現代と近代と SF とファンタジーの狭間で

 現代ファンタジーや現代ドラマってジャンルの線引きが面倒……


 なろうだと、文芸という大カテゴリの中に色々あるので、その辺そこまで悩まない。


 例えば拙作には二つの私小説(作者の体験を書いた小説のこと)がある。一つは俺が小学生の時の話で、もう片方は高校生の時の話だ。


 小学生のはぎり昭和時代。平成生まれにとっては、昭和は俺らにとっての戦前くらいの感覚らしい。昭和生まれと聞いて「戦争大変だったんですね」って反応されてびびったみたいなツイートが流れてきたこともある。

 昭和って長かったから、まだ三十代の昭和生まれもいるんだけどな。


 それはさておき、昭和 50〜60 年代の話が現代ドラマかというと厳しい。なので小学生の時の話は、エッセイ・ノンフィクションカテゴリにしてある。

 一方で高校の時の話は平成時代で、カテゴリは現代ドラマにしてある。


 が、これ全然本質的な分け方だと思えない。私小説とか文芸ってカテゴリがないんで。

 エッセイ・ノンフィクションってカクヨムだと小説ではない扱いされがちなんだよな。自主企画でエッセイ・ノンフィクション及び創作論は除外ってよく見るし。

 だからか、私小説も含めた純文学寄りの文芸とか書いてる人、童話・その他にいれてるのちょくちょく見る。


 現代ファンタジーも同じでさ、昭和の香り残るくらいだと、歴史・時代・伝記になってたりするんよな。

 イケメンの妖が出てくるのが癖って人が、現代ファンタジーなら読むけど、昭和が舞台だったら読まないか、というとそれは何かむずむずするというか。需要とカテゴリ分けが合致してるのかはわからない。


 しかも、あと数年もしたら、平成時代だってガラケーしかなかった頃なんかはもう現代でなくなるかもなわけで。

 まぁ、俺が昭和的な世界背景で作品を書く一つの理由には、スマホとか携帯がなかった頃の感じにしたいってのがあるし、おそらくその時点で多数派が考える現代ではないのだろう。


 逆に未来なら? 少し未来になった感じ、VR とか進んだ義肢技術なんかは、SF カテゴリになれるわけ。宇宙に行ったりするような話だと科学科学してなくても SF に属せる。未来っぽければ SF カテゴリにしやすい。これが結構羨ましい。


 俺は、昭和〜平成くらいの狭間の雰囲気の世界観で異世界を書いてる。これだと SF にしにくい。


 現代くらいの文明レベルの異世界って設定は、ゲームやなんかだと結構ある。アークナイツ(少し未来的でもあるが)とか、小説だと古い例になるけど鋼殻のレギオスとかもそう。FF7 の映画では携帯使ってたしね。このことがさ、異世界ファンタジー=中世風になった今では説明が少し難しくなってる。


 俺が影響受けた作品として、なろうにある八百万字超える『すべて ひとしい ひとつの花』という大作がある。これとアクナイの影響はかなりでかい。

 すべてひとしいもアクナイもな、異種族や魔法的なものが存在する異世界で我々の世界のように民族が文化が起こり国が生まれ歴史があり、戦争があって政治があって、科学も発展してそのような世界で人々がどう生きるかってのを描いている。どちらの作品にも我々の世界の国を示唆するような国があったり、現実の紛争を示唆するような話があったりする。

 我々と精神構造がと似た人間が歴史をつくるのならば、似た現象が起きるのは自然なことだし、我々が摂取するエンターテイメントとしても都合がいい。


『すべてひとしい』では、魔法を使える種族がいるんだけど、魔法よりの国と科学よりの国で文化が違う。その程度も様々だ。

 科学国ではスマホとかインターネットが普通にあって、魔法国でも近代化に積極的な所だと観光客向けに wifi 整備したりしてる。科学の医者と魔法の医者が共存してたり。

 極端な科学国の人間は怪異の類いが見えないから、それが原因不明の事故で処理されて起きる問題もある。宗教の強い科学国で生まれた力のある人間は異端とされたり。そうした違いに宗教や政治が絡んで戦争になったりもする。


 そういう、異なる文化の接触が色んなところにあってそれが面白い。魔法がある=科学がないじゃないって教えてくれた素晴らしい作品。

 俺の処女作も影響をもろに受けてて、科学よりの国から来た観光客が「わー」ってなる描写とかある。


 アクナイもすべてひとしいも、世界の作り込みが半端なくて、ちょっと気軽に小説書いてみようってレベルでは無理ゲーなんすよね。もう、星一つの自然と文化と歴史をつくるようなもんだから。

 なので、異文化接触と科学と魔法的なものが同時にあって、文化レベルが現代くらいにあるってエッセンスだけゆるふわで拝借して描いてるのが俺の処女作(迷宮を出る)と毛玉ゴーレムなわけだ。

 その起こりを考えると、SF 的ではあるんだけど、いかんせん作中の文化レベルが昭和くらいなので SF にしにくいんだよな。

 実際に作品を読んだ方なら、言いたいこと、なんとなくわかってもらえるとは思う。


 だから、作品の持ち味とジャンルが噛み合ってないんだよな。中世的異世界ファンタジーを求める層にマッチする味ではない。

 かと言って、異種族とかが原始からいて我々とは異なる世界の話なので現代ファンタジーにもできない。

 世界の組み立て方としては SF 的だが、そこまで科学的考証をしていなければ未来的でもないので SF を名乗りにくい。


 科学的でなくても未来的であれば SF を名乗りやすいのは、多々ある作品を見れば確かなんで、SF って懐が深いんだけどね。

 甲殻のレギオスは wikipedia だと SF に分類されてる。魔法科高校の劣等生あたりもそう。アクナイもすべてひとしいひとつの花も、この感じだと SF に属しそうだ。


 ちなみに、すべてひとしいは、なろうのカテゴリにおいて ヒューマンドラマ〔文芸〕になってる。

 同じなろうの、アニメ化も予定されている鬼人幻燈抄というかなり俺の癖な作品がある。これは江戸から平成までを描くが、ローファンタジーというカテゴリになってる。なろうは異世界ファンタジー 対 現代ファンタジーではなく、ローファンなのでこの手のを含められる懐の深さがあるんすよ。


 この辺のカテゴリ、カクヨムに増えないかなぁ。



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