第41話 新たな約束
「ここ………」
時を取り戻すかのようにゆっくりと歩きお互い語り合う。
「あの時の」
「そうだ。俺達が初めて出会った場所だ。………って最近まで忘れてたんだけどな」
「本当だよな、あの時の約束を糧に私頑張ってたのに」
「悪かったよ、まさかその子がこんなに側にいるとは思わないし、名前知らなかったんだぜ」
「私は入学した時に琢磨の名前見て気がついたけどね」
「そりゃあ、俺の苗字珍しいからな」
「フフフッ」
「ハハハァ」
「…………あの後、私の様子を見かねた親の配慮で引っ越したんだ。元々引っ越しの話しが進んでてあの日は引っ越す前日だった。それで引っ越した先の学校で沙織に出会ったの」
「そうか」
「琢磨に言われた通り。ずっと笑顔でいることにしたよ。そしたら世界が180度変わってさ、友達は出来るし、沙織みたいに信頼出来る人は見つかるし。本当感謝してる」
「…………」
「沙織と一緒にいたくて当時の私の学力じゃ無理だとまで言われてた日ノ本第一高校に入る為に沙織に手伝ってもらって必死に勉強してそして合格して。沙織と一緒にいれることが嬉しかった。それだけでも充分だったのに」
「北川………」
「入学時のクラス発表で琢磨の名前を見た。嬉しかったよ。私を救ってくれた人に再び出会えてたんだもん。しかも翌年には同じクラスになれたんだから」
「そうか」
「まぁ、あの時以上に琢磨は暗い感じだったけどね」
「そっそうか?」
「うん。あの時も無理して助けてくれてる感は出てたけど、クラス一緒になった時といったらそりゃあ暗さというかボッチ感極まってたね」
「そんな俺に必死に声をかけて、おかげで前を向けるようになって。長年の悩みとも向き合い克服して。今の俺があるんだよな。ありがとう北川」
「礼なんていいよ、私は恩を返しただけだし」
「でもまさか昔助けた人に10年越しに助けられるとは思わなかったよ」
「私もまさか恩人を自分が助けることになるとは思わなかった。」
「…………」
「琢磨?」
「でも、俺は大事なモノを失ってしまった」
「えっ」
「俺の生きる指針となっていた。あいつ等を俺は…………」
「それって前にちょいちょいあった多重人格と関係あるのか?」
「!?なんでそう思う?」
「その人格。なんか普段の琢磨から想像出来ないけどどこか琢磨らしさもあって不思議な感じがしてた。でも一緒に過ごすにつれその人格達出なくなったな〜とは思ってた。」
「そうか。そいつらと喧嘩してさ」
「喧嘩?他の人格とそんな事出来るのかー」
「あぁ、俺が決めた事に口出しするなって言ったら。その時以来出てこなくなった。これまで一緒に考え、悩み、解決してきたのにさ」
「琢磨………」
「失ってようやく気がついたんだ。あいつ等も俺の一部だったことに」
「…………」
「あいつらのいない俺は結局。お前を傷つけて自分を誤魔化して………止まってしまった」
「傷つけたって!それは私だ。琢磨のことをわかったつもりで橘先輩に嫉妬して気を惹こうとして琢磨を傷つけて、私自身なにがしたいのか。わからなくなってた」
「北川………」
「…………」
「だから俺。もう一度前に進む為に行こうと思うんだ留学。自分とは異なり過ぎてわからなかったアイツらを理解することと、見たことのない異文化に触れる事………今更だけどあいつ等を理解するのになにか掴める。そう思ってる。」
「琢磨………」
「美波。」
「!?」
「俺の帰りを待っててくれるか?」
「……………」
「必ず。答えを見つけて再び前に進んでみせる。だから………その………それまで待っててくれるか?」
「………どうしよっかな〜」
「!?」
「あんま待たされると他所行っちゃうかもよ〜」
「…………!!」
美波は琢磨の身体に自分の身を委ねる。
「待ってるよ。いつまでも琢磨が答えを見つけるまで、ちゃんと待ってる。」
「美波…………」
「大体。私の存在に気づいてもらえるのに何年待たせたと思ってるんだ?それに比べたら、へっちゃらだね」
「…………」
「ちゃんと帰ってきてくれよ。私のもとへ」
「あぁ、勿論だ」
自然と重なる互いの唇。そして琢磨は自分が前に進む為の旅に出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます