第34話 五十畳敷きの和室
皆さん、こんにちは、佐藤改め、龍ノ宮龍一です。
名前の中に龍の字が二つもあってくどいですね。
俺もそう思います。
書く時、字画が多くてめんどくさいし。
本日はここ、龍ノ宮城、二の丸、五十畳敷きの和室よりお届けします。
畳の匂いが心地良いですね。
俺のはるか向こう見える、大きな花瓶には蔓梅モドキが飾られてて雰囲気がいいです。
今、この和室の襖は開け放たれてて、そこからは見事な枯山水な庭園が見え、遠くに名前は知らんが、見える山脈はすでに紅葉が美しいです。
借景て言うんだっけ? こういうの?
炎の龍人(仮)になってからはあまり寒さを感じませんが、こういった風景を愛でることができるのは喜ばしいことです。
あぁ、そう言えば昨晩頂いた茶碗蒸し。あれに入ってた銀杏的なものに思わず季節を感じずにはいられません。
「聞いてますか、二の丸様」
はい、レイラさん、聞いております。微笑んでらっしゃるけど、圧がすごい……。
「……呆れてしまうわ、ヨソの国のお姫様に酔って抱きつくなんて……」
はい、レイリさん、おっしゃる通りでございます。
「まったく、カナエ様が機転を利かせていただけなければどうなっていたことか……」
そうですね、レイラさん、全くもってその通りでございます。
「そうだぞ! 二の丸様! おかげで私は鳩尾にいいカンジの正拳をくらってだな!」
オカッパまで参戦してくる。
「僕は後頭部にきれいなハイキックを……」
クロダ……お前……。
「お黙りなさい。あなた方も反省することはおありでしょう!」
カナエがピシャリ、とやる。
「まったく軍であなた方は何をしていたの? 信用して二の丸様お側を任せているのに、鍛えなおす必要がありますね」
襲撃現場から何度目になるかわからない説教をカナエに喰らってるが、スマン! 今は助け舟を出してやれねぇ……。
「そうですね……最強種たる我ら龍の眷属が、たかだか十人の魔人ごときに遅れをとるなどあってはならないことです」
レイラさんもお怒りだ。
朝食後より始まった今回の報告会&反省会は俺と、ついでにオカッパ小隊のつるし上げ大会となり、なんとか昼までに終了した。
俺とオカッパ小隊は恐怖した。
◇◇◇
「人間の暮らしは大変でありんすな」
俺は昼食後、龍紋の調整をしに水龍のお社に来てた。逃げる口実があって良かった。
が、今日はお休みして甘やかしてもらうことにした。
膝まくらして皆に怒られたグチを聞いてもらうことにした。
情けないですか?そうです。情けない男です。
俺だって頑張ったんだ! ……いや? ほとんど俺は行って帰ってきただけだな。
作戦の骨子を決めたのははクロダだし、取り纏めはカナエだし、目標発見は飛竜隊だし、襲撃者撃退はオカッパとカナエと青野君だし……。
……俺いらなくてよくね?
「
「ん?」
「わからんでありんすか? わっちらはまぁ、神様なので単体でなんでもできるでありんす。人は群れで何かをなすでありんしょう?
手には手の役割、足には足の役割がありんす。しかし頭がないとどれも動きんせん」
「ん~~わかったような、納得できないような?」
「まぁ
「そんなもんか?」
「そんなもんでありんす」
俺は水龍の膝の上で考えるが、まぁ、皆がそれでいいならいいか、と気持ちを切り替える。
「ところで、そのびーる? とやらはそんなにおいしゅうものでありんす?」
「ああ、もうこっちに来て? 九か月か? ず~~~と飲めなかったからなぁ~……。もう飲めないもんだとばかり思ってたから、ちょっと涙腺崩壊しちゃったよ」
「ふふふ、あっちに帰りたくなった、なんてなのはなしでありんす」
「いやいやいや、そのエリアナ王女がさ、今回のお礼に、何樽かくれたんだよ。さすがに飛竜に乗せることはできなくて馬車で運送してくれるから1か月後くらいには飲めるんじゃないかな?着たら一緒に飲もうぜ」
「ふふふそれは楽しみでありんす。それより、
水龍の手が妖しく俺の身体を撫でまわし始める。
「まだ昼過ぎだよ……」
「かまいんせん……しばらく振りに
お社から出た時、今日の俺付き侍女が
「……まずはお風呂に行きましょう……」
と、やれやれ、といった感じで言われた。
◇◇◇
さて、俺は帰国して、1週間後に今まで延期してた龍乃三条家ご訪問を行った。
南区のモダンな邸宅にお邪魔して後、帝国北東に位置する三条家領地に移動。
自分から言い出したことだけど忙しいよね。
龍乃三条家領地は山あり海ありのなかなか風光明媚な場所でもあるんだ。
けっこうな観光地で、国内、国外問わずレジャーに訪れる者も多いそうだ。
俺たちが言った時はちょうど”けいさん”というちょっと大きめの魚の漁が盛んな時期で沢山の釣り人が訪れていた。
けいさんは鮭のような魚で、秋になると産卵の為に河口付近で釣れるらしい。
なので河口付近には、大勢の釣り人が竿を握っている。
けいさんは釣りに良し、焼いてよし、揚げてよし、茹でてよし、のなかなかに万能な魚でとても旨い。
お城でも時々朝に塩振って焼いたのが出てくるが、やはり本場で食べるのは鮮度も違うし、脂が乗っててうまい。
ノイという牛の牧場もあり、ステーキをたらふくごちそうしてもらった。一大芋の本場でもあるらしく、ここにきてから本当に美食三昧だよ!
あ、あとノイの乳で作ったアイスクリームがね、絶品で風味豊かな濃厚な味わいで、いくらでも食べれちゃう。
人間なら腹壊しちゃうだろうけど、炎の龍人(仮)なのでいくら冷たいもの食べても全然平気!
あと、唐辛子タップリのなんか辛い名物の鍋を、とあるレストランで頂いたんだけど、違うテーブルで食べてたエルフが「アツっ」だの言いながらヒーヒーしてなんとか口に入れてたけど、これね、残念ながら辛くもないし熱くもない。
そういう刺激的な食べ物を楽しめなくなったのはちょっと寂しいかな?
あ、あと海のそばの温泉も行ったよ。
俺の大好物の露天風呂でさ、こうね、ざざぁ~~んと、押し寄せる波を見ながらの入浴、龍ノ宮市には海ないから新鮮! たまんないよね!
時々ね、ここで飼ってるという海竜がさ、どぱぁ~~んと海から飛び出て弧を描いてまた海に潜るんだけど、まぁ絵になるわけよ。
それでね、また日本酒持ってきてもらってさ、こう、お盆にね、徳利とお猪口乗せてさ、海見ながら一杯やるわけよ! 最高!
たまにベンチに腰かけて湯冷まししたりしてさ、夕暮れから星空に代わるまでいて、すっかりのんびりしちゃったよ!
今までのバタバタの疲れも吹き飛んだよね!
あ~いいもの食べたし温泉も良かった!あとは帰るだけだね! 楽しかった! 観光旅行最高!
え?なんか忘れてるんじゃないかって?
……忘れてないし! あれだろ、アレ。
龍乃三条家のご令嬢だろ?
はいはい、いますよ、会いましたよ、俺の側室さん。
ていうか今もいるよ、横にずっと。
俺の腕にしがみついてるよ。
なんか初日からべったりだよ。
食事中も風呂も寝る時も、ヘタしたらトイレにまで付いてこようとするよ!
はい、側室三人目、ゲットだぜ?
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