第2話 やっぱり異世界

だだっ広い、そして豪華すぎる食堂で、一通り出された物を食べた。

なんかデッカイ、ステーキ的な肉が山盛りとサラダ、それになんと、おにぎりがでた。

意外、というか口にあった。いや、出されたもの全てがうまかった。


「お口に合うでしょうか?」


レイラ姫様が俺の様子を伺う。


「うん、おいしいけどこれはなんの肉だい?」

「それはノイの肉ですね。郊外の牧場で飼育している牛の1種です」

「ふ~~ん、うまいですね、それにその、異世界でおにぎり、米が食べられるとは思わなかったです」

「うふふふ、お米を栽培するには昔、ずいぶんと苦労されたそうで」


……異世界人コメ農家……竜が飛んでるとこなのにな。


「ふぅ~~~、美味かった、です」

「ご満足いただいたようで良かったです」


食べている最中、俺の向かいに座ってほとんど、黙って見ていた姫様がほっとしたように返事をした。


「ところで、なんで僕らは会話できているんです?」


食後のお茶?  的なものを飲みながら、素朴な疑問を聞いてみた。


「それは……私たちがお呼びしたのですから、お話しないのは失礼でありましょう?」

「?」


会話になってないような……と思ったら、姫様の後ろに控えていた白マントが姫様に耳打ちした。


「身分的なことではなく、恐らく彼は、なぜ違う世界の我々と言葉が通じるのか、という疑問を持っておるようです」


そうそうナイス助言だよ白マント!


「ああ、申し訳ございません。そのことについては長くなるので後で説明させていただきます」


……なるほど?


「では先ほど私たちがお呼びした、とおっしゃられてましたが、なぜ私が召喚? されたのでしょうか?」

「そのことにつきましても後で詳しく……」


そこまで言った時、食堂の扉が大きな音を立てて開いた。

思わず、目をやったら、やたら豪華な衣装を身に着けた、大柄な男がズカズカと入ってきた。


「異世界召喚儀式が成功したというのは本当か!!」

「は、陛下。召喚は成功しましたが、かなりの魔術師が倒れました」


陛下と呼ばれた傍らにいた男が応える。


「それで召喚されたものはどこだ、レイラ」


と姫様に向かう。


姫様がすくっと立ち上がり俺を見つめ


「こちらの方が異世界よりいらした。佐藤龍一様です」


と答えたので慌てて立ち上がり、一礼をする。


「佐藤龍一、です」


多分この部下から陛下と呼ばれ、姫様からお父様と呼ばれた人物が王様?  的な存在なのだろう。


「ふむ、余は龍帝国第24代龍帝、龍零である。まぁ、そうかしこまるな」


と言いながら俺の肩をバンバン叩く。

いてぇ。

やっぱり想像どおりか。


「ふむふむ、こうして見ても下の街の人間とそうかわらんな」


龍帝様とやらは、俺の顔やら体やらを嘗め回すように眺めてそう言った。


「あなた、そんなにジロジロみては異世界人様に失礼ですよ」


龍帝様の後ろにいた、なにやらお上品な女性が龍帝をたしなめる。


「申し訳ございません、異世界人様。この人は召喚儀式が成功したので興奮して舞い上がっているのです」

「レイランそう言うな。だって嬉しいじゃないか! 初代龍帝様からの、わが一族の、いや、我が国の悲願だった異世界召喚儀式を成功させたのだからな! これは忙しくなるぞう!  では異世界人どの!ゆっくりしていってくれ!」

「あなた、ちょっと待って!」

「お父様!!」


ガハハハと、笑いながら来た時と同じように、龍帝はドシドシと去っていった。まるで嵐のようである。


「申し訳ありございせん、異世界人様、失礼します」


と、奥方と思わしき女性も一礼してパタパタと後を追った。


「はぁ……全く、お父様ったら……」

「ハハハ、なかなか豪快な方のようですね」


姫様は今までの落ち着いた態度とは変わって、ちょっとキョドりながら説明してくれた。


「え~と、今のが私の父で、この国を治めている龍帝です。隣にいた女性は龍帝の妃で、私の母でもある皇后のレイランです。では今回の件を詳しく、ご説明いたしますので場所を移しましょう」


早口でそう言われて連れていかれたのは、少し大きめの書斎のような場所だった。

どうでもいいが姫様は澄ましているよりキョドってたほうが好感がもてる。


その書斎では眼鏡をかけた秘書っぽい女性がいた。


「彼女は私の家庭教師をしてくださっている方です」


と姫様が紹介する。


「初めまして異世界の方。私は元乃一条サナエと申します。よろしくお願いします」

「は、はい佐藤龍一です。よろしくお願いします」


書斎には大きな黒板が用意されており、大きく”ブラウ大陸の歴史について”とデカデカと日本語で書かれていた。


敵はやる気まんまんだ。

やれやれ長くなりそうなのは覚悟しておこう。

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