第11話 続・ご学友
「あ~し、今日帰って道場の課題やりたかったんだけどさ」と古敷龍カエデ。
「てか今日誰持ち? 姫様だしてくれんだよね?」と小白竜ツカサ。
「今日、魚なんかいいのあるぅ~? 肉はいやだよぉ~」とは双竜士ララ。
「あのぉ~、それで本日の議題は何なんでしょうか?」と委員長。
だらだらと好き勝手にしゃべる女子たちに向かい、立ち上がりパンパンと手を叩き、風竜寺アヤネが皆を黙らせる。
「はい、皆さんご静粛に願いますわ。この場は姫様と私が折半で持ちますわ。しかし! 追加の飲み食いは各自でお支払い願いますわ」
皆、アヤネに言われて龍一に子作り願いに迫ったメンツである。
ここは南区の富裕層が集まる高級料亭が並ぶ一角にある、アヤネの家の財閥が持つ料亭の一室だ。
政財界や貴族の御用達の超一流料亭である。
魔術で完璧にガードされており、ここでの会話は絶対に外に流れる心配はない。
雰囲気抜群の和室で女子生徒が制服姿でだらだらとだべってる姿は違和感しかない。
彼女らが飲み食いしてるのはここの料亭のものではなく、来る途中で買ってきたお菓子やらジュースの類だ。
「え~それでは本日の議題ですが、皆さまうすうす感づいてらっしゃると思いますがもちろん姫殿下のことですわ」
「え~?昨日の<子作りしましょ~、お話お聞かせください~、ではこちらへ~、からの教室から連れ出し作戦>めちゃ失敗したっしょ」
とカエデが言うと
「したっけ、あんなに他の女子釣られるとは……いやぁ~異世界人恐るべし、なんだわ~」とらら。
「生徒会長まで来たの笑えるっしょ。あれマジなん?」とカエデ。
「あら、うちはホントに落とす気よ、龍人なんて絶対いやだし!」とツカサ。
「ちょっ! ツカサ! あんたエルフ推しでしょ!」
「はいはい、話が進まないので、まぜっかえさないでお願いしますわ」
「それでアヤネ、うちら集めてどうするん?」とツカサ。
「集めてませんわ! 本当は姫様と二人っきりでお話するつもりだったのにあなたがたが勝手にくっついてきたんですわ!」
「だって姫様の悩み事だろ?」カエデがニヤニヤという。
「うちらぁ~~仲間じゃん~。ズットモ?」ララも便乗する。
「そうそう一蓮托生呉越同舟、地獄の底まで付き合うっしょ!」とツカサが手のひらをヒラヒラさせる。
「姫様が心配なんです!」と一人正座で委員長。
「あんた、たち……私うれしいわ!」レイリがうるうるする。
いやいや、この連中はただ単に面白がって付いてきた野次馬ですわ、姫様……とアヤネは心の中でつぶやく。
結局居座った連中に、ことの経緯をレイリがかいつまんで説明する。
「……というわけだから私も早く兄さまと結ばれたいわけよ」
「わかるぅ~わかるよ、姫様!!」委員長がノリノリだ。
「なぁ~んだぁ~、そんなことかぁ~」ララが肩透かしされた風に言う。
「一緒に暮らしてんでしょ? 下着姿で布団の中にもぐっちゃいな姫様」とツカサ。
「……やったし……」
「え?」一同の視線が一斉にレイリに向く。
「それはもうやったの!!」
「だめだったん?」カエデが聞く。
「ん~~~、なんかうやむやに……私も何か中途半端な感じになっちゃって……」
「あの~、きちんと抱いてくださいって、お願いしたらいいと思います!」委員長が優等生発言をかます。
「ついうっかり~のフリしてお風呂に乱入するのはどう?」とツカサが言うと
「それは姉さまがやったらしいわ」
「うちの船乗る~~?マジで子作りクルーズしちゃいなよぉ~~」ララが進める。
「結婚の儀が済むまでは龍都からは出ちゃダメだってさ」
おもむろにカエデが抜刀し、力強く叫ぶ
「もうこうなったら剣ね! 剣で勝負して勝ったら抱いてもらいな姫様! 龍人は何事も勝負で決めるもんっしょ!」
「佐藤様は龍人ではありませわ」やれやれといった感じでアヤネが言う。
「そ~だ腦筋、そんなん色気もくそもないっしょ」ツカサがまたか、とカエデを責める。
カエデは煮詰まるとすぐに「剣で勝負!」で決めたがるのだ。
「けどそれなら兄さまに勝てるわね」レイリはまんざらでもない様子だ
委員長が「姫様、ぼ、暴力沙汰はいけないと思います」とレイリをなだめる。
「そうですわ姫様、腦筋の言葉は聞き流して欲しいですわ。」アヤネも重ねる。
「もう、あれじゃん、裸でリボンつけてさ、私をどうぞでいいんじゃね?」
ツカサがもういい案はないみたいに言う。
「裸……リボン……」レイリがゴクリと喉を鳴らす。
「下品な方向にいくのはやめて欲しいですわ」アヤネが返す。
「だってレイラ様も風呂乱入でうまくいったんだろ? 今更じゃね?」
ツカサも反論し、レイリにくっついて肩を寄せる。
「大丈夫だって、姫様。男なんて童貞捨てたらヤリたいだけの動物になるんだって従姉の姉さんが言ってたし。今、レイラ様がいないんだったら絶好の機会だって」
「裸リボンはともかく、今がその機会、というのは賛成ですわ」
「そだね~、潮目を読むのは良い船頭の証だよ姫様」
「剣の試合でもそうだわ、姫様! 打ち込む一瞬の機会を逃さない者が勝利をもぎとるっしょ!!」
「姫様、教室の同意を得て、議題を我が意に進むよう事を運ぶのはやはり会議の空気を敏感に読み、賛同しやすい機会を逃さないことです!」
会議は踊り、かしましい女子会はぐだぐだしながらも、一つの方向性を見出だそうとしているのだった。
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