第20話 龍神二柱

俺は死んだ。短かったがまぁ、いい人生だ。童貞も捨てれたしな。

だが、いきなり目が覚めた。


「暗いな……」


なんか、寒い……裸か?

ここはあの世、なのか? 上半身を起し、あたりを見渡す、薄暗いお堂のような場所だ。

ここから外に出ると、多分案内役みたいのがいて、地獄だか天国だかに連れて行かれるのかな?

どっちでもいいが美人が多いとこにお願いしたいな。


「あ~はっははっは! 君、想像力豊かだね!」

「ほんに、面白き御仁、楽しくなりますえ」


ん、誰かいるのか? 俺は一気に緊張し警戒する。


「大丈夫、怖がらないで」


と声の主が言ったかと思ったらピシっと音がして光った。

すると暗闇から、ぼや~~~と二人の人物が浮かび上がった。

女のようだが……。


「初めまして、僕は七大龍神の一柱、雷神。よろしくね」


短めの青い髪に所々白いメッシュが入っていて、ピチっピチッと光っている。なんとも露出過多な着物を着ている。と、とくに胸元やら太ももやら。


「わっちは七大龍神が一柱、水龍でありんす、今後とも末永く、よしなに」


こちらは花魁ギャルって言ったらいいのか、でもやっぱり露出の多い着物だな。

キセルを吹かしてらっしゃる。


「さぁ僕たちは名乗ったよ。君の名前を聞かせて欲しいな」

「あ、どうも佐藤龍一です。えと、神様……なんですよね」

「そうだよ、僕たち神様龍神様! 龍一君かぁ~~~いい名前だね!」

「はぁ……」

「御名に龍の字が付いてらっしゃるとは、ふふふ、なんとも運命を感じるでありんすえ」

「それで……龍神様たちはなぜ俺の前に?」


これは、だ。

なんとなく想像がついてしまう。

炎龍様でない龍神が女の姿で俺の前に現れたんだからな。


「ふ、ふ~~ん察しはついてるみたいだね、その通り! 龍一君と僕らで子作りをして欲しいのです!」

「わっちはこの時を千年、いや千五百年待ちましたえ」

「ほら、ぼくら龍神ってさ、気まぐれに人と交わり、婚姻をするんだけどさ、子どもが出来たことってないんだよね!」

「炎龍に子ができんし時はそれはもう羨ましくて……」

「僕たちも子供がずっと欲しくてさ、それでさ、ずっと待ってたんだよ、異世界の人の子が来るのをね」

「しかし炎龍の国に現れ、かの者の庇護下にありんしてのぅ……。今まで歯がゆく……」

「まぁまぁ水龍、その話は長くなるからさ。それでね、ここからが本題なんだけど」


こりゃなんか大変なことになってきたぞ。


「僕らと契約して欲しいんだ」

「契約、ですか?」

「そ、僕らはあの龍人たちとは違うよ、ただ子作りに協力しろ、なんて言わないよ。契約してくれたら龍一

君に色々な特典を付けてあげる!」

「千年でも万年でも、この世の終わりまでもの生を授けることもできんしえ」

「寿命だけじゃないよ、この世界の王にもしてあげれるし、最強の人種にもしてあげる! 願いはなんでも叶えてあげれるよ!」


なんだかうますぎる話だな、危ない危ない。


「その、契約しなかったらどうなるんです?」

「う~ん、ぶっちゃけ、君はここで死ぬ」


ぶっちゃけやがった。


「え?」

「今はさ、龍一君は仮に蘇っている状態なんだよ。炎龍に頼まれたから力を貸したけど、君が僕たちと契約してくれないなら僕たち、なんの見返りもないじゃん」

「他のことじゃダメなんですか?」

「残念ながらダメなんでありんすぇ。わっちらは他のことに興味はないでありんす」


これは選択の余地はなさそうだな。仕方ない。


「わかりました。あの、それはそれでいいんですが、一つ条件があるんですがよろしいでしょうか?」

「ん~~~まぁ一応聞いてあげる。龍一君も突然なことだしね」

「え~と、今まで通りここで生活することはことは大丈夫なんですか? そのレイラやレイリと」

「あ~、それは大丈夫、龍人たちと約束したことは守ってあげて、じゃないと今度は僕たちが炎龍とやりあわなくちゃだからね」

「あの者と諍いをおこすのは面倒でありんす」

「それと……」

「まだ、なんかありんすのかえ?」

「まぁまぁ水龍、ここは聞いてあげようよ。いいよ龍一君」

「ん、ん、その雷龍様も水龍様も、ブラウ大陸ではない、他の大陸で根を張りお住まいと伺っております。もし、俺と子ができた場合そちらの大陸ではなく、この龍帝国で育て、炎龍様の龍人と一緒に生活させたいんです」

