向きもよくなったといいますよ。
一年に一度、親族の集まりの時にくらいしかお会いしないのであまり親愛の情は湧かないですね。
そして私は、ずっと、ず~~~と異世界の君をお待ちしておりましたよ。
どんな方なのだろう、と。
沢山想像したんですよ。
背はお高いだろうか?
髪は何色だろう?
お強いのでしょうか?
魔術はお使いになるのでしょうか?
どんなものがお好きなのでしょう?
お食事に好き嫌いはあるのかしら?
私はどこかに行ったり、何かする度に……異世界の君はどうかしら? と考えてたんですよ。
だから、本当にお会いできて嬉しいんですよ!
私は残念ながら魔力量も少なく魔術も得意ではなく、三条一族の者としては落ちこぼれの部類に入りますが、養父・養母もそれより側室としての役目を果たせれば良い、と切り替えたようですね。
それでも多少の魔力の流れのようなものを見ることはできますよ。
ご召喚の儀式には三条の家からは昔からそれはそれは大勢の者が儀式に参加しておりますよ。
私も儀式には参加してませんが今後の為、と儀式の見学をさせていただきましたよ。
儀式のとき、龍一様がご出現、成された時それはもう美しかったですよぅ。
レイラ様と龍一様のお二人の魂の結びつきがキラキラと光っているように太く、美しく、ああ、あれはなんと表現したらよいか……。
ご側室お披露目の時も、はしたないですが、少しだけ龍眼を使い、見てしまいましたがレイラ様、レイリ様、そして二柱の龍神様とお繋がりになっていらっしゃてましたよ。
本当にお美しく、私も早く異世界の君とあのように繋がりたいと思っておりますよぅ。
◇◇◇
さてさて、俺が龍人街南区の超高級住宅街、貴族しか居を構えることの許されない区域に立つ、龍乃三条家に入った瞬間だ。
正確には皇家ご用達の高級感あふれる馬車を降りた瞬間、ソレはいた。
しょ、小学生かな? と思える年端の行かない娘だ。
姫カットの上から下まで真っ黒なゴスロリ少女がちょこんと俺に一礼する。
最初の印象はここのメイドさんかな? てことだ。
三条一族は魔術を専門職とする一族なので、なんての、魔女的な、使用人とかもこういう格好で仕えてるのかと、思うのもしょうがない、だろう?
「この館の三条家のご息女です」
サキが俺に耳打ちする。
「え?まさか?」
「はい本日のお相手です。ご挨拶を」
まじか~ロリじゃん、やばいよ。捕まっちゃうよ。
「大丈夫、
地が出てるぞ無表情1号ちゃん。
そりゃ昔の? 戦国時代とか武将同志の幼い子供が婚姻するだの、みたいな話は聞いたことがあるけど……。
「え、えと、龍之宮龍一です。こんにちは」
「はい! 異世界の君! 龍乃三条マリーですよ! たくさん、たくさん可愛いがってくださいよぅ!」
と飛びついて抱きつかれた。
まぁそれからず~とくっつてくるわけよ。
それを誰も止めないわけよ。
「あらあら、仲のよろしいことで」て雰囲気だしちゃってさ。
ここ一番で頼りのサキちゃんも
「ご側室候補の方ですので」
と、知らん顔だ。下条家の時の、あの、頼りがいのある自分を思い出して! 俺を助けて!
……とまぁ、ならば自衛するしかないよね。
さっきも言ったがどこにも付いてくる。
今回トイレ以外は本当ずっと一緒だったよ。
風呂も付いてきて、最初スッポンポンだったのをタオルを付けさせた。
「それはお行儀の悪いことと伺ってますよぅ~」
と抵抗してたが、じゃ一緒の入浴はNGだ、と言ったらなんとか、しぶしぶ付けてくれるようになった。
「ふふふ、異世界の君は恥ずかしがり屋さんなんですよぅ~」
いやいや、罪悪感半端ねぇよ!
寝る時も当然、て顔で布団の中に入ってくる。
てか最初から寝室に二組用意されてるしな。
どうでもいいけどやっぱ領地に立ってるのは武家屋敷みたいな日本家屋だったよ。
で、布団の中なんだけど
「異世界のお話を聞かせてくださいよぅ!」
て、感じで話してるとその内に寝ちゃうんでまぁ、いいんだけど。
しかし油断はできなく、たまに
「えっちなことしちゃっても、いいんですよぅ~ふふふ」とくる。
これは……まぁ本当勘弁して下さいだよ……。
側室候補チャンジをこっそり、龍乃三条家にお願いしたが俺に釣り合う年齢の娘がいないらしい。
本家の龍乃三条家は長男、長女だが長女は百歳越えですでに分家に嫁に行っている。ちなみに子はまだないらしい。
まぁ一族全てを見渡してもそんな感じなので春乃三条の家に娘が出来た時は、それはそれは一族総出で喜んだらしい。
「ですから二の丸様、夜伽は、その、五年後でも十年後でも二の丸様のお好きな時で構いませんので、その、今回はなにとぞ、あの娘でお願いしたいと、」
二百歳ごえの貫禄たっぷりの公爵を中心に大勢で土下座でお願いされちゃったらもう、俺みたいな若造なんか断れないよね。
で、帰ってきてもちろんすぐ後宮入りしたんだけど、俺がグチると皆「?」て顔をする。
そんなん当たり前で赤ちゃんじゃなかっただけマシよ、と言われる始末だ。
◇◇◇
時々レイラ、レイリと三人で寝る。
別に情事をするわけではない。
まぁ今はしたくても出来ないけど、この姉妹と一緒にいると落ち着くから、それだけなんだけど少しでてきたお腹をさするのが一番の楽しみだ。
「ふふふ、そんなにさすってもスグにはでてきませんよ」
「いいんだよ、さすりたいんだよ」
「兄さまは親バカになりそうね」
自分でもにやけてるのがわかる。
「ん?そうだな、お前たちの子のためならどんだけバカになってもいいや」
「ほんとバカね。まだ生まれてもないのに」
「ふふふ、素敵な龍になってくれるといいですねぇ」
「ん……今は無事に、元気で生まれてくれりゃいいや」
まだまだお腹の中で動く気配はない。
「しっかし、まいったな~俺ロリコンじゃないのに……」
「またその話? 兄さま、いい加減諦めたら? もう後宮入りしちゃったし」
「あの子を育てる気持ちで接していたらいかがでしょうか。悪い子ではなさそうですし」
「ま、妹みたいなもんだよな、妹というか、親戚の子というか……」
マリーとの付き合い方は悩ましいが確かにもう後宮入りした以上なるようにしかならないのだろう……。
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