第4話 戦争
第5.戦争について
1.この世界における戦争概論
この世界においても集団的闘争、つまり戦争は発生しています。
その目的は示威行動、人的・物的資源の略奪、供犠等の消費のため等様々です。しかし、この世界では魔法的力が存在することから、その様相は地球世界と異なります。地勢において、戦争発生の可能性が極めて低い場所が存在します。
2.各関係性における戦争
(1)物理的国家群間の戦争
可能且つ存在します。物理力はこの世界ではほぼ一定であり、科学及び工学的な作用が共通するためです。これは魔法力の濃度の低い国家群であればある程度は該当します。それは物理力が相互に影響を及ぼしうるためです。『地勢』の項目をご参照ください。
(2)物理的国家群間及び一定以上の魔法的国家群間の戦争
困難となりがちです。なぜなら物理的国家群の使用する物理的機器が、魔法的国家群内の魔法力によってその作用が撹拌撹乱されるためです。高度であるほどまともに使用できる兵器が乏しくなります。
そのため、物理的国家群は巨大投石等を物理力で射出する等の単純物理作用によって攻撃を行うことがもっぱらですが、魔法力による防衛によって防御を行いやすくなります。一方、魔法的国家群の魔法力の作用も物理的国家群内ではその魔法力の乏しさから、適切な効果の発露が困難となります。火の魔法を行使したとしても、物理的国家群内では魔法力を維持するための魔法力がそもそも乏しいからです。そのため、巨大投石等を風等の魔法力で射出する等、射出後は単純物理作用にたよる攻撃を行うことがもっぱらですが、射出はできてもその後落下地点を定める等の魔法的な制御が行えないため、適切な効果の発揮が困難となります。
以上、及び統治の問題から、物理的国家群間及び一定以上の魔法的国家群間の戦争が起こる可能性は乏しいといえるでしょう。
(3)魔法的国家群間の戦争
『魔法の行使について』ですでに述べたとおり、この世界では魔法的力の干渉があり、魔法的干渉の方法自体が集団によって異なるため、異なる文化的価値観を有する国家間で侵略戦争を行うことは稀です。
魔法の行使方法は多くの国々で文化に組み込まれていますが、例えば体に入墨を刻んで世界の理にアクセスして魔法を発動する部族と、階級社会を中心として体系的に解析された呪文によって世界の理にアクセスして魔法を発動する部族は、そもそも背景文化自体が異なります。それらの文化的差異は長年その居住地に固定され、巨大な魔法装置となっている場合が多くあります。
魔法の発動機序が異なるということは、自らの魔法が相手方の領域でどのような作用をもたらすかが不明であるということです。そのため、状況によっては自らの魔法講師によって自軍に壊滅的な被害を生じさせることもしばしばです。
以上、及び統治の問題から、魔法的国家群間の戦争が起こる可能性は乏しいといえるでしょう。
ただし、同じ又は類似文化を有する魔法的国家群同士は魔法の行使手段が共通するため、戦争は頻繁に起こっています。物理的国家群同士の戦争と同様と考えてよいでしょう。
(4)統治の問題
たとえば魔法的国家群が他の魔法的国家群を支配下においたとしても、制度と人が異なりすぎることから、相互の魔法が両立・共存することは困難です。また、これは物理的国家群との間でもいえることですが、物事の動かし方ひとつでも、たとえば物理国家では油や摩擦熱様々な物理的な力で火を起こしますが、魔法国家では火のエレメンタル(表現は国によって異なります)に語りかけ空気を震わせて火を起こす等、そもそもの生活原理が全く異なります。そのため、統治制度自体を新しく構築しなければ文明維持すら困難です。通常、そのような労力を得てまで戦争を行うことは稀です。
遠い昔、特定の相手の魔法的国家群の文化の全てを破壊し全ての所属民の脳を洗った国も存在しましたが、長い年月をかけて構築された旧来の魔法の理が管理者を失ったことにより暴走し、一体が壊滅した事象がありました。
以降、この世界では戦争とは類似文化を持つ国同士がもっぱら行うものとなりました。
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