第2話 強者が2人
-side ルカ-
「おはようございます。レオンさん。ルカ君。お久しぶりですね。」
同じ金髪青眼、俺を追放したバカ勇者と雰囲気が真逆の、大人っぽい雰囲気を漂わせている、一国の王子と言われても、そうなのではないかと思ってしまいそうな、この男性はオリヴァーという。
彼もSランク冒険者。国内最強の冒険者のうちの一角だ。
レオンさんとオリヴァーさんは、国内で、最高難易度の依頼をこなしまくっている「銀の翼」のパーティだ。
パーティメンバーは、2人しかいないが、これは、両方ともSランクゆえに、戦闘について行ける人がいなかったから増やさなかったらしい。
そんな、少数精鋭の2人に、俺は熱烈な勧誘を受けていた。
きっかけは、今からちょうど2年前。
当時まだ、前いたパーティに入ったばかりの俺は、時期にこのパーティダメになりそうだということを瞬時に察知し、他のパーティに自分のことを売り込みまくっていた。
臨時パーティの欠員補充の募集を見たら、すぐに行き、荷物持ちをしたり、その際の態度が好感され、俺はこの町——アルケーのギルドでは、かなり人気な方だと思う。
さて、話は戻るが、売り込みをしまくっている時、たまたま「銀の翼」が、ギルド規定によって、3人以上でしか入れないダンジョンに挑むことになった際に、俺も同行していたのだ。
この時から今まで、この2人に勧誘されている理由は、俺のジョブが関係している。
ジョブとは、5歳の頃に行われる洗礼式で獲得できる個人の得意分野だ。
俺のジョブ。クライシスマネージャーは、とても珍しくて、地味である。
珍しさでいうと、この国で、クライシスマネージャーというジョブの人は俺だけ。
世界中でも、片手で数えられる程度の人しかいない。
地味でいうと、ジョブの内容は、リスク管理が容易になるというものだ。
つまり、冒険者向きの魔法でもないし、派手な戦闘魔法も使えないし、死なない様に立ち回る事しかできない——自分でいうのもなんだが、超地味だと思う。
通常クライシスマネージャーのジョブを貰った者は役所で金管理を任せられる。
しかし、俺は……それが、できなかった。
俺の両親は、3歳の頃、物心つく前に交通事故で死んでしまっていて、学校に通うことが出来ず、冒険者になる道を選んだからだ。
正直、戦闘向きではないジョブな事もあって、冒険者初めたての時はかなり苦労をした。
それでも、訓練施設に行き、死なない様に、立ち回りを覚えて、ようやく、Dランクにまで上り詰め、1人前の冒険者になったくらいの時に、受けたのが、「銀の翼」の数合わせ要員だった。
最初は、戦闘スキルではない俺に対して、疑い深かった2人も、リスク回避が容易に出来る俺のジョブに対して、とても好感を持ってくれた。
さらに、俺のジョブは、動きの察知も含まれるので、この2人の動きを予測しながら動けるから、2人にとって、やりやすいみたいで、以前から、激しめに勧誘されていた。それもあって、テオ達からは余計に嫉妬されていたのだが。
『魔物の強さを瞬時に計算して、撤退の判断を下せるジョブですか。喉から手が出る程欲しいスキルですね。』
『勿体ねえ。そのスキル。俺らみたいな、強い奴と一緒にいてこそ真価を発揮するのによ。他の雑魚パーティに取られちまってるなんて。』
『いっそのこと引き抜いちゃいますか?』
『やってもよさそうだな……と言いたいところだが、ルカが困ってる。』
『困らせないでくださいよ。レオン。あ、あそこにギルド長。』
『おいおい、その裏切りはないって。ギルド長の前で……っていねえじゃねえか!』
腐っても、勇者のテオがいるパーティを雑魚と呼べるのは、この人たちだけなんだとは思うけど。
あと、ギルド長の名前をそんな簡単に出すの俺の心臓が持たない。
「それで、レオンさん。所属もフリーになってしまったから、同時にクランにも入っておきたいんだけど。」
「おう、わかってるって。
やつらを紹介するわ。」
クランとは、俺がEランクの頃からお世話になっている訓練施設を保有する団体のことだ。勇者パーティに入った時に、クランからは抜けたけど、また入り直しである。
「ここら辺の地域のクランの中に所属しているメンバーの中で、ランクマッチ最強の実力が生で見れる日が来るのか。楽しみだぜ。」
「期待はせずにいてくれるとありがたい。」
「そうは言っても、私も楽しみです。」
そうこう言っている間に、クランについた。
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