「ん~これも一応聞くけど、それは、なぜ?」

「はい、他に水の龍人、雷の龍人の国が出来、将来龍人同志の戦争などが起こらぬように、です」


水龍と雷龍は顔を見合わせる。


「で、でもさ、戦争なんて起こらないかもしれないじゃん」

「そうでありんす。わっちも炎龍の様に我が子の国を作り、奉られたいでありんす!」


それが本音か。こいつら。


「いやだ!」

「龍一君」「主様ぬしさま」二人が声を合わせる。

「水龍! 雷龍!!」

「は、はい」

「はいでありんす」

「俺はお前たちと子作りをする! そして生まれた子は、俺の子だ! その子たちが属性が違うだけでいずれ殺しあうのが嫌なんだ! だからここで育てる! それが俺の条件だ!」

「……もう、君はしょうがないな、神様を怒鳴りつけるなんて」

「わっちの野望が……」

「わかったよ、君の願いを聞こう。僕たちは神様だからね」

「仕方ないでありんす」


俺は二人に手差し出す。


「二人とも俺を生き返らせてくれて有難う。契約をしてくれ」

「いいんだね」


雷龍が聞く。俺はそれに答える


「ああ」

「いいんでありんすね?」


水龍も確認する。


「もちろん」

「ではこちらへ」


二人は俺の手を引き、外へと連れ出す。

池のほとりで二人の着物はいつの間にか消え、一糸まとわぬ姿になり、俺を池の中へと導く。

最初に雷龍が俺に抱きつく。


「じゃあ契約するよ。いいね」


無言でうなずいた俺に、濃厚な口付けをする。

とたんに目の前が光って、体中に文字通り、電気が走る。

雷龍が口を離し告げる。


「佐藤龍一、汝と我、雷龍の契約は成った。今ココに我は汝の願いをかなえよう。よろしくね! 龍一君!」


あ、頭がクラクラし、体に力が入らない。


「次はわっちの番でありんす」

「あ、ちょっと待って、休ませて……」


雷龍が言い終わらぬうちに、今度は水龍が抱きつき、舌を絡ませてくる。

すると今度は水を感じる。池の水から大気の水分、地中に含まれた水気、体中の血液に……俺は……世界と繋がっている、そんな静かな気分になる。


「佐藤龍一、水龍の契約は成りました。なんでも言ってくんなまし。主様ぬしさま


雷龍と口付けしてフラフラしてたのが、なぜか今度は体が穏やかな楽な感じだ。

と、俺の体が光りだした。龍人が光りだしたりする時みたいだ。

雷龍が俺の体をさすりながら言う。


「君ね、もう普通の人間じゃないんだ、ごめんね」

「炎龍が三つ、雷龍が三つ、わっちが三つ、龍紋を授けんした」

「そ、そうなの?」

「うん、龍紋九つもある人間なんて今の世に他にいないよ。君は今ね、ほぼ世界最強だよ!」

「マジで?」

「ふふふ、まだまだ第一段階の龍紋だから、世界最強にはほど遠いでありんす」

「がんばって第十段階まであげようね! 目指せ! 世界最強~~~!!」


俺の左手を持ち、愛おしそうに頬ずりしながら雷龍が言う。


「額はね、炎龍が絶対譲ってくれなかったんだけど、この左手の龍紋は僕からの贈り物。今はたいしたことできないけど大事に育ててね」


水龍は俺の右手を自分のその豊満な胸に当てて言う。


「こちらの龍紋はわっちのでありんす。今はがんばっても、コップ一杯程度の水しか操れないと思いんすが主様ぬしさまならきっといずれ広大な海を操ることも苦もなくできるでありんしょう」


すげぇな。なんと言って良いのか、すげぇな!

俺今そんなことになっちゃってるの!?


「じゃあ、契約の最後の儀式をやるよ」

もうされるがままだな。

「後は何を?」

「契ってもらうよ! 僕たちを朝までたっぷり抱いて!」

主様ぬしさま、遠慮のう可愛がっておくなまし」


そうして朝まで三人で契りを交わした。

池の中にずっといたが何も苦はなかった。水龍のおかげか、はたまたこれが神の力か……。

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