そっかぁ

 




 さて、あれからどうなったかと言いますと、めんどくさいのでダイジェストでお送りしたいと思います。


 王子は城に軟禁され、面会は家族である王家の方々のみ。

 エトワール嬢は王子の婚約者となったものの、公爵令嬢から王子を寝取り追い詰めたとしてひっでえ悪名が流れました。

 面会は、月に一回、という制限付きで認められたらしい。

 二人してどちゃクソ文句言ってるらしいとは、風の噂というか精霊さんからの噂で聞いた。


 双子君達は、それぞれ別の修道院に送られた。

 今後貴族として戻って来れるのかは、本人達次第といった所か。


 眼鏡君は、今回の件で跡継ぎから降ろされたようだ。

 まあ、王子を止められなかった上に便乗して公爵令嬢を陥れようとしてた訳なので、仕方ない。

 現在は、色んな人から白い目で見られつつ、汚名を払拭する為に親父さんからのスパルタな指導を受けつつ頑張っているらしい。

 婚約者からも見放されて向こうから婚約破棄されたみたいだし、ここからどうするかで眼鏡君の将来が変わるだろう。


 そんなんじゃ軽いと思うかもしれないが、彼等は主犯ではないし、王子の配下だ。

 という事で、上司である王子が廃嫡された事もあって、責任は王子がある程度取ったという事になってしまったらしい。


 だとしても、彼等の信用は地に落ちてしまったので、どこに行こうと針のむしろ状態なのだから社会的制裁を受けている訳で。

 これ以上は酷だろう、という王様からの温情である。


 彼等がどうしようもないアホならきっとまた何かやらかすだろうけど、心を入れ替えてまともな人間としての頭を取り返せば、もしかしたら元の地位にも戻れるかもしれない。


 今後の頑張り次第、ってやつである。


 なお、赤毛君がどうなったかというと、彼はマジモンの被害者だったのが俺の証言で認められたので、特に何も無かった。

 だがしかし、本人はそうじゃ納得出来なかったらしく、何故か見習いとして兵士からやり直すらしい。


 時々様子を見に行ってるけど、めちゃくちゃ真面目に業務を遂行していた。

 王子に爪の垢を煎じて飲ませたいくらいである。


 で、俺はというと。


「ほら、クロ言ってみ、ごーはーん」

「うにぁん」

「ごーはーん」


「うーなぁん?」

「はああああ! 可愛い! 首傾げた可愛い! あかん可愛い! 何この子可愛い!」

「なぅーん」


 よーしよしよし、と頭を撫でれば機嫌良さそうに喉を鳴らす公爵令嬢。


 何をするにもまずはコミュニケーションをとる方法の確立ということで、俺はなんとかクロと意思疎通をしようと頑張っていた。


 別に喋らなくても何が言いたいのか何となく分かるとは思うんだけど、やっぱり細かいところまでは分からないので、これは結構急務である。


 何より、俺がクロと喋りたかった。


 だがしかし、なかなか上手くいかない訳で、こうなったら猫語翻訳魔法作るべきかもしれないとすら思い始めていた。

 クロが可愛いから進まないのも少しはあるけど、前世返りの影響が物凄いんだろうと思う。


 色々と研究が必要なようだ。


 何はともあれ、クロが可愛いです。

 本当にありがとうございました。


 とか考えていたら、精霊からの追加報告うわさばなしがあった。

 常人には聞き取れない声から理解した内容は中々のもので、俺は遠い目で窓の外を眺めて唸る。


「……うーん」


 いや、だって王子とエトワール嬢の二人。

 なんも反省してないどころか、自分達の立場全く分かってないんだよ。


 マジ、頭痛いよね。


 どちゃクソ文句言ってるとは聞いてたけど、まさかそこまで脳内お花畑とは思わなかった。

 なんか、二人して王様に直談判もとい文句言いに行ったらしいよ、ヤバいよね。

 よく王様も許したよね、めっちゃ心広いわ王様。

 マジで尊敬する。俺ならマジギレするもん絶対。


 その時は一応王様が頑張ったからか納得したみたいな雰囲気になったらしいけど、この分だと奴らまたなんかやらかしそうだ。


 ……あれ、そういや王妃様は何してるんだろう。

 うん、なんかちょっと嫌な予感するから、王子がそっちで何かやらかしそうな気がする。


 となると一応、警戒しておいた方がいいかもしれない。

 クロが暗殺とか考えたくもないし、何があっても大丈夫なように防護魔法と、あとは映像の録画と録音、GPS的な機能の魔法を込めた魔法具作ってクロに装着させとく事にするか。

 あ、衝撃や斬撃または魔法を吸収反射とか付けても良いな、ちょっと頑張ろう。

 他にも色々付けられるなら付けとくかね。


 頭の中で魔法式を構築しつつ、どんな魔法具ならクロに似合うかもついでに思案していると、心配そうな顔のクロが俺の横腹を拳でちゃいちゃいっと引っ掻いた。


「にゃおあん?」

「んー?だいじょぶだよクロー、なに心配してくれてんのー?かわいいなあもうー」

「んぐるなー」


 わしわしと撫でると嬉しそうな顔で目を細めるどちゃクソ可愛いクロに頬が緩む。


 なお、現在俺が居る場所ですが、王様からの勅命でクロの保護と補佐を任されてしまったので、クロの実家であるフォルトゥナイト公爵家にて、クロと同棲生活をしております何この天国。


 俺が見える所に居ないと暴れちゃって手が付けられないので、仕方なく居候を許された感じではあるのだが、だからこそ研究と魔法の開発は急務だ。


 そんな中、クロの両親はどうしたのかと言うと、娘が猫令嬢となってしまった事に物凄くショックを受けたのか奥様は熱を出して軽く寝込んでしまった。

 ご当主様はというと、こっちも相当ショックだったのか放心状態で暫く使い物にならなくなっていた。


 だが幸いにして、切り替えは早い方々だったのか、二人とも三日で立ち直ったものの、元々が娘を大切に思っていた事もあり、現在どちゃクソ溺愛。

 まさに猫可愛がりとはこの事か、ってくらいには溺愛している。


 うん、まあ、それもこれもクロが可愛い過ぎるから仕方ないよね。


 問題があるとすれば、一つだけ。


 クロ、お風呂めっちゃ嫌いなんだよね……。


 メイドさん達が頑張って入れようとしたけど、もう暴れて暴れて、全裸で俺にタックルかましてきて、ちょっとしたカオスでした。


 という訳で今、ファンタジー小説で良く出て来る、洗浄クリーンの魔法の開発を急いでます。


 色々やらなきゃいけない事が多過ぎてパンクしそうである。


 うん、頑張れ俺……。



 

 

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