第39話 決意
キュキュキュ
コートに響くバッシュの音。ゴールネットにボールが突き刺さると歓声が沸き上がる。
「今日もお前の大学は調子よさそうだな」
「そうだな」
「あの橘って選手の気迫凄まじいな!」
「そうだな・・・・・」
「それに引っ張られて我が『ディベート同好会』のマドンナも絶好調じゃないか」
「うん」
「なんだよ、珍しく誘っといて反応薄いな」
「悪い。」
「応援に来たんだろ?ならテンション上げて行こうぜ」
「俺。決めた」
「なんだよ突然」
「一度止めた針を再び動かすって」
「・・・・・なんのこと言ってるか全然わからねーけど。お帰り琢磨」
「東条・・・・・ただいま」
ビー
試合終了のブザーが鳴り選手達が応援席に挨拶にやって来た。
「なんだ北川!橘だっけ?無理やり引っ張られて嫌そう~」
「今日の活躍も目覚ましいのに謙虚すぎるから強引に声援に応えさせようとしてるんだろうな」
「こっちに手振ってるぜ!ナイスプレー北川!橘!」
(みっちゃん・・・・)
笑顔で手を振る美月に、琢磨は小さく手を挙げ応えた。
「お疲れ北川!」
久しぶりに集まった3人。
「応援ありがとうな!東条、琢磨も」
「いや〜今日は珍しく琢磨の方から誘って来たから驚いたぜ」
「そうなのか!?それは珍しいな」
「まぁ、なんだそのお前らと久しぶりに話ししたかったし」
「…………」
「なんだよ〜改まって」
「俺、留学することにした。」
「!?」
「ブー!なんだって!?」
「汚いな東条。」
「留学って琢磨お前突然過ぎるだろ!」
「前からゼミの教授から誘いは受けてたんだ。正確には留学っていうかホームステイだけど」
「どこに?」
「アメリカのアイオワ大学」
「なんか凄そうなところだな」
「学部が国際関係………世界を研究する場所だからな」
「ほへー何言ってるのか全然わかんないや」
「私も」
「東条。お前会社の社長なら国際情勢とかも気にしたほうがいいぞ。きっと」
「生き残るのに精一杯な零細企業だからそれどころじゃないけど、頭の片隅で覚えておくよ。てかいつ行くんだ?」
「明後日には」
「それまた急な」
「…………」
「だから2人にはちゃんと伝えておきたくて」
「………そっか、じゃあ今日は俺の奢りだ」
「東条」
「御使琢磨の新しい挑戦の成功を願って乾杯」
「乾杯!」
「乾杯」
「ごっつそさ〜んでした」
「なんで、俺よりお前達の方がベロベロなんだよ」
「量でいったら琢磨も変わんね〜だろ?なんで平気なんだよ」
(これもケビン達のお陰なのか?)
「てか、琢磨〜北川送ってやれ〜」
「!?なんで俺が」
「見ての通り俺はベロベロでよ〜お家に帰るので精一杯なの〜」
「それもそうだな」
「留学先でも頑張れよ〜琢磨」
「ホームステイだから、そんなかからないと思うけどな、ありがとうな東条。おやすみ」
「おやすみ〜」
「北川。歩けるか?」
「……………」
「北川?」
「無理〜〜」
「ほら、なら肩を貸すから………」
「嫌だ。おんぶ」
「はぁ!?」
「おんぶがいい〜」
「お前そんなとこ見られたら………」
「なんで〜美月先輩には出来て私には出来ないの〜」
冷やかな視線が2人に向けられる。
「わっわかったから、泣くな北川!おい………」
(えっと確か琢磨と東条と呑んでて、なんか揺れてる。それに温かい………)
「ウェ!?琢磨!!何してんだよ!!」
「なにって、酔い潰れたお前がおんぶしろって駄々こねるからその………おんぶしてるんだよ」
「東条は?」
「帰ったよ。とっくにお開きしてるし」
「そうか」
「もう歩けそうか?」
「いや………もう少しこのままで」
「いいのかよ?お前付き合ってるんだろ?」
「いいんだよ、別に」
「そうか………」
「…………琢磨。本当に留学するのか?」
「あぁ、でも留学って言ってもホームステイだからな。そんな長期にならないはずだ」
「なんで?今の大学じゃ不満か?」
「不満とか、そんなことは無いよ。ただ自分を高めるチャンスをアルベル教授から貰ったから挑戦しようと思っただけだ」
「…………。」
「俺さ、最近昔した約束をを思い出したんだ」
「昔の約束?」
「まぁ小さい頃の子ども同士の約束なんだけどな」
琢磨が突如語り始めた昔話を美波は背中越しにしっかり聞いていた。
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