第21話 契約・その後

さて、俺はこうして、文字通り生まれ変わった。

ただの人間じゃなくなりま~し~た。

まぁ、それに未練があるかと問われれば答えはノーで、これでレイラやレイリ達に近づけたかな、と思えば悪くはない。

そして俺の生死だが俺を生まれ変わらせるにあたり、色々神様も大変だったらしい。

人が人の神さまにお願いし、貢物をし、契約すると生前のまま生まれ変わるらしい。

いや、それにしても莫大な貢物やら制約やら条件があるらしいが……。

今回は竜神が人を蘇らせるという案件だ。

龍神様だって神様なんだから楽勝! て思うだろ?

なんかそうでもないらしい。

人の因子と龍の因子が、とか領域がどうだの、成分がどうだの、黒龍だったらできるけどアイツは呼びたくないだの、雷龍・水龍コンビが言ってたけどよくわからねぇや。

で、気になる俺の体だが、今はちょっと中途半端なことらしい。

生き返らせるにあたり、俺の体に龍の因子を組み込むことがどうしても必要だったらしい。

炎龍が額の龍紋にこだわったのは俺の基本系統を決定付けるものだかららしい。

これでおれは「炎の龍人(仮)」みたいな存在になり、あわせて水系統・雷系統の異能も持つ、といった存在らしい。

超能力バトルの主役みたいで、ちょっとかっこよくない?

けど真体にはなれるけど、龍体にはなれないんだってさ、残念。

そしてほとんど魔力ゼロの人間だったからこれからがんばらないと一つの龍紋も扱えないってさ。

大変そうだがまぁ寿命が伸びたらしいので気長にやるしかないな。


「やるしかないな、て兄さま……」

「あなた様は……本当に全く……」

「え? ワシより龍紋あるの?」

「あらあら最強種の誕生、ですわねぇ」


神社の拝殿に二神を連れて行き、大体の経緯を説明し、龍帝一家のお言葉を頂く。


「龍帝、わっちらの神社を早急に建立するようにの」

「大きいの、お願いね!」

「わっちの神社の本殿は大きな湖のそばにしてくれておくんなまし」

「君達、ちょっと黙っててくれないかな」


すぐに二神が絡んできて話を脱線させる。


「え~僕達も話にいれてよ」

主様ぬしさまはつれないでありんす」


「ちょっと! 兄さま!」

レイリが叫ぶ。

「なんだ、レイリ?」

「兄さま、まだ肝心なことを聞いてないわ!」


鼻息の荒いレイリをレイラが制す。


「お待ちなさい、レイリ。私が問いただしましょう。さて、龍一様」


改めて姿勢を正し、正座のレイラが俺に向き直る。

なんか微笑みに迫力がある。


「な、なんだ?」ちょっと怖いぞ。

「いくつかお伺いしたことがございます。よろしいでしょうか?」

「え~~もういいじゃん。僕おなか空いたな~」


また雷龍がちゃちゃを入れる。


「あっちも顕現してからなにも口に入れてないでありんす」

「では龍神さま方はこちらへ。何かご用意させましょう」


うまいこと神官ぽい人が二神を連れ出してくれた。


「んっんっ! ではまず私たちのことです」


レイラが質問を再開させる。


「う、うん」


「私たちとの婚姻、これはいかなことになるのでありましょう?」

「ああ、それは安心してくれ、予定通り、君たちと一緒になりたい、と思っている。俺がこんなになっちゃってそちらが良ければ、だけど」

「いいに決まってます!……そうですか、まずは……それは安心いたしました」


レイラはじめ、皆が安堵の表情を浮かべる。良かった。

苦労して生き返らせたのに龍神に持ってかれちゃたまったもんじゃなかったろうな。

そう考えると皆が心配しているのもわかる。


「あと、お城で約束したことはもちろん、そのまま継続して実行させていただこうと思っているよ」

「なるほど、お心遣い、ありがとうございます。では次の質問です。その、雷龍さまと水龍さまとは……」

「え~と、その、言い難いだけど……子作りをすることに……なりました」


はぁ~~~、とレイラ、レイリが同時にため息を付く。


「やはり、その様なことになりましたか……」

「仕方ないだろ、詳しくは言えないけど、その、まぁ、生き返らしてくれたし、神様だし……」


神との契約は他者に言ってはいけない場合があるが今回は特に二神にクギを刺されてる。


「わかっておりますし理解しております。しかし、新しい属性の龍人が生まれるということは……」


レイラがそこまで言ったとき俺達の車座の中心にいきなり炎があがり、その中から少年? のような男が現れた。


「炎龍様!」

「そのお姿は……」


皆が動揺している、ほほう、これが炎龍様か。


「佐藤龍一、我が炎龍である。まずは無事で良かった」

「俺を生き返らせてくれて有難うございます」


とりあえず正座でお辞儀しておく。


「お前にとってはあまり関係ないことなのに我が子孫の行く末まで案じてくれ、礼を言う」

「龍帝、レイラ、レイリ、あまり龍一を責めるな、彼は良く考えてくれている。不安もあるだろうが、彼の好きにさせるがよい」


「はは~」一同がひれ伏す。


「では佐藤龍一、我と会うことはもうないだろうが、この世界で思うが侭に生きるがよい」

「ありがとうございます。そうさせていただきます」


俺が平伏してると横から雷龍が話しかけてきた。


「炎龍、もう行くのかい?」

「こっちに来て一緒におにぎりを食べるでありんす」

「ふふ、もうなじんでるな、私はもう行くよ」


そういって炎龍様はふっと消えた。


こうして一同にとって長すぎる夜はとっくに開け、すでに昼になろうとしていた。

